カルチャーフィットを意識した採用活動を行うと、早期離職の防止や社内コミュニケーションの円滑化などをもたらす可能性があります。
一方で、カルチャーフィットを重視する採用を行う際には注意点もあるため、十分に把握しておくことが大切です。
この記事では、カルチャーフィットの意味やスキルフィットとの違い、採用に取り入れる方法をご紹介しています。カルチャーフィットを見極める面接質問例もまとめているため、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかる事 |
・カルチャーフィットの意味や注目が集まる背景 ・カルチャーフィットを重視した採用を行うメリット ・カルチャーフィットを採用に取り入れる5つの方法 ・カルチャーフィットを見極める面接質問例 |
1.カルチャーフィットとは |
カルチャーフィットの意味と、カルチャーフィットと同様に採用活動において重視される、スキルフィットとの違いを解説します。
(1)カルチャーフィットの意味
カルチャーフィットとは、自社の社風や価値観と、求職者の性格や価値観が適している状態を意味します。企業にはそれぞれ独自の文化や風土があるため、適する人材でないと居心地の悪さや働きづらさを感じて、早期離職に至る恐れがあります。
一方で、カルチャーフィットする人材であれば、自社で働くことに心地よさを感じて、長期的に勤めてくれる可能性が高いです。また、カルチャーフィットする人材は、企業の方針と合った業務ができたり、社員間や取引先との和を乱すことがなかったりするため、安定した経営につながるでしょう。
(2)スキルフィットとの違い
スキルフィットとは、求職者のスキルや経験が任せたい業務に適している状態を指します。スキルフィットを見極めるには、求人広告へ応募に必要な資格や経験を載せたり、実務で求められるレベルの試験を実施したりなどの方法が挙げられます。
スキルフィットは、明文化や試験の導入によって判断しやすく、採用活動においてミスマッチ防止のために重要なポイントですが、人材に自社で長く活躍してもらうにはカルチャーフィットも重視することが大切です。
2.採用でカルチャーフィットに注目が集まる背景 |
カルチャーフィットは、現在採用活動において注目を集めています。
カルチャーフィットに注目が集まる背景を解説します。
(1)売り手市場による人手不足
厚生労働省の発表によると、令和5年7月の有効求人倍率は1.29倍です。また、求人倍率等の推移を見ると、求人数が求職者数を上回る状態が平成26年度から続いていることがわかります。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)について」
売り手市場による人手不足は、優秀な人材を確保したい多くの企業を悩ませており、せっかく採用できても早期離職されてしまうと、再度人材を確保する労力がかかります。
人手不足である採用市況に翻弄されないように、人材のカルチャーフィットを重視し、定着率を高めようとする企業が増えているため、カルチャーフィットに注目が集まっています。
(2)働き方の多様化
新型コロナウィルス感染症の拡大によってリモートワークが普及するなど、働き方が多様化していることもカルチャーフィットが注目を集めている理由のひとつです。
リモートワークの普及によって、日々の業務や会議、書類の提出などがオンライン化され、社員同士が直接コミュニケーションを取る機会が減少しています。
業務をスムーズに行うには、テキストベースやカメラ越しでも問題なく意思疎通でき、お互いの認識を一致させることが重要なため、価値観の適合を表すカルチャーフィットが十分である状態が求められているでしょう。
3.カルチャーフィットを重視した採用を行うメリット |
カルチャーフィットを重視した採用を行うと、次の3つのメリットを得られます。
・早期離職の防止につながる |
それぞれのメリットを解説します。
(1)早期離職の防止につながる
カルチャーフィットを重視して採用を行うと、早期離職の防止につながります。
中小企業庁の資料によると、中小企業における就業者の3年以内の離職率は、中途採用者が約3割、新卒採用者が約4.5割です。
参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成」
採用後にすぐに離職されてしまうと採用コストや教育コストが無駄になりますが、カルチャーフィットを意識した採用活動を行えば、人材に自社での働きやすさを感じてもらえるため、早期離職を防げるでしょう。
(2)社内コミュニケーションが円滑になる
カルチャーフィットを重視し、自社の社風や文化に合う人材を採用できた場合、価値観や性格が似ている社員が集まるため、社内コミュニケーションが円滑になります。
前述と同様の中小企業庁の資料によると、就職後3年以内に辞めた理由として圧倒的に多かったのが「人間関係(上司・経営者)への不満」でした。
参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成」
カルチャーフィットしていれば、上司や経営者と波風を立てずに良好なコミュニケーションをとれるため、人間関係によるストレスが生じづらいと考えられます。
(3)生産性が向上する
カルチャーフィットしている人材を採用できると、生産性の向上も期待できます。人材がカルチャーフィットしていれば、上司や経営者のみならず同僚や取引先とも自社の価値観に則したコミュニケーションをとれるため、スムーズに意思疎通できたり、業務を行えたりして生産性が向上するでしょう。
また、人材が自社にカルチャーフィットしている場合、働きやすさや満足感を得られ、意欲的かつ能動的な業務につながることも、生産性を高める理由として挙げられます。
4.カルチャーフィットを重視した採用を行う際の注意点 |
採用において、カルチャーフィットを重視することは離職率の減少につながりますが、注意点もあるため把握しておきましょう。
カルチャーフィットを重視した採用を行う際の注意点を解説します。
(1)多様性の喪失に気を付ける
カルチャーフィットを重視した採用を行うと、同じような価値観や性格の人材が集まるため、多様性が失われ、考えが偏るなどしてイノベーションが起きづらくなる恐れがあります。
組織として柔軟な考え方ができない場合、変化の激しい現代を乗り越えていくことが難しく、成長が止まったり、衰退したりするかもしれません。
企業が成長し続けていくには、時代に適した新たな発想や多角的な考え方が重要なため、カルチャーフィットを意識しつつ、カルチャーフィットに固執しない、多様性に富んだ採用活動を行うことが大切といえます。
5.カルチャーフィットを採用に取り入れる5つの方法 |
カルチャーフィットを重視した採用を行うには、体制を整えたり、採用活動へ適切に取り入れたりすることが大切です。
漠然とした意識で採用活動を行うと失敗する恐れがあるため、次の5つの方法を実践することをオススメします。
・自社のカルチャーを明確化する |
具体的な方法やポイントをご紹介します。
(1)自社のカルチャーを明確化する
採用担当者は、自社のカルチャーを明確化して、適切に把握しておくことが大切です。求職者のカルチャーフィットを見極めるには、採用に携わる社員が自社のカルチャーを十分に理解していることが求められます。
自社のカルチャーを明確化する方法として、社員へのヒアリングと、マルチフォーカスモデルの活用が挙げられます。
社員へのヒアリングでは、面談やアンケートで「業務を行ううえで大切にしていること」「業務を進めるときに意識していること」「自社の好きなところ・理由」などを聞きましょう。多く挙げられた内容が、自社のカルチャーに根差しているといえます。
マルチフォーカスモデルの活用では、自社のカルチャーを「6つの独立した次元」「2つの半独立の次元」で分析します。マルチフォーカスモデルとは、オランダの社会心理学者であるヘールト・ホフステード博士によってモデル化された組織文化のことです。
マルチフォーカスモデルを活用すると、自社のカルチャーへの理解を深められるでしょう。
【マルチフォーカスモデル】
6つの独立した次元 |
次元1:組織の効果性 |
手段重視か、目標重視か | |
次元2:顧客志向のあり方 |
内部理論か、顧客優先か | ||
次元3:仕事の進め方 |
仕事の規律は厳格か、ゆるやかか | ||
次元4:組織の関心のあり方 | 職場の関心は上司か、専門性か | ||
次元5:組織外との関わり方 | 組織はオープンか、クローズドか | ||
次元6:マネジメントの哲学 | 従業員志向か、仕事志向か | ||
2つの半独立の次元 | 次元7・8:リーダーシップの受容度・人と組織の一体感 |
参考:ホフステード・インサイツ・ジャパン株式会社公式サイト「組織文化」
(2)カルチャーフィットするペルソナを設計する
自社のカルチャーを明確化したあとは、カルチャーフィットするペルソナを設計していきます。ペルソナとは、年齢や性別、価値観、ライフスタイルなどを詳細に設定した、自社が求める人物像のことです。
ペルソナを設計する際には、自社で活躍する社員にヒアリングし、考え方や価値観を分析しましょう。ヒアリングと分析を行うことで、自社に適した社員を把握できます。
一方で、採用担当者のみでペルソナ設計を進めるのではなく、現場社員の意見も聞くことがミスマッチ防止のために重要です。現場社員に「どのような人材を求めるか」「必要な能力は何か」などをヒアリングし、ペルソナのイメージをすり合わせていきましょう。
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(3)自社のカルチャーを社外に発信する
自社のカルチャーは、オウンドメディアや求人媒体、SNSなどで積極的に社外へ発信することが大切です。求職者は、転職活動において企業の待遇だけでなく、自分と合っているか、働きやすそうかも重視しています。
自社のカルチャーの発信は、求職者の判断材料のひとつとなるため、応募を後押ししたり、適さない人材からの応募を防いだりして、効率的な選考を実現できるでしょう。また、価値観の一致を感じた転職潜在層からの応募もあるかもしれません。
カルチャーを発信する際には、ただ自社の文化を羅列するのではなく、社員の声として掲載すると効果が期待できます。実際に自社のカルチャーで活き活きと働いている社員の姿や声は、求職者に「自分が働いたイメージ」を抱いてもらいやすくなります。
(4)カルチャーフィットをふまえた面接を行う
面接時には、カルチャーフィットを見極める質問をしましょう。採用選考のなかで、面接は求職者と直接話ができる機会のため、事前に質問を用意し、求職者の受け答えによってカルチャーフィットしているかを判断します。
採用担当者だけでなく、採用後の配属先の上司や同僚も面接や面談を行い、求職者の価値観を見出す質問をすると、多角的な面から評価できるでしょう。
カルチャーフィットを見極める面接質問例は、後述の「6.カルチャーフィットを見極める面接質問例」をご覧ください。
(5)社内見学や体験入社でカルチャーフィットを見極める
選考のなかに社内見学や体験入社を設けて、求職者に参加してもらうと、よりカルチャーフィットを見極めやすくなります。
求職者に社内見学や体験入社で自社の雰囲気を感じてもらったり、社員とコミュニケーションをとってもらったりすると、自社と求職者の双方が「合っているか」を判断できるため、ミスマッチ防止につながるでしょう。
ほかにも、自社と求職者がお互いの価値観に触れられる機会として、社員との面談や、社内イベントへ参加してもらうことなども挙げられます。
💡体験入社について詳しくまとめた記事はこちら |
6.カルチャーフィットを見極める面接質問例 |
カルチャーフィットを見極めるには、「自社のカルチャーに沿った質問」と「人柄や志向性に関する質問」をしましょう。
また、逆質問を求めることも、カルチャーフィットの見極めに効果的です。
面接時に用意しておきたいカルチャーフィットを見極める質問例をご紹介します。
(1)自社のカルチャーに沿った質問をする
自社のカルチャーに沿った質問をして、候補者の行動特性や価値観を見極めましょう。
自社のカルチャーに沿った質問例は下記のとおりです。
自社のカルチャーに沿った質問例・一人ひとりが責任感を持つカルチャー ・挑戦し続けることを重視するカルチャー |
候補者の行動特性や価値観を深掘りするには、「STAR面接」もオススメできます。STAR面接とは、「状況(Situation)」「課題(Task)」「行動(Action)」「成果(Result)」の順に質問をして、候補者の行動特性や考え方を引き出す手法のことです。
質問によっては、経験したポジションやスキルも見極められるため、スキルフィットの把握にもつながるでしょう。
STAR質問例状況(Situation):あなたはどのような役割やポジションでしたか? |
(2)人柄や志向性に関する質問をする
カルチャーフィットを見極める質問として、下記のような人柄や志向性に関する質問もしましょう。候補者の本音を引き出せるため、カルチャーフィットしているかの判断がしやすくなります。
人柄や志向性に関する質問例・仕事をする上で大切にしていることや心がけていることはありますか? |
💡人材を見抜く質問集とNG質問についてまとめた記事はこちら |
(3)逆質問を求める
面接の最後に「何か質問はありますか?」と逆質問をして、候補者の疑問を引き出しましょう。逆質問をすると、候補者がどのようなことに関心を持っているかを把握できます。例えば、候補者が「インセンティブを受けられる条件は何ですか?」と質問した場合、評価制度に関心があると推測できるでしょう。
また、質問が特になかった場合には、それまでの選考で十分に相互理解が深まっているからこそ質問が無い可能性もありますが、一方で自社への関心が低い、志望度がそこまで高くない可能性も考えられます。
逆質問は、候補者の価値観を把握するだけでなく、志望度をはかる一材料にもできるため、面接に取り入れることをオススメします。
6.まとめ |
カルチャーフィットを重視した採用を行うメリットとしては、早期離職の防止や、社内コミュニケーションが円滑になったり、生産性が上がったりします。ただし、社員の多様性が薄れてしまわないよう、注意することもポイントです。
採用に取り入れる方法としては、まずは自社のカルチャーを明確にしたり、カルチャーフィットする人材像(ペルソナ)を設計したり、広報活動や、面接・選考にも取り入れていくと良いでしょう。
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