日本企業における女性リーダーの割合は諸外国と比較して低く、政府は状況を改善するために女性活躍推進法を定めるなど、女性リーダーの増加に力を入れています。
女性リーダーの登用に力を入れている企業も増えてきていますが、そもそもどのような女性がリーダーに向いているのか、どのように育成すればいいのかがわからず、悩んでいる企業も多いでしょう。
この記事では、女性リーダーの現状と特徴、育成するメリットと育成方法についてまとめています。採用方法も紹介しているため、女性リーダーを増やしたい企業はぜひご参考にしてください。
1|日本企業における女性リーダーの現状 |
厚生労働省によると、令和5年度における日本企業(企業規模10人以上)の女性リーダーの現状について、女性管理職を有する企業割合は54.2%(令和4年度52.1%)、係長相当職以上の女性管理職等を有する企業割合は62.7%(同60.5%)となっています。また、女性管理職を有する企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は12.1%(同12.0%)、課長相当職は21.5%(同22.3%)となっています。
平成21年度と比較するといずれも増加していますが、近年は前年より減少している年度もあるため、順調に増加の一途をたどっているとは言いがたい状態です。
参考:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」
また、企業規模別に女性リーダーの割合を見てみると、従業員数10~29人規模が最も女性リーダーの割合が高く、次いで30~99人規模であることがわかります。中小企業のほうが女性リーダーの割合が高いといえるでしょう。
参考:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」
日本企業の女性リーダーは、諸外国と比較すると低い水準です。令和5年における女性の管理的職業従事者の割合は14.6%であるのに対し、諸外国は約30%以上あるところが多く、なかには3~4倍の差がある国もあります。
参考:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和6年版」
政府は、日本企業における女性リーダーが少ない状況を改善するために女性活躍推進法を定め、行動計画の策定や情報公表の義務化によって、企業が女性リーダーの登用に力を入れるように促しています。
女性活躍推進法の内容と取り組むべきポイントをまとめた記事はこちら |
2|女性リーダーが少ない理由とは |
女性リーダーが少ない理由としては、次の3つが挙げられます。
・性別役割分担意識が根強い |
女性リーダーを増やしたいと考えている企業は、まずは女性リーダーが少ない理由を十分に把握しておきましょう。
2-1.性別役割分担意識が根強い |
日本に古くからある慣習で、「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分担意識が根強いことが、女性リーダーが少ない理由のひとつです。
「男性は仕事をして女性は家事・育児をする」という意識が当たり前だった時代を経ている場合、性別役割分担意識を持たれている方がいらっしゃる可能性もあります。
また、女性を取り巻く環境が、「女性は家庭に入るべき」「女性が子育てしたほうがいい」などのアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)が根付いている場合、仕事を続けづらい思いをしているおそれがあります。
政府は、女性活躍推進法のほか「女性版骨太の方針」も定め、女性を取り巻く課題を解消するために重点的に取り組む事項や方針をまとめています。
女性版骨太の方針2023の内容をまとめた記事はこちら |
2-2.女性が長く働ける環境が整備されていない |
女性が長く働き続けられる職場環境が整備されていないことも、女性リーダーが少ない理由として挙げられます。
福利厚生が整っていない、周りの理解がなくフォローがないなど、子育てと仕事を両立することが難しい環境では、リーダーになるどころか離職に至るかもしれません。
また、育休期間が人事評価の対象期間に含まれない場合、育休をとった分評価が下がるため、昇進が遅れてリーダーに登用されづらくなります。
2-3.リーダーや管理職の働き方への不安がある |
リーダーや管理職の働き方に対して不安がある女性は多いです。弊社の行なったアンケート「管理職ってどう?管理職について聞いてみました。」によると、管理職経験がない方に「今後管理職になりたいか」を尋ねたところ、なりたくない派が54.9%で過半数を超えました。
※アンケート実施期間/2021年6月4日~6月17日
※有効回答数/864名
※調査方法/女の転職type会員に対してWeb上で調査
「管理職になりたくない理由」を問うたところ、1位の理由が「責任が重くなる」で68.6%、2位が「残業時間が増えそう」50.8%、3位が「自分にできる自信がない」50.3%でした。
「その他」では、「家庭との両立が不安」という声も多数挙がったため、管理職という立場や働き方に対するマイナスイメージによって、不安を抱いている方が多いことがわかります。
3|女性リーダーの特徴や求められるスキル |
女性の中には、「周囲を気遣う優しさ」を持ちながら仕事をされている方が多いように思われます。そのような方は、メンバーを気遣ったり業務意欲を高めたりして目標達成を目指す「変革型リーダーシップ」を発揮しやすいでしょう。
いわゆるアメとムチを与えてメンバーの業務を促す交換型のリーダーシップよりも、変革型リーダーシップのほうがイノベーションを起こしやすいといわれており、次の3つのスキルが求められています。
・業務への高いモチベーション |
女性リーダーに多い変革型リーダーシップに求められるスキルについて解説します。
3-1.業務への高いモチベーション |
女性リーダーには、業務への高いモチベーションが求められます。業務に取り組むことで成し遂げられることを考え、効率的な進め方を模索しながら意欲高く仕事に打ち込んでいく姿勢は、メンバーの業務意欲を触発しモチベーションを高めて、巻き込みながら目標達成を目指せるでしょう。
トラブルなど予期せぬ事態が発生した場合も、迅速かつ冷静な判断をしてスピーディーに対処していきます。
3-2.やる気を引き出すコーチング能力 |
成果を出すには、メンバー一人ひとりのやる気を引き出し、それぞれが自分の役割を全うすることが大切です。そのため、女性リーダーには、各自が課題解決策にたどり着くように導くコーチング能力が求められます。
メンバーに関心を持ち意見を傾聴することで、メンバーは自分で考えて意見を言うことに積極的になり、課題解決できる可能性があります。成功体験を積めればますます仕事に意欲的になると考えられるため、メンバーのやる気が向上するでしょう。
3-3.信頼関係を築けるコミュニケーション能力 |
女性リーダーとメンバー間に信頼関係ができていなければ、メンバーはついてきてくれず、課題解決や目標達成ができない可能性があります。
女性リーダーは、メンバーとの信頼関係を構築することを意識し、メンバーに積極的に声かけを行うなどして気遣ったり、サポートしたりすることが求められます。
また、チーム全体の雰囲気を良好なものにするために、意見の違いを受け入れる環境を作ることも大切です。
4|女性リーダーを育成するメリット |
女性リーダーを育成すると、企業に次のようなメリットがあります。
・企業イメージが向上する |
女性リーダーを育成するメリットをご紹介します。
4-1.企業イメージが向上する |
女性がリーダーになり活躍している企業として、社会からの企業イメージが向上するメリットがあります。「家庭と仕事の両立が難しい」というイメージが強いリーダーや管理職という立場に女性が就くことは、働きやすい職場という印象を求職者や世間に与えやすいです。
少子化の影響で労働力不足が懸念されている現代において、企業イメージが向上することは求職者からの応募増加につながるため、安定した採用活動ができる可能性があります。また、働きやすい職場は従業員の定着率も向上させるでしょう。
4-2.女性従業員のモチベーションが高まる |
女性リーダーがいると、「家庭と仕事を両立させながら活躍している女性」のロールモデルとなるため、女性従業員のモチベーションが向上する可能性があります。
リーダーや管理職になることに不安を持っている女性従業員が、実際にリーダーとして活躍している女性と関わることで自信につながり、目標としてリーダーを目指せるようになるかもしれません。
また、女性リーダーには女性特有の悩みも相談しやすいと考えられるため、理解者がいることやサポートを受けられることに対する安心感から、女性従業員の働きやすさ向上も期待できます。
4-3.企業全体の意識改革ができる |
女性リーダーを育成すると、性別役割分担意識が強い従業員の意識に変化が生じたり、女性従業員のリーダーに対する不安が軽減したりして、企業全体の意識改革ができるメリットがあります。
男女問わず意識改革ができれば、女性がリーダーになることに反発を覚える従業員がいなくなるため、積極的に女性のリーダー登用が進む可能性があります。また、リーダーになれないと思う女性従業員も減り、前向きにキャリアを形成していけるでしょう。
性別にとらわれない人材登用によって、多様なアイデアの創出や働き方が実現でき、企業成長につながります。
5|女性リーダーを育成する方法 |
女性リーダーを育成すると、企業や従業員にさまざまなメリットがあります。
そのため、次の4つの方法で女性リーダーを育成していきましょう。
・女性が働きやすい環境と評価制度を整備する |
女性リーダーを育成する方法を解説します。
5-1.女性が働きやすい環境と評価制度を整備する |
上述のアンケートのように、女性は、出産や育児、介護などのライフイベントと仕事との両立に不安を感じ、リーダーになりたくないと考えている方もいるため、女性が働きやすい環境を整備することが重要です。
例えば、家庭と仕事を両立しやすいように働く時間を自由に選択できたり、有休とは別の休暇制度を設けたりすることが挙げられます。育休などの長期休暇があっても、前向きにキャリアを形成できる評価制度を整備することも大切です。
女性が働きやすい職場環境は女性リーダーを育成するだけでなく、全従業員の働きやすさにつながります。
5-2.女性リーダーを育成する研修を実施する |
女性リーダーを育成するために、女性に対してリーダーの育成研修を実施しましょう。女性リーダーを育成するのに適した人材を選任し、どのような研修が必要か、女性リーダー候補は誰かなどを十分に考えたうえで研修を行なっていきます。
ただ研修を行うだけでなく、研修後には受講者の女性がリーダーとしてのスキルや意識を高められるように、ワンランク上の業務を任せたり、新たな事業のメンバーとして選んだりして、成長の機会を与えることが大切です。
5-3.女性リーダーのサポート体制を構築する |
リーダー候補の女性のなかには、リーダーになることに不安を抱えている方もいるかもしれません。女性リーダーとして前向きに活躍してもらうためにも、女性が相談しやすい環境を作るなど、サポート体制の構築が求められます。
例えば、女性が相談しやすい窓口を設置したり、女性リーダーのコミュニティを作ったりすると、不安を取り除くことにつながる可能性があります。女性特有の悩みは、女性同士だと共感ができたり、自身の経験をもとにアドバイスすることができたりするため、お互いに助け合い、励まし合いながら女性リーダーとして業務に取り組めるでしょう。
5-4.長期的視点で女性リーダー育成に取り組む |
女性リーダーの育成は、時間がかかることを理解しておきましょう。古くからの慣習によって、女性に成長の機会を与えていなかったり、性別役割分担意識が強かったりする企業は、女性リーダーを育成するために人員の配置転換や教育体制の構築、経営層や従業員の意識改革などから取り組む必要があります。
また、女性リーダーのロールモデルがいない企業も、自社で活躍し、女性従業員がリーダーを目指したいと思えるような女性リーダーの理想像をじっくりと考えていくことで、適切な育成や社内体制の整備につながります。
6|女性リーダー候補を採用する方法 |
自社内で女性リーダーを育成する方法のほかに、女性リーダー候補を中途で採用する方法もオススメです。
女性リーダー候補を採用する方法は、次のとおりです。
・リーダーに適している人物像を決める |
自社の女性リーダーを増やしたい企業は、採用する方法もぜひご検討ください。
6-1.リーダーに適している人物像を決める |
まずは、女性リーダーとして適している人物像を決めます。人物像を決める際には、ペルソナ設計がオススメです。ペルソナとは、年齢、住所、現職、趣味、ライフスタイルなど、実在するかのように詳細に設定した人物像のことです。
ペルソナ設計をすると、採用基準の統一を図れるメリットがありますが、理想ばかりを盛り込むと採用市場に求める人材がいないということになりかねないため、採用市場や競合他社の状況を分析したうえで設計することが求められます。
採用ペルソナのメリットや作り方についてまとめた記事はこちら |
6-2.リーダー候補として必要なスキルを洗い出す |
次に、リーダー候補として必要なスキルを洗い出していきます。
前述のように、女性リーダーには業務への高いモチベーションやコーチング能力、コミュニケーション能力が必要です。トラブルなどの突発的な出来事にも迅速に対応できるように、冷静な判断力やメンバーのサポート能力も求められると考えられます。
自社の女性リーダー候補として、必要なスキルを採用基準に落とし込んでいきましょう。
6-3.ターゲットに刺さる自社の魅力を整理する |
女性リーダー候補となる求職者に応募してもらうには、自社の魅力を整理し、ターゲットに刺さるメッセージを伝えることが求められます。
例えば、女性管理職の比率を載せて女性が活躍しやすい職場であることを伝えたり、女性のキャリアパスのサポート体制が整っていることを訴求したりすると、キャリアアップを目指している女性に刺さるかもしれません。
求職者がより具体的に自分が働くイメージを抱けるように、女性管理職や女性従業員のインタビュー記事を載せる、女性従業員が働いている様子の画像を使用するなども効果的です。
6-4.ロールモデルとなる女性リーダーに選考に協力してもらう |
ロールモデルとなる女性リーダーや管理職がいる場合は、選考に協力してもらいましょう。女性リーダーや管理職が求職者との面談や企業説明会、面接で仕事のやりがいなどを求職者に伝えられれば、入社への動機づけができると考えられます。
求職者は、実際に企業で活躍している女性から直接話を聞けることで、入社後のイメージが湧きやすくなったり、入社意欲が高まったりするでしょう。
6-5.教育体制やキャリアパスを設計する |
女性リーダー候補を採用したあとの、教育体制やキャリアパスを設計しましょう。女性リーダー候補をせっかく採用しても、リーダーとするための育成を行わないでいると、女性リーダーとして成長することが難しいかもしれません。また、キャリアアップ意識が高い求職者が、企業からのサポートがないことを不満に感じ、早期離職する恐れも考えられます。
そのため、あらかじめ教育体制の整備やキャリアパスを設計しておき、求職者の採用後はスムーズに女性リーダー育成に取りかかれるようにしておきましょう。
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7|まとめ |
日本企業に女性リーダーが少ない理由は、性別役割分担意識が強かったり、女性が長く働ける環境が整っていなかったりすることが挙げられます。
家庭と仕事の両立を不安に感じ、管理職になりたくないと考えている女性も多いため、女性が働きやすい職場環境やサポート体制を整備することが大切です。
女性リーダーを増やす方法は、自社での育成と中途採用があります。自社のリソースを踏まえてより適した方法を選択し、女性リーダーを増やしていきましょう。
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