人手不足への対応や専門的な人材の雇用を目的として、外国人採用を行う企業は増加傾向にあります。
しかし、外国人採用には日本人雇用のケースとは異なる法律や手続きが関わるなど、煩雑さや難しさを感じる部分もあるため注意が必要です。
この記事では外国人採用のメリット・デメリット、7つのステップ、課題と解決策をまとめています。外国人採用を初めて行う企業や関心がある企業は、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかる事 |
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目次
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1-1 外国人採用のメリット
1-2 外国人採用のデメリット -
2-1 外国人材によって雇用可否がわかれる
2-2 待遇は基本的に日本人と同じ
2-3 最新の法改正情報を把握しておく -
3-1 雇用目的を明確にする
3-2 外国人材を募集する
3-3 人材の雇用可否を確認する
3-4 選考を行う
3-5 雇用契約を結ぶ
3-6 在留資格の申請・変更を行う
3-7 入社の準備に取り掛かる -
4-1 コミュニケーションの難しさ
4-2 外国人材のモチベーション維持
4-3 雇用手続きが煩雑 -
5-1 在留資格(ビザ)の手続きはどのように進めればいいですか?
5-2 採用した外国人材の定着のために企業としてどのような取り組みが有効ですか?
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1.外国人採用のメリット・デメリット |
外国人採用には、メリット・デメリットがあります。
どのような効果や影響があるのか、確認しておきましょう。
(1)外国人採用のメリット
外国人採用をすると、次の4つのメリットを得られるでしょう。
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各メリットについて解説します。
人手不足解消につながる
日本は少子高齢化の影響で労働力人口が減少しており、人手不足に悩む企業が増えています。
厚生労働省の「令和6年版 労働経済の分析─人手不足への対応─」によると、1990年代では有効求人倍率に地域差がありましたが、2010年代には差が小さくなり、人手不足が全国的なものとなりました。企業規模別に見ると、特に中小企業が人手不足に陥っていることがわかります。
日本人採用は、採用市場の激化により難易度が高まっているため、外国人採用も検討することで人手不足を解消できる可能性があります。
若手人材を確保できる
厚生労働省の「在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移」によると、外国人労働者の年齢で最も高い割合は「20~29歳」のため、外国人採用によって若手人材を確保できるかもしれません。
また、外国人材は日本での労働に向けて日本語を勉強しています。日本語は漢字、ひらがな、カタカナと多様な文字や敬語表現などがあり、外国人が学ぶにはとても難しい言語です。そのため、日本で働くために日本語を勉強する人材は意欲的かつ優秀と考えられ、採用できた場合、活躍が期待できるでしょう。
多言語対応可能となる
外国人採用は自社の多言語対応を可能とするため、事業の幅を広げられるメリットがあります。例えばインバウンドで高い効果を得られたり、外国人向けの事業を起ち上げられたりするかもしれません。
また、採用した外国人材からリアルな国民性や文化を聞き、理解を深めた場合、地域に受け入れられやすい海外拠点の設置につながるなど、グローバル化も効率よく進められます。
助成金を受けられる
政府は、外国人採用に関する助成金制度を設けています。例えば、下記のような制度です(※2025年7月時点)。
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ほかにも、各地域の自治体が外国人採用の支援制度を設けているケースがあるため、調べてみることをオススメします。助成金の活用は、企業負担を減らしながら効果的な外国人材の確保・育成につながるでしょう。
💡キャリアアップ助成金の内容と注意点についてまとめた記事はこちら |
(2)外国人採用のデメリット
外国人採用には次の3つのデメリットもあります。
外国人採用が「失敗」とならないように、内容を把握しておくことが大切です。
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「国」の違いによるギャップ
日本語の習得具合に限らず、話し方や価値観などの国民性の違いによって、コミュニケーションをスムーズにとれないことがあります。文化や慣習などの違いから、日本では一般的に行われていることが外国人材にとって理解できないケースもあるでしょう。
対日本人と対外国人とのギャップに、コミュニケーションコストの増加やフォローによる業務の停滞が生じ、人材不足は解消できても生産性が向上しないという事態になりかねないため注意が必要です。
外国人採用の知識が必要
日本人を雇用する際にも法律に則った対応が必要ですが、外国人採用には特有のルールがあるため、正しい知識を習得しておかないと法律違反となる恐れがあります。
例えば、選考時に在留カードを確認する、採用後にハローワークへ届け出るなどの対応が求められます。
日本人雇用の場合と同様に進めてしまわないように、外国人採用に関する手続きなどを事前に把握しておきましょう。
外国人材の受け入れには時間がかかる
外国人採用に成功しても、早期に働いてもらうことは難しいです。例えば、海外在住の外国人材の場合、内定から入社までに4~6か月程度の期間を要します。外国人材が日本に在留している場合は、在留資格の変更・更新が不要であれば内定後すぐに就業開始することも可能ですが、変更等が必要なケースでは内定から入社まで2~4か月はかかるでしょう。
そのため、迅速に人材を確保したいという企業は、別の機会に外国人採用を検討したほうがいいかもしれません。
2.外国人採用をする上で注意すべきこと |
外国人採用にあたっては、正しい知識を習得しておくことが大事であると前述しました。
ルールに則って外国人採用できるように、必要な知識として注意すべきことを3つご紹介します。
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(1)外国人材によって雇用可否がわかれる
外国人材によって雇用の可否がわかれる点に注意が必要です。
具体的には、次の条件すべてに当てはまる外国人材を雇用できます。
雇用条件 | 内容 |
①在留カードを所持している |
在留カードは、日本に3か月以上の長期滞在する外国人に交付される。氏名や生年月日などの記載や、16歳以上の場合は顔写真もついており、適法に日本に在留しているという証明書になる。 |
②就労可能な在留資格がある |
在留資格によって就労の可否や活動の範囲が定められている。就労可能な在留資格を「就労ビザ」と呼ぶ。 【例】 |
③在留期限が切れていない |
在留期限が切れている外国人の雇用は、法律違反となる。在留期限は在留カードで確認可能。 |
④依頼する業務が在留資格で認められている |
在留資格によって業務可能範囲が定められている。外国人が範囲外の業務に従事してしまうと、不法就労となり処分される恐れがある。 【例】就労目的の在留者で、在留資格が「教授」の場合「日本の大学(もしくはこれに準ずる機関または高等専門学校)において研究、研究の指導または教育をする活動」が業務範囲 |
④において、外国人が自社の業務に該当する在留資格を有していない場合には、「在留資格変更許可申請」を外国人本人が行うことで在留資格を変更できます。
就労可能な在留資格や対象業務などの詳細は、厚生労働省の資料をご覧ください。
参考:厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」
参考:出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」
(2)待遇は基本的に日本人と同じ
採用する外国人の待遇は、基本的に日本人と同じでなければなりません。労働基準法や健康保険法などは外国人にも適用されるため、例えば外国人だけ最低賃金を下回る給与を設定する、有給休暇を与えないなどの待遇は違法です。
一方、能力の差など、合理的な理由で日本人よりも給与を低くすることは問題ありません。日本人の待遇と差が生じるときには、外国人材に理解してもらえるように丁寧な説明が求められます。
(3)最新の法改正情報を把握しておく
外国人採用に関わる法律は、「出入国管理法」や「雇用対策法」です。不法就労など、法律に違反した外国人には罰金や懲役刑、在留資格の取り消しや退去強制処分などの罰則があります。
また、企業も、就労資格がない外国人を雇用した場合や、認められている業務範囲外の仕事を任せた場合は、「不法就労助長罪」として罰せられます。「不法就労であることを知らなかった」としても、「確認不足」などの過失が認められれば罰則の対象です。
そのため、外国人採用に関する法律を適切に把握し、最新の法改正情報にもアンテナを高くしながら、法律違反とならないように知識をアップデートしていくことが重要です。
3.外国人採用の7つのステップ |
外国人採用をするには、次の7つのステップを踏みます。
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前述のように、外国人採用は日本人採用とは別に注意すべきポイントがあるため、違反とならないように適切に採用活動を進めていきましょう。
(1)雇用目的を明確にする
まずは雇用目的を明確にします。外国人採用をすることで、「人手不足の解消」や「グローバル化」など、成し遂げたいことを明らかにしましょう。
ただ漠然と外国人採用を目指しても、コストばかりがかかって採用できないということになりかねません。ミスマッチのリスクもあるため、採用計画の立案やペルソナ設計などを行い、目的に合った採用活動をすることが大切です。
💡採用計画の立て方とポイントについてまとめた記事はこちら |
(2)外国人材を募集する
採用計画を立てたあとは、外国人材を募集します。外国人材の採用に特化した求人サイトや人材紹介会社を利用すると、在留資格などの知識が豊富な担当者のサポートを受けながら、求める外国人材と効率よく出会える可能性があります。
また、外国人従業員から外国人の知人を紹介してもらうリファラル採用も効果的です。日本在住の外国人はコミュニティを形成していることが多く、依頼すれば自社に合った人材を紹介してもらえるかもしれません。すでに友達が働いているという状況は、応募を勧められた外国人材も安心でき、定着しやすいと考えられます。
💡リファラル採用の意味と成功方法についてまとめた記事はこちら |
(3)人材の雇用可否を確認する
国内在留の外国人材から応募が来たら、在留カードや在留資格で雇用可否を確認します。
法律違反とならないためにも、就労可能か、業務を任せられるか、偽造された在留カードではないかなど、注意深いチェックが必要です。厚生労働省は、偽造在留カードの見極めについて目視のポイントやアプリの情報を提供しているため、活用することをオススメします。
なお、海外にいる外国人材を採用する際には、日本への渡航前に在留資格を取得してもらいます。
(4)選考を行う
雇用可能な外国人材であれば、選考を行います。ポイントは、「流暢な日本語に惑わされないこと」と「返答をそのまま受け取らないこと」です。日本語が達者な外国人に対して、安心感から評価が高くなるケースがありますが、自社に必要なスキルが備わっていないとミスマッチとなります。
また、海外企業と日本企業では雇用形態や業務範囲に違いがある可能性が高いです。経験業務を聞いて、返答をそのまま受け取ってしまうと、「携わっていたのは業務の一部だった」「意味合いが違った」なども生じかねません。
そのため、ミスマッチを防ぐには、外国人材のスキルや経験を深掘りし、丁寧に見極めることが求められます。
(5)雇用契約を結ぶ
労働条件通知書や雇用契約書を作成して、採用を出した外国人材と雇用契約を結びます。トラブル防止のポイントは、「ルールや業務を漏れなく、外国人材の母国語で記載すること」です。
候補者のなかには、契約書に書かれていないことはやらないという考えの方がいる可能性もあるでしょう。業務内容や職場でのルールなど、守ってほしいことは詳細に記載しましょう。外国人材の母国語で記載すると、理解してもらいやすくなります。
また、雇用契約後の在留資格取得の手続きで、在留資格を取れない事態に備え、「在留資格が取得できた場合、雇用契約を認める」旨を契約書に定めておくことも大切です。
(6)在留資格の申請・変更を行う
海外から人材を採用する場合は、在留資格の申請を行います。国内在留の外国人採用でも、転職や就職にあたって在留資格の変更手続きが必要なケースがあるため注意が必要です。
企業は、外国人材がスムーズに手続きできるようにフォローしましょう。企業が対応する手続きが生じた場合は、迅速に対処します。不備があると再申請の手間が生じ、入社時期が遅れるため、丁寧に確認しながら進めることが大切です。
(7)入社の準備に取り掛かる
外国人材がすでに日本在留であれば、必要な準備は多くありません。一方、海外から人材を呼び寄せる場合は次のような対応が求められます。
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日本に来たばかりの外国人材が生活に関する手続きをひとりで進めることは難しいため、企業が適切にサポートすることが望ましいです。
また、特定技能1号外国人に対しては、日本での生活に関するオリエンテーションの実施が義務化されています。特定の外国人材に限らず、日本での生活ルールやマナーを研修などで伝えれば生活トラブル回避につながり、企業への満足度も向上するでしょう。
なお、外国人材の雇用はハローワークに届出が必要です。雇用保険の被保険者となる外国人材の場合は雇用した日の翌月10日まで、被保険者でなければ翌月月末までの期限が定められています。
参考:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
4.外国人採用でよくある課題と解決策 |
外国人採用にあたって、下記のような課題が生じやすいです。
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企業が外国人採用を成功させるには、課題に適切に対処して乗り越えていくことが求められます。
課題の詳細と解決策を確認しましょう。
(1)コミュニケーションの難しさ
外国人材は、言語だけでなく価値観や文化などさまざまな面で日本人との違いがあるため、コミュニケーションに難しさを感じるかもしれません。例えば、宗教上食べられないものがある、お祈りの時間が必要という人材がいます。時間にルーズな国民性で、平気な顔で遅れてくる人材に対し、ネガティブな感情を抱くケースもあるでしょう。
外国人材と円滑かつ良好に仕事を進めるには、相互理解を深めることが重要です。お互いの文化や価値観の違いがわかれば、相手を尊重した言動につながり、ポジティブなコミュニケーションをとれます。
(2)外国人材のモチベーション維持
経済産業省の「高度外国人材研究会報告書」によると、日本で働く外国人材の職場への不満のトップ3は、1位「昇進・昇給が遅い」、2位「給料が上がらない」、3位「給料が安い」でした。外国人材は給料の低さや昇進スピードに不満を抱えていることがわかります。
職場への不満はモチベーションとエンゲージメントの低下につながるため、外国人材の待遇を見直すことが重要です。キャリアパスの不透明さに対する不満も多く、明確なキャリアの明示やサポートも求められます。
(3)雇用手続きが煩雑
外国人採用は雇用手続きが煩雑で、初めて外国人材を受け入れる企業は手間取る可能性が高いです。外国人材自身が行う手続きもあり、企業のサポートがないとスムーズに進まないケースもあるでしょう。
また、日本の法律遵守だけでなく、外国人材の出身国のルールやガイドラインに沿った対応も必要です。例えば、インドネシア人と雇用契約を結ぶ場合、雇用契約書を駐日インドネシア大使館に提出しなければなりません。
外国人採用に関して難しさや不安を感じる企業は、ハローワークや出入国在留管理庁に相談してサポートを受けると、トラブルや対応遅延を防げるでしょう。
参考:出入国在留管理庁「特定技能に関する各国別情報」
5.外国人採用におけるよくある質問 |
外国人採用におけるよくある質問をまとめています。
外国人採用に取り組む際にご確認ください。
(1)在留資格(ビザ)の手続きはどのように進めればいいですか?
就労などを理由に日本への入国を希望する外国人本人または代理人が、活動内容に応じた申請書・資料を管轄する地方出入国在留管理官署へ提出し、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
証明書が交付されたあと、在外日本公館にて証明書を提示して、ビザを申請します。
詳細は「独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)」のサイトをご覧ください。
(2)採用した外国人材の定着のために企業としてどのような取り組みが有効ですか?
外国人材の定着に有効的な取り組みは、コミュニケーションを工夫することです。例えば、日本人は「早めに来て」「適当に準備して」などの曖昧な表現でも察することができますが、外国人には難しいため、「〇時〇分に来て」「この資料を10人分コピーして各席に配っておいて」のように具体的に伝えることが求められます。
外国人材の母国の文化や価値観を尊重し、強要しない、わかりやすい日本語で話す、日本語の学習機会を設けるなども望ましいです。
厚生労働省は、外国人材の定着に向けた対応をまとめた「事業者向け受入れ・定着マニュアル」を用意しているため、活用することをオススメします。
6.まとめ |
外国人採用をすると、人手不足解消やグローバル化を進められる一方で、コミュニケーションコストの増加や煩雑な手続きによる手間の発生などの課題もあります。
また、外国人材によって雇用可否がわかれ、不法滞在者の雇用や範囲外の業務を任せた場合、外国人材・企業ともに罰せられる恐れがあるため、法律に関する知識の習得や情報収集が欠かせません。
外国人採用に成功した場合は、相互理解と尊重、コミュニケーションの工夫によって、働きやすい環境と活躍の機会を外国人材に提供しましょう。
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