面接官トレーニングとは、効果的な面接を目指して面接官としてのスキルを身につける研修などのトレーニングのことです。
候補者の見極めと動機づけ、自社の広告塔という3つの役割がある面接官は、ミスマッチな採用の防止や自社の印象アップのために面接官トレーニングを行い、スキルを向上させたり適切な候補者対応を学んだりする必要があります。
この記事では、面接官トレーニングの目的とメリット、方法と効果的なポイントを解説しています。
面接官が身につけるべきスキルもご紹介しているため、経験の浅い面接官のスキルアップや面接の質向上にぜひお役立てください。
この記事でわかる事 |
・面接官トレーニングの目的とメリット ・面接官が身につけるべきスキル ・面接官トレーニングの方法 ・面接官トレーニングの効果を上げるポイント |
1.面接官トレーニングの目的 |
面接官トレーニングの目的は2つあります。
・組織に必要な人材を見抜く力を身につける |
それぞれ具体的に解説します。
(1)組織に必要な人材を見抜く力を身につける
ミスマッチな人材の採用は、採用コストを無駄にしたり、既存従業員と採用人材の双方のモチベーションを低下させたりなど、マイナスな影響を及ぼします。ミスマッチな採用とならないようにするには、組織に必要な人材を適切に見抜く力が必要です。
面接官は、候補者のスキル、価値観、志向性、経験、話し方、態度など、履歴書に載っている内容から直接会わなくてはわからない事柄までを面接という限られた時間で評価します。適切に評価するには候補者の本音や実力を見抜く質問を投げかけたり候補者の挙動を分析したりする力が求められますが、経験のない面接官には難しいでしょう。
そのため、面接官トレーニングを行い、自社に必要な人材を見抜く力を養うことが重要です。
(2)候補者に合わせた動機づけの仕方を身につける
せっかく候補者に自社への興味をもってもらえても、動機づけができないと入社意欲を高められず、他社に流れてしまう恐れがあります。候補者の入社意欲を高めるには、候補者に合わせた自社の魅力を伝えることが大切なため、伝え方や情報の精度を高める目的として面接官トレーニングを行います。
候補者が求める情報や不安を払拭するような情報、候補者と似た経歴の従業員の活躍エピソードなどを伝えた場合、満足感を高められたり魅力に感じてもらえたりするでしょう。
また、自社のポジティブな面だけでなく、残業が多い、リモートワークができないなどのネガティブに映るかもしれない面も正直に伝えると、ミスマッチ人材の採用を防ぎつつ、候補者の信頼感を高めることにつながります。
2.面接官トレーニングを実施するメリット |
面接官トレーニングを実施すると、次の3つのメリットを得られます。
・面接の評価基準を社内で統一できる |
面接は候補者と顔を合わせて話ができる貴重な場であり、採用判断に大きく関わるフローです。
面接官トレーニングで得られるメリットは、いずれも採用成功に重要な要素のため、ぜひ把握しておきましょう。
(1)面接の評価基準を社内で統一できる
面接官トレーニングを行うと、自社に必要な人材に求められるスキル、価値観、人柄などの認識や評価基準を統一できるメリットがあります。
評価基準等を面接官同士で共有・統一しないまま面接に臨むと、各面接官の主観で候補者が判断されてしまいます。例えば、「主体的な人材」の認識が、面接官Aは「指示がなくても動く人材」、面接官Bは「会議で積極的に意見を出す人材」だった場合、それぞれ自分が思う「主体的な人材」かを見極める質問をし、評価するかもしれません。面接官によって評価基準がわかれると、優秀な人材を逃したり選考に時間がかかったりする恐れがあります。
面接官トレーニングは、求める人材や評価方法、質問などの統一につながるため、客観的で質の高い評価ができ、自社が本当に求める人材の獲得が可能となります。
💡面接評価シートのメリットと作り方についてまとめた記事はこちら |
(2)自社にマッチする候補者の見極め力が高まる
面接官が複数人の場合、評価基準を統一していても、面接官の経験やスキルによって見極めに差が出てしまうケースがあります。
例えば、面接官経験が浅くて緊張していたり候補者への穏やかな声かけができなかったりする場合、候補者をリラックスさせられず、本音や候補者本来の姿を引き出せないでしょう。十分に見極められていない面接は、ミスマッチ人材の採用や採用すべき人材を逃すことにつながります。
面接官トレーニングを行えば、面接官のスキルを全体的に向上でき、面接官一人ひとりの候補者を見極める力も高まるため、面接官の違いによる採用人材の質の差を縮められるでしょう。
(3)面接で候補者の志望度を向上できる
候補者は、自社のほかに複数の企業の選考を並行して受けている可能性が高いです。さまざまな企業のなかから自社を選んでもらうには、面接で候補者の志望度を高めることが求められます。
弊社が行なった調査によると、中途採用面接を受けて入社した候補者の入社理由で最も高かったのが「面接官が好印象だった(67.8%)」でした。次いで、「仕事内容を詳しく知れた(55.2%)」、「会社のことを詳しく知れた(48.1%)」とあり、面接での面接官の印象や対応がとても重要であることがわかります。
面接官トレーニングを実施すると、面接官の心構えや適切な対応、魅力に感じてもらえる情報提供などをできるようになるため、候補者の入社意欲を高められ、優秀な人材の獲得につながる可能性があります。
また、採用に至らなくても、候補者に好印象を与えられた場合、将来的な転職時に候補としてもらえたり、口コミで自社のよい評判が広まったりするかもしれません。
3.面接官が身につけるべきスキル |
面接官トレーニングを実施すると、面接官が身につけるべきスキルを習得できたり高められたりします。
面接官に必要なスキルは次の3つです。
・自社に合う人材かを見極める「質問力」 |
各スキルがどのようなものかご紹介します。
(1)自社に合う人材かを見極める「質問力」
質問力は、人材の能力や志向性、性格などを理解し、自社にマッチする人材かを見極めるために重要なスキルです。
適切な質問ができないと、人材の能力や人間性を見極められず、ミスマッチ人材を採用してしまうかもしれません。また、面接のフローに応じた質問をすることも大切です。面接は大きく次の4つのフローにわけられます。
①アイスブレイクと自己紹介 |
まずはアイスブレイクで候補者の緊張をほぐし、リラックスした雰囲気をつくりながら本質に迫っていく流れです。
質問をする際には、候補者の何を知りたいのか、評価したいのかという目的を意識しましょう。
【質問例】
フロー | 質問 | 目的 |
①アイスブレイクと自己紹介 |
・本日は何を使って来られましたか? |
・候補者の緊張をほぐす ・自己開示することで安心感を与える |
②企業・業務説明 |
当社に入社した場合、どのような業務を担当したいですか?またどのような成果を残したいですか? |
志望動機や入社意欲を確認する |
③経験・スキルヒアリング |
これまでの経歴の中で、苦戦や挫折したことはありますか?またどのような経験で、どのように乗り越えましたか? |
経験やスキルが自社にマッチしているか、課題解決力があるかを見極める |
④質疑応答と締め |
当社で働くことを考えた場合に、現状何か不安な点はありますか? |
逆質問によって、候補者の入社意欲やマッチ度を把握する |
さらに詳しい目的別の質問例やNG質問については下記記事にまとめているため、ぜひご参考にしてください。
💡目的別の質問例とNG質問についてまとめた記事はこちら |
(2)本音を引き出す「傾聴力」
傾聴力とは、相手に興味を持ち、耳を傾けてよく聞く能力のことです。
傾聴力がない場合、相手の話をさえぎる、ほかのことをしながら片手間で聞くなどのネガティブな態度によって、候補者の心象を悪くしたり話す気をなくさせたりする恐れがあります。
また、聞く態度は丁寧でも、内心ではほかのことを考える、候補者を下に見るなど真摯に向き合っていなければ候補者に透けて見えて、やはり本音を話さなくなるだけでなく、入社意欲も大きく減退するでしょう。
傾聴力が高ければ、「話を聞いてもらえる」と安心した候補者が素直に意見や心情などの本音を話してくれるようになるため、より精度高くマッチ度をはかれます。
具体的には、候補者の話を「その経験は自社の〇〇という業務にも活かせますね」などと肯定したり、「どうして〇〇の施策をしたのですか?」と掘り下げたりすると、候補者の心象をよくしながら適切に本音を見極められます。
(3)自社への入社意欲を高める「動機づけ力」
自社が求める人材に「この企業に入社したい」と思ってもらうには、「動機づけ」が必要です。動機づけをするには、候補者に刺さる自社の魅力を適切に伝えることが求められます。
例えば、現職で休日数が少なくて不満を抱えている人材には、休日数の多さを伝えると、ワークライフバランスが保てることにメリットを感じてもらえるでしょう。現職で公正な評価を受けられず、給与が低いことを理由に転職活動をしている人材には、公正な評価制度と給与設定、インセンティブ制度をアピールすると、入社意欲が高まるかもしれません。
また、「候補者にとってデメリットに感じられるのではないか?」と思われるような内容も、候補者によっては魅力に感じてもらえるかもしれないため、ミスマッチを防止するだけでなく動機づけの観点からも、デメリットをきちんと伝えるようにしましょう。例えば「少人数だから募集ポジション以外の仕事もお任せすることが多い」という内容は、成長意欲の高い人材には「スキルアップできる」と思ってもらえる可能性があります。
動機づけの効果を高めるには、面接官自身が企業の魅力を理解することが大切です。働きやすい制度や社風、事業内容のほか、候補者と似たような経歴を持つ従業員の成功体験や勤務エピソードなども把握しておくと、面接の場で興味的な情報として提供できます。
💡動機づけにつながるテクニックについてまとめた記事はこちら |
4.面接官トレーニングの方法 |
面接官トレーニングの方法として、次の3つが挙げられます。
・集合型研修 |
自社に合った面接官トレーニングを行うと、効率よく面接官のスキル向上を図れるでしょう。
(1)集合型研修
集合型研修とは、採用に関する専門家を講師として招き、座学でスキルアップを図る方法です。採用市況や面接官の役割、心構え、質問テクニック、評価方法や評価基準の設定方法、応募書類のチェック方法などさまざまなスキルを学べるため、面接に限らず採用活動全般に役立つ知識を得られます。
集合型研修のメリットは、一度に複数の従業員を対象として開催できることと、講師に直接質問できることです。また、参加者同士が協力して作業する時間があれば、コミュニケーションの活性化や信頼感の向上が期待できるでしょう。
一方のデメリットは、開催の金銭的コストや準備の時間的コストがかかる点です。講師への謝礼や会場費の発生、教材の準備、開催のスケジュール調整などの手間がかかります。
デメリット以上の効果を得るためにも、講師の専門知識の高さや研修内容、研修の口コミなどを確認したうえで適切な研修を選択しましょう。
(2)セミナー
コストを抑えて面接官トレーニングを行いたい場合は、オンラインセミナーもオススメです。開催されているオンラインセミナーによっては、無料で学べるものもあります。
面接官に必要なスキルや面接のポイント、志望度を上げるコツなどをオンデマンド配信やライブ配信で身につけられます。ライブ配信の場合、参加者とのペアワークやロールプレイングなどをプログラムに入れているセミナーもあるため、オンライン面接も練習できてより実践的でしょう。
対面型のセミナーもありますが、オンラインであればインターネット環境を整えるだけで気軽に参加でき、コストを抑えることが可能です。また、オンデマンド配信されていれば動画を繰り返し見返せるため、面接官が自分の理解力やペースに応じて学べます。
一方で、オンラインセミナーの場合、受講環境によっては集中しづらい可能性があります。例えば自宅で受けていたり、ほかの仕事が目についたりするような環境の場合、気が緩む、ほかの仕事をしながら受講するといったケースが考えられるでしょう。また、通信環境によっては音声や画面にトラブルが生じる恐れもあり、参加者にとって満足のいく時間とならないかもしれません。
セミナーも集合型研修と同じように、講師の専門性や口コミなどの情報を吟味したうえで選定することが大切です。
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(3)ロールプレイング
面接官トレーニングにおけるロールプレイングは、面接官役と候補者役にわかれて模擬面接を行うことです。
面接官役は、候補者役から面接に関する具体的なアドバイスをもらえるため、面接スキル向上に役立てられます。一方、候補者役も候補者の立場になることで、面接官の態度・質問から受ける印象や心情の変化などから新たな気付きを得られるでしょう。
ロールプレイングは録画しておくと、あとから見返せて分析できたり、スキルの高い面接官の面接方法を学べたりします。また、面接評価シートも用いて評価まで行うことで、質問力や傾聴力、動機づけ力だけでなく、適切に評価するスキルも向上させられます。
自社内でロールプレイングの実施が難しい場合は、ロールプレイングがプログラムに入っている研修やセミナーを探してみましょう。
5.面接官トレーニングのポイント |
面接官トレーニングの効果を高めるには、次の2つのポイントを意識しましょう。
・自社の課題を洗い出す |
具体的に解説します。
(1)自社の課題を洗い出す
自社の課題を洗い出すと、面接官トレーニングで重点的に向上させるべきスキルが明確になります。
例えば、内定辞退率が高い場合、候補者に自社の魅力を適切に訴求できていない、面接官の態度で不快な思いをさせたなどのケースが考えられるでしょう。課題を解決するには、候補者が求める情報を見極める質問力を鍛えたり、自社の魅力を改めて分析したり、面接官の対応を正したりするトレーニングが必要といえます。
採用課題と課題の発生原因となる事柄を分析して、関わりのあるスキル向上に努めましょう。
(2)認知バイアスの認識を持つ
認知バイアスとは、いままでの経験による先入観や思い込み、固定観念などで合理的な判断ができなくなる心理現象のことです。
人間は、心理学的に「見た目がいい人」「自分と類似している人」に好意を抱く傾向があります。「見た目がいい人」に対しては、外見のよさから、地位や資産などの目に見えない部分もよい特徴があると思ってしまう「光背効果(ハロー効果)」が生じます。また、「前職が一緒」「出身地が一緒」など、「自分と類似している人」に対しても、同じである安心感や相手を理解しやすい状況などから、親近感を抱きやすいです。
認知バイアスが生じると、スキルや能力、人柄などを客観的に判断できなくなり、ミスマッチな人材を採用してしまう恐れがあります。一方で、無意識的に生じてしまう認知バイアスを完全になくすことは難しいため、「認知バイアス」という心理現象があること、「いまの判断は認知バイアスがかかっていないか?」を疑い、意識的に合理的な判断をすることが大切です。
自社の慣習などで認知バイアスができてしまっている場合、自社内の面接官トレーニングではお互いに気付かない可能性があるため、社外の専門家を頼るなどして、自社内の認知バイアスを把握・解消していきましょう。
6.まとめ |
面接官トレーニングを行うと、評価基準を社内で統一できたり、候補者の適切な見極めや志望度を向上させる能力を高められたりするメリットがあります。
面接官は、採用成功につなげるために質問力や傾聴力、動機づけ力を身につけることが必要です。面接官のスキルアップを図るには、研修やセミナー、ロールプレイングの実施が効果的なため、積極的に取り入れることをオススメします。
面接は、候補者と対面して話せる数少ない機会です。求める人材を採用したり自社のファンを増やしたりできるように、面接官トレーニングを実施して、面接官の質を高めていきましょう。
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