「女性管理職を増やしたいけど、どうやって増やせばいいかわからない」「女性が管理職になりたがらない」と悩まれている企業は、自社の課題に気付き、改善することが求められます。
この記事では、女性管理職が少ない企業が抱える課題や課題解決のために取り組むべきことをまとめているため、現状を変えたい、女性管理職を増やしたいと思っている企業は、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかる事 |
・日本における女性管理職登用の課題 ・女性管理職が少ない企業の5つの課題 ・女性管理職登用における課題解決のために取り組むべきこと |
CONTENTS |
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1|日本における女性管理職登用の課題 |
日本は、世界各国と比較して、女性の管理職比率が低い傾向です。就業者数は各国と比較して大きな差はないものの、管理的職業従事者は各国が30%以上が多いなかで、13.2%という低い数値を出しています。
参考:内閣府男⼥共同参画局『⼥性活躍に関する基礎データ』
女性管理職の比率を日本企業の現状から、次の4項目でご紹介します。
・女性管理職の平均比率 ・女性管理職の企業規模別比率 ・女性管理職の業界別比率 ・女性管理職比率の推移 |
1-1.女性管理職の平均比率
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帝国データバンクが全国2 万 7,768 社(有効回答企業数1 万 1,265 社)を対象に、2023年7月に『女性登用に対する企業の意識調査(2023 年)』を実施しました。調査によると、2023年における「女性管理職(課長相当職以上)比率」は全国平均で9.8%で、過去最高の数値となりましたが、依然として1割を下回る低水準という結果でした。
政府は、「2020年代の可能な限り早期に、指導的地位に占める女性の割合が30%程度にする」という目標を掲げていますが、30%という目標を達成している企業は9.8%でした。
一方で、今後、女性管理職の割合が増えると見込んでいる企業は 32.9%となり、中でも従業員数が301人以上の企業は63.7%と全体を大きく上回りました。傾向として、従業員数が多い企業ほど女性管理職が増加すると考える割合が高いです。また、今後も「変わらない」と見込んでいる企業は全体で56.5%を占めました。
1-2.女性管理職の企業規模別比率
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企業規模別に女性管理職の比率をみると、「小規模企業」が平均12.6%で最も高い結果となりました。一方で「中小企業」は10.2%、「大企業」は7.5%となり、規模が小さい企業ほど女性管理職比率の平均が高いことがわかります。
2022年では、4月に改正女性活躍推進法が施行され、女性活躍に関する情報公開の対象が従業員数 「301人以上」から「101人以上」の中小企業に拡大されました。その結果、従業員数が「301人以上」の女性管理職比率は7.8%と、前年比0.3ポイント増加しました。新たに情報公開の対象となった従業員数 「101人~300人」の企業では、同0.5ポイント増の6.5%でした。
■女性活躍推進法についてはこちら |
1-3.女性管理職の業界別比率
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業界別に女性管理職の比率をみると、「小売(18.6%)」「不動産(16.2%)」「サービス(13.5%)」が上位に並びました。一方で、「建設(6.2%)」や「運輸・倉庫(6.9%)」などの業界では、全体の9.8%を下回る結果となっています。業界ごとに、女性管理職登用の比率にばらつきがあることがわかります。
1-4.女性管理職比率の推移
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年々、仕事と育児の支援制度が充実してきており、女性社員の定着は徐々に進んできましたが、女性の管理職比率は未だに期待するほど増えていないというのが現状です。
内閣府の発表によると、民間企業の女性役職者は1989年から2023年にかけて、「部長級」職は1.3%から8.3%へ、「課長級」職は2%から13.2%へ、「係長級」職は4.6%から23.5%へとそれぞれ増加していることがわかります。しかし、女性比率が最も高い係長級でも23%ほどのため、女性管理職が増加するまでの道のりに厳しさを感じられます。
参考:内閣府『男女共同参画白書令和6年版 民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合の推移』
2|女性管理職が少ない企業の5つの課題 |
日本における女性管理職の実状は、まだまだ厳しいものがあるといえるでしょう。
なぜ女性管理職が少ないのか、企業が抱える課題として、次の5つが挙げられます。
・根強い男女の役割意識 ・管理職における労働時間が長い ・家庭と仕事を両立できる環境が整えられていない ・ロールモデルがいない ・管理職になる前段階の教育制度・研修が整っていない |
企業が抱える課題について、詳しく解説します。
2-1.根強い男女の役割意識 |
日本には、根強い男女の役割意識があります。男女の性別役割分業が確立されたのは、工業化時代にさかのぼり、ほとんど男性優位となるような終身雇用制によって、「男性は外で働く、女性は家を守る」という意識が社会的に正当化されてしまいました。
その後、経済のサービス化や不況などにより、終身雇用制が崩れてきて、女性も社会に進出するようになりました。1985年には男女雇用機会均等法が施行され、女性の自立が支援される一方で、配偶者控除制度といった専業主婦を保護するような施策も維持されている現状です。
「男性は働き、女性は家を守る」という日本社会に浸透してしまった性別役割分業があったり、日本の社会システムが性別役割分業を暗に認めたりしていることが、日本企業に女性管理職が少ない理由のひとつとして挙げられるでしょう。
2-2.管理職における労働時間が長い |
一般社団法人 日本経済団体連合会の調査によると、一般労働者よりも管理職のほうが、平均年間総労働時間が長い傾向にあります。
参考:一般社団法人 日本経済団体連合会『2019 年労働時間等実態調査集計結果』
管理職になると労働時間が長くなることから、女性のなかには管理職になりたくないと感じる方もいるでしょう。実際に、弊社(株式会社キャリアデザインセンター)が行なったアンケート『管理職ってどう?管理職について聞いてみました。』によると、「女性が管理職になりたくない」理由の第2位に「残業時間が増えそう」がありました。
2-3.家庭と仕事を両立できる環境が整えられていない |
女性のなかには、妊娠・出産といったライフイベントを考えている方もいるため、働き方の変化に対応できるように、家庭と仕事を両立できる職場環境を求めている方も多いです。
しかし、企業によっては、女性が家庭と仕事を両立できるような制度を導入したり、社内周知を図ったりなどの対策が十分ではなく、女性社員の出世へのモチベーションを下げてしまっている可能性があります。
日本・東京商工会議所の資料によると、「女性の活躍を推進している」企業の割合は71.6%ありますが、内40.2%の企業が「女性の活躍を推進しているが、課題がある」と回答しています。企業が抱えている課題のなかに、「残業を含め労働時間が長く、仕事と家庭の両立が難しい」「人員の不足、業務の属人化により、仕事と家庭の両立支援制度(育児休業、時短勤務等)が十分に活用できない」といった声があります。
参考:日本・東京商工会議所『「女性、外国人材の活躍に関する調査」 調査結果』
2-4.ロールモデルがいない |
女性管理職として活躍しているロールモデルが企業にいない場合、女性は「管理職になれない」と感じたり、自身が活躍できるイメージが湧かなかったりして、管理職になる意欲が高まらないというケースもあります。
例えば、もともと活躍していた先輩の女性社員が産育休を取得し、復帰してからはあまり活躍できていないという場合、ほかの女性社員は「ライフイベントを経るとキャリアを維持できなくなる」というマイナスな印象を抱く恐れがあります。そのため、管理職になりたいと思っていても諦めてしまうかもしれません。
2-5.管理職になる前段階の教育制度・研修が整っていない |
企業が抱える課題として、女性が管理職になる前段階の教育制度や研修が整っていないことが挙げられます。
前述の 2-2.管理職における労働時間が長い でご紹介した弊社アンケート結果にあるように、「自分に自信がない」や「部下の教育が向いていないと思う」といった自分の力量に対する自信のなさなどは、管理職になるための教育や自信を持たせるための経験などを積ませていないことが原因と考えられるでしょう。
例えば、男性社員には新たな業務を与えたり、スキルアップ研修を実施したりするのに対し、女性社員にはお茶出しなどの雑務しか任せていない場合は、女性社員の自信が失われたり、スキル向上が望めなかったりします。
3|女性管理職登用における課題解決のために取り組むべきこと |
「女性が管理職になることを望んでいない」と感じている企業もあるかもしれませんが、前述のように、企業が女性のロールモデルを生まなかったり、女性への研修を行わずに自信を失わせたりしたことが要因のひとつかもしれません。
そのため、企業は、管理職が増えない原因を女性社員に求めるのではなく、自社の状況を見直して、改善することが重要です。
女性管理職登用における、課題解決のために企業が取り組むべきことを5つ解説します。
・社内の意識改革 ・労働環境の改善 ・多様な働き方に対応できる制度・環境づくり ・ロールモデルを増やす取り組みを実施 ・研修制度を充実させる |
3-1.社内の意識改革 |
性別役割分業の意識をなくすために、社内の意識改革を行います。例えば、「男性しか管理職になれない」「女性は管理職にならなくていい」という考えが自社にある場合、まずは全社的に意識を改革していくことが求められるでしょう。
女性管理職を増やすこと、社員が働きやすい職場環境を整備することの必要性を社内に周知し、男女問わず、社員一人ひとりの意識を改革していきます。また、併せて、自社の評価制度に偏りがないか、女性と男性への業務配分や内容が同程度になっているかなども見直すことが大切です。
また、男女共同参画局の調査によると、管理職のほうが、特に性別役割意識が強い傾向にあるといえます。
参考:内閣府男女共同参画局『令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究』
そのため、管理職向けの研修を行なったり、昇給や昇進の評価に男女差が生まれないように意識づけしたりすることも重要です。
3-2.労働環境の改善 |
長時間労働は、社員のワークライフバランスを崩したり、心身に負担をかけたりするため、労働環境を見直し、改善することが大切です。
弊社が行なったアンケート『管理職って、つらい?管理職に就いてよかったこと、つらいことを聞いてみました。』によると、管理職になってつらいことの第7位に「残業時間が増える」という回答がランクインしました。
管理職になると、業務量が増えたり、部下のマネジメント業務が発生したりするため、長時間労働になりやすいです。長時間労働にならないように、業務効率化を図るなどして労働環境を改善すると、女性社員の管理職に対するハードルが下がると考えられます。
3-3.多様な働き方に対応できる制度・環境づくり |
女性は、妊娠・出産、育児、介護など、さまざまなライフイベントが発生します。ライフイベントの発生により、働き方に変化が起こる可能性が高いため、多様な働き方に対応できるような制度の導入や、環境の整備が企業に求められます。
例えば、子供の送り迎えがしやすいように時短勤務を取り入れたり、親の介護で出社が難しい社員にリモートワークをさせたりなどが考えられるでしょう。
働きやすい職場環境がつくられると、女性はキャリアを継続でき、管理職を目指そうと思えたり、管理職になって活躍できたりするかもしれません。
ワークライフバランスを意識した制度や環境づくりは、女性のライフステージの変化を理解している女性管理職が行うと、より一層スムーズに進む可能性があります。
3-4.ロールモデルを増やす取り組みを実施 |
女性管理職のロールモデルを増やす取り組みを実施すると、女性社員の管理職への昇進意欲に影響をもたらすかもしれません。
弊社が行なったアンケート『管理職ってどう?管理職について聞いてみました。』で、「尊敬できる女性管理職の有無は、管理職になりたい気持ちに影響する?」と尋ねたところ、「とても影響がある」25.1%、「やや影響がある」31.4%と、「影響がある」割合が過半数を超える結果となりました。
そのため、女性社員のロールモデルとなりえるような人材を中途採用で獲得したり、女性社員の昇進の機会を増やしたりして、女性社員が尊敬できる女性管理職を増やすことが大切です。
3-5.研修制度を充実させる |
女性社員が管理職になりたくない理由のひとつとして、自分のスキルに自信がないことが挙げられるため、スキルアップを図り、自信をつけさせるような研修制度を充実させるといいでしょう。
また、女性社員に向けた研修だけでなく、女性社員を教育する立場である管理職にも研修を行うことが求められます。
例えば、次のような取り組みが挙げられます。
・女性社員向けのマネジメントスキルアップ研修 ・女性社員が自身のキャリア形成を考えるキャリアデザイン研修 ・管理職向けの教育訓練 ・能力があり意欲的な女性社員を積極的に発掘し、集中的に育成する |
4|まとめ |
日本の女性管理職の比率は世界各国と比べて低く、企業規模別で見ると、規模が大きくなるにつれて女性管理職の比率の平均が低くなることがわかりました。
女性管理職が少ない企業は、男女の役割意識が根強かったり、ワークライフバランスをとれる労働環境が整備されていなかったりするため、女性管理職を増やすには改善することが重要です。
社内の意識改革や労働環境の整備、ロールモデルを増やす取り組みなどを行い、女性管理職の増加に努めましょう。
いかがでしたか。少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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