採用活動における歩留まりとは、各採用フローで次の工程に進んだ人数の割合を指します。
歩留まりが低下すると目標の採用人数を採用できないなど、採用計画に支障が出る恐れがあるため、低下する要因を把握し、改善することが大切です。
この記事では、歩留まりの計算方法と平均値、低下の要因と改善方法をまとめているため、ぜひご参考にしてください。
目次
- 1-1 採用における歩留まりの意味
-
2-1 新卒採用の採用フロー項目例
2-2 中途採用の採用フロー項目例
2-3 採用歩留まりの計算方法
2-4 新卒採用の歩留まり平均値
2-5 中途採用の歩留まり平均値 -
3-1 選考スピードの差によって先に他社で内定が出た
3-2 募集要項と面接での話が異なった
3-3 選考過程の人事や面接官の対応が悪印象だった
3-4 社風や社員の雰囲気が合わないと感じた
3-5 家族の反対を受けた -
4-1 応募率
4-2 面接参加率
4-3 内定承諾率 -
5-1 選考期間を短縮する
5-2 候補者への連絡は迅速かつ丁寧に行う
5-3 面接官トレーニングを行う
5-4 入社の動機づけを行う
5-5 内定者フォローを行う
1.採用における歩留まりとは? |
採用活動において、歩留まりを知ることは重要です。
採用における歩留まりの意味を解説します。
(1)採用における歩留まりの意味
採用活動における「歩留まり(ぶどまり)」とは、各採用フローで次の工程に進んだ人数の割合を意味し、パーセントで示した数値を「歩留まり率」と呼びます。
歩留まり率は、高いほど次のフローへ進む人数が多く、低いほど少ないことを表すため、歩留まり率がわかると、どのフローに課題があるのかを把握できます。
例えば、「応募」「書類選考」「面接」「内定」という採用フローのなかで、「書類選考」から「面接」への歩留まり率がほかのフローより低い場合は、対策を考える必要があるでしょう。
2.採用の歩留まりの項目と計算方法 |
新卒採用と中途採用の歩留まりの項目と計算方法をご紹介します。
新卒・中途採用の歩留まりの平均値もまとめているため、ご参考にしてください。
(1)新卒採用の採用フロー項目例
新卒採用の採用フローの項目例は、下記になります。
①募集 ②企業説明会 ③書類選考 ④筆記試験・適性テスト ⑤一次面接(集団・個別) ⑥最終面接 ⑦内定 |
(2)中途採用の採用フロー項目例
中途採用の採用フロー項目例は、次のとおりです。
①募集 ②書類選考 ③(筆記試験・適性テスト)※実施する場合 ④一次面接 ⑤最終面接 ⑥内定 |
(3) 採用歩留まりの計算方法
採用歩留まりは、基本的に各採用フローで下記のように計算すると求められます。
【通過率の計算方法】 【辞退率の計算方法】 |
採用歩留まりの具体的な計算方法を表にまとめました。
歩留まり率 | 計算式 |
企業説明会参加率 | 企業説明会の参加者数 ÷ エントリー数 × 100 |
選考応募率 | 選考応募者数 ÷ エントリー数 × 100 |
書類選考通過率 | 書類選考通過者数 ÷ 書類選考参加者数 × 100 |
一次面接通過率 | 一次面接通過者数 ÷ 一次面接参加者数 × 100 |
最終面接通過率 | 最終面接通過者数 ÷ 最終面接参加者数 × 100 |
内定率 | 内定者数 ÷ 受験者数 × 100 |
内定承諾率 | 内定承諾者数 ÷ 内定者数 × 100 |
内定辞退率 | 内定辞退者数 ÷ 内定者数 × 100 |
(4)新卒採用の歩留まり平均値
株式会社リクルートが公表している「就職白書2023」の、採用予定数を100とした場合の「内定出し人数」「内定辞退人数」「内定人数」から、内定承諾率を求めてみました。内定承諾率は、「内定人数 ÷ 内定出し人数」で計算します。
従業員規模別 | 内定出し人数 | 内定辞退人数 | 内定人数 | 内定承諾率 |
全体 | 179.1 | 83.3 | 92.6 | 51.7 |
300人未満 | 143.7 | 62.3 | 81.8 | 56.9 |
300~900人 | 192.0 | 84.5 | 89.4 | 46.6 |
1000人~4999人 | 174.2 | 80.8 | 95.5 | 54.8 |
5000人以上 | 187.3 | 93.5 | 94.5 | 50.5 |
参考:株式会社リクルート「就職白書2023」
※上記を参考に内定承諾率は弊社が独自算出、表作成
上記結果から、内定承諾率の平均値は50%ほどといえるでしょう。
また、300人未満の企業が最も内定承諾率が高い理由として、競合とのバッティングが起こりづらいことが考えられます。
(5)中途採用の歩留まり平均値
株式会社マイナビの「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)」によると、2022年における中途採用の内定辞退率は7.9%でした。そのため、内定承諾率の平均値は92.1%と求められます。
2022年から過去3年間の内定辞退率と、内定辞退率から算出した内定承諾率を表にまとめてみました。
内定辞退率 | 内定承諾率 | |
2022年 | 7.9 | 92.1 |
2021年 | 11.1 | 88.9 |
2020年 | 15.7 | 84.3 |
参考:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)」
※上記を参考に内定承諾率は弊社が独自算出、表作成
内定辞退率が年々減少しているため、内定承諾率が増加傾向にあることがわかります。
新卒採用と比較して、中途採用の内定承諾率が高い理由は、目指す業界や職種、入社希望の企業が明確な求職者が多いことが挙げられます。
3.採用の歩留まりが低下する5つの要因 |
採用の歩留まりが低下する要因は、次の5つです。
・選考スピードの差によって先に他社で内定が出た ・募集要項と面接での話が異なった ・選考過程の人事や面接官の対応が悪印象だった ・社風や社員の雰囲気が合わないと感じた ・家族の反対を受けた |
歩留まり率が低いことに悩んでいる企業は、まずは歩留まりが低下する要因を把握しましょう。
(1)選考スピードの差によって先に他社で内定が出た
求職者は複数の企業に応募している可能性が高いため、選考に時間がかかり、スピーディーな採用活動を行えないと、先に内定が出た他社に入社を決意し、選考辞退されて歩留まりが低下するでしょう。
志望度が高い企業から内定が出た場合以外にも、就職を急いでいたり、企業の魅力にあまり差がなかったりすると、早く内定が出た企業を選んでしまうと考えられます。
(2)募集要項と面接での話が異なった
募集要項と面接での話が異なった場合、求職者は企業に対して不信感を抱き、選考を辞退する恐れがあります。求職者は、企業へ応募するにあたり求人サイトや企業サイト、SNSなどをチェックして給与や福利厚生、社風などを確認します。
事前に確認した情報で「入社したい」と思った求職者が選考に臨むため、面接で異なる入社条件などを聞いた場合、自分に合わないと感じたり、話が違うことに不信感を抱いたりして、選考辞退となりかねません。
(3)選考過程の人事や面接官の対応が悪印象だった
求職者と接する人事担当者や面接官は、いわば企業の顔ともいうべき存在です。人事や面接官の対応が悪かった場合、求職者の企業に対する印象も悪くなり、歩留まりの低下を招いてしまいます。
例えば、人事や面接官が横柄な態度をとる、不快になるような質問や話をするという場合、求職者の入社意欲が減退し、選考辞退や内定辞退される可能性が高いです。
(4)社風や社員の雰囲気が合わないと感じた
現在は人手不足によって採用難易度が高まっているため、自社サイトやSNSなどで自社の情報を積極的に発信し、人材確保に努めている企業も多いです。
一方で、発信された情報を見た求職者が、社風や社員の雰囲気が合わないと感じた場合、選考に進まず、歩留まりが低下する恐れがあります。また、企業に対する在籍社員や退職者の口コミを検索し、参考にする求職者もいるでしょう。
面接まで進んでも、実際に面接官から社風や価値観を聞き、イメージと違うと感じた場合は、求職者の選考離脱を招きます。
(5)家族の反対を受けた
4.採用の歩留まりが低下しやすい採用フロー |
採用の歩留まりが低下しやすい採用フローは、応募時の「応募率」、書類選考から面接へ移行する期間の「面接参加率」、内定出しから承諾するまでの期間の「内定承諾率」の3つあります。
各採用フローにおいて、歩留まりが低下しやすい原因を解説します。
(1)応募率
応募率が低下しやすい原因として、採用手法が自社に適していない、ターゲットに合わせて自社をアピールできていないということが考えられます。
採用手法の種類はさまざまで、それぞれにメリット・デメリットがあるため、コストが低いなど手軽さのみで選定すると、効果的な運用ができず、応募を集められない可能性が高いです。
また、ターゲットに刺さるアピールポイントを見極めるには、ペルソナ設計が欠かせません。不特定多数の求職者に向けたアピールは、誰にも届かない恐れがあるため注意が必要です。
💡中途採用手法について詳しくまとめた記事はこちら |
💡採用ペルソナについて詳しくまとめた記事はこちら |
(2)面接参加率
面接参加率が低下する原因としては、求職者に面接対策や準備が求められたり、精神的なストレスが生じたりすることが挙げられます。
人事担当者と直接顔を合わせてやりとりしない書類選考の段階では気軽に応募できても、面接となるとハードルが高くなり、志望度が高くない企業の場合は面接辞退し、選考から離脱するでしょう。
そのため、担当する面接官の情報や質問内容を事前に求職者へ伝えて、面接に対するハードルを少しでも下げるようにしましょう。
(3)内定承諾率
内定承諾率の低下は、複数の内定を受けていた求職者にとって自社が一番魅力的な企業でなかったことや、内定を出したのが他社より遅かったこと、求職者に入社への不安が生じたことなどが考えられます。
内定出しから内定承諾までの期間は離脱が起きやすく、歩留まりの低下を見越して内定を出している企業もあります。
歩留まりの低下を防ぐには、求職者の自社への入社意欲を高めておいたり、選考スピードを速めたりするほか、内定出し後もフォローして、求職者の不安解消に努めることが大切です。
5.採用の歩留まりを改善する5つの方法 |
採用の歩留まりを改善する方法を5つご紹介します。
・選考期間を短縮する |
ぜひ実践して、採用の歩留まり低下を防ぎましょう。
(1)選考期間を短縮する
選考期間が長期にわたる場合は、短縮することを検討しましょう。一般的な選考期間は、新卒採用は1か月以内、中途採用は2、3週間以内とされており、期間が短いほど候補者の他社への流出を防げる可能性があります。
そのため、例えば面接回数が他社と比較して多ければ少なくしたり、書類選考に時間がかかっているのであれば採用基準を明確化したりなど、自社の採用フローを見直し、改善することをオススメします。
(2)候補者への連絡は迅速かつ丁寧に行う
候補者への連絡は、迅速かつ丁寧に行うことが重要です。候補者は、企業からの連絡が遅いと不安を感じ、志望度が下がる傾向があります。また、他社の選考が先に進み、選考辞退となる恐れもあるでしょう。
候補者を逃さないためにも、候補者からの連絡には当日中、遅くとも翌日中には対応することが求められます。迅速な対応のほか、内容がわかりやすい文面にする、面接日の前日にリマインドメールを送るなど、丁寧さも心がけると、候補者の自社に対する信頼感の向上にもつながります。
💡候補者対応のメールテンプレートをまとめた記事はこちら |
(3)面接官トレーニングを行う
面接官の態度は、候補者の入社意欲を左右する大きな要素のため、面接官トレーニングを行なって面接官の心構えや態度などを教育しておきましょう。
面接官が好印象であれば、企業自体のイメージが向上し、候補者の入社意欲が上がります。身だしなみや話し方、態度のトレーニングのほか、NG質問をしないように徹底することも大切です。
💡採用面接でのNG質問についてまとめた記事はこちら |
(4)入社の動機づけを行う
歩留まりの低下を防ぐには、候補者の自社に対する入社意欲を高めることが求められるため、各採用フローにおいて入社の動機づけを行います。
例えば、求人広告にターゲットが魅力に感じる訴求文を掲載したり、面接で候補者の転職理由に対して最適な情報を提供したりすると、候補者の入社意欲が向上する可能性があります。
一方で、面接では動機づけのほか、ミスマッチを防ぐために候補者を見極めることも大切です。動機づけとミスマッチ防止の両方を意識した面接対応を心がけましょう。
💡志望度を上げるテクニックと見極め質問例についてまとめた記事はこちら |
(5)内定者フォローを行う
内定者フォローを行うと、内定承諾率の低下を防げる可能性があります。例えば、社員との交流会やオファー面談、内定者同士の懇親会を実施すると、候補者の入社に対する不安が解消されたり、入社意欲が上がったりして、内定を承諾してもらいやすくなるでしょう。
内定を出したからといって気を抜かず、内定者に対して配慮や丁寧なフォローをすることが大切です。
6.まとめ |
採用における歩留まりとは、各採用フローで次の工程に進んだ人数の割合を意味します。歩留まりが低下する要因としては、他社で先に内定が出たり、面接官の対応が悪印象だったりすることが挙げられるでしょう。
そのため、歩留まりの低さに悩んでいる企業は、選考期間の短縮や面接官の指導・教育、内定者フォローなどを行なって、自社の採用活動を改善していくことをオススメします。
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