男性の育休取得促進が2022年4月に義務化されましたが、具体的にどのように取り組めばいいかがわからず、取得率向上に結び付かない企業も多いかもしれません。
男性の育休取得を促進するには、制度設計や社内文化の醸成など、「取得しやすい環境」を作ることが重要です。
この記事では、男性の育休取得促進が企業にもたらすメリットと具体的な施策、課題・解決策をまとめています。
この記事でわかる事 |
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1|男性育休取得促進と義務化の法改正内容 |
育児・介護休業法が2022年(令和4年)に改正され、産後パパ育休制度の創設や、男性の育休取得を促進するような取り組みが企業に義務化されました。
義務化の背景や産後パパ育休制度の概要、企業に義務化された対応について解説します。
1-1.男性育休取得促進の義務化背景 |
男性の育休取得を促進することが企業に義務化された背景には、企業による対応の差があります。厚生労働省の「「令和6年度雇用均等基本調査」の結果概要」によると、男性の育児休業者の割合は全体で40.5%ですが、事業所の規模によって数値に差があることがわかります。
事業所規模 | 男性の育児休業者割合 |
500人以上 | 53.8% |
100~499人 | 55.3% |
30~99人 | 35.8% |
5~29人 | 25.1% |
また、女性の育児休業者の割合は全体で86.6%であり、全体数で見ても男性の育児休業取得率はまだ低いといえるでしょう。
そのため、性別や企業規模で生じている差をなくすように、男性の育休取得促進が義務化されました。
1-2.産後パパ育休制度の概要 |
産後パパ育休(出生時育児休業)制度とは、子の出生後8週間以内に、4週間(28日)まで取得可能な育児休業制度のことです。2022年(令和4年)10月1日から施行されており、申出期限は原則休業の2週間前までで、2回に分割して取得できます。
男性が配偶者の出産に合わせて育休を取得することで、配偶者への負担軽減につながり、心身の回復に努めてもらえます。
産後パパ育休の詳細は下記の記事をご覧ください。
💡産後パパ育休の要件や育休との違いについてまとめた記事はこちら |
1-3.企業が取るべき対応 |
2022年(令和4年)4月1日から、企業に雇用環境整備と個別周知・意向確認の措置が義務化されました。
具体的には、下表の対応が必要です。
育児休業を取得しやすい雇用環境の整備 |
以下のいずれかの措置を講じなければならない
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妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置 |
以下の事項の周知と休業取得意向の確認を個別で行わなければならない
【周知・意向確認方法】 |
なお、2025年(令和7年)4月の法改正によって、従業員300人以上の企業には男性の育児休業取得率等の公表も義務化されています。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
参考:厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」
💡育児・介護休業法の改正内容についてまとめた記事はこちら |
2|男性育休取得促進が企業にもたらす3つのメリット |
男性の育休取得を促進する企業には、次の3つのメリットがもたらされます。
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メリットの具体的な内容をご紹介します。
2-1.人材の定着率向上と採用競争力の強化 |
男性の育休取得を促進すると、従業員のワークライフバランスを実現できるため、人材の定着率が向上するメリットがあります。また、人材採用の面では「男性の育休取得に力を入れている企業」としてアピールポイントとなり、採用競争力も高められるでしょう。
少子高齢化の影響で人材獲得の難易度が上がっている現代において、人材の定着と採用につながる取り組みは効果的です。
2-2.従業員エンゲージメントと生産性の向上 |
男性の育休取得を促進する企業に対し、従業員は「子どもと過ごす時間を考えてくれている」などのポジティブな感情を抱き、エンゲージメントが向上する傾向があります。
また、育休を取得することで、子どもをあやしながら炊事をするなど、同時進行で物事に取り組む経験値が増えるため、マルチタスク処理や効率化のスキルアップが期待できます。職場復帰後にもスキルを活用できると、生産性が高まるでしょう。
2-3.企業のブランディング強化とイメージアップ |
近年は売上高などの財務情報のほか、ESGやサステナビリティの取り組みなどの非財務情報に投資家からの注目が集まっています。例えば、男性の育休取得率は、人的資本情報として大企業を対象に開示が義務付けられており、取得率が高いほどブランディングの強化やイメージアップにつながるでしょう。
男性の育休取得率や促進に関する取り組みを積極的に発信すれば、投資家や社会からの評価が高まり、企業の市場優位性を確立できる可能性があります。
💡人的資本の情報開示についてまとめた記事はこちら |
3|男性育休取得率向上のための具体的な施策 |
男性の育休取得を促進し、取得率を向上させるためには、下記3つの施策に取り組みましょう。
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施策の内容とポイントを解説します。
3-1.育休取得を促す「制度設計」 |
男性従業員へ育休取得を促す制度設計を行いましょう。例えば、次のような制度を設計すると、男性従業員は育休を取得しやすくなります。
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男性従業員のなかには、長期間休むことに対し、キャリアに不安を覚える方もいます。そのため、短期間の取得や育休中の就業も認めるようにすると、育休へのハードルが下がるでしょう。男性向けのセミナーの開催やガイドブックの作成は、家事・育児や仕事との両立に関する男性従業員の理解を深められ、安心感を抱いてもらえます。
どのような制度があれば育休を取得しやすくなるか、男性従業員にヒアリングやアンケートを行うとヒントを得られるため、効果的です。
3-2.現場の理解を深める「社内文化・風土」の醸成 |
人事だけでなく、経営層や管理職、既婚・未婚を問わない全社員が育休を寛容する社内文化・風土を醸成できると、男性従業員は育休を取得しやすくなるでしょう。
例えば、下記のような取り組みがオススメです。
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男性の育休取得について現場が理解を深めるには、経営層や管理職などの上の立場の方々が積極的に情報発信や育休取得をすることが望ましいです。上司が育休を肯定する姿勢を見せれば、男性従業員も気兼ねなく休みを取れるようになり、促進につながります。
男性の育休取得促進は、「福利厚生を充実させる」という視点ではなく、「自社の新たな文化の確立」として取り組むと、従業員の意識に働きかける施策を打ち出せるでしょう。
3-3.安心して取得できる「心理的安全性の確保」 |
男性従業員が育休を安心して取得できるように、心理的安全性の確保が必要です。「育休を取りたいと申し出ても非難されない」といった企業に対する信頼感があると、育休取得や延長などの要望を伝えやすくなります。
心理的安全性を確保するには、前述の制度設計と社内文化の醸成の両方が必要です。制度を整え、育休に対する全従業員の理解を深めること、「育休取得が当たり前」という社内文化を醸成することが、従業員に「休んでもキャリアや立場に影響はない」と認識され、取得率向上を図れるでしょう。
4|制度導入後のよくある課題と解決策 |
育休制度を導入すると、必ず発生するのが「業務の引き継ぎ」です。業務の引き継ぎがうまくいかないと、育休取得者と引き継ぎ者の双方に不安が残り、ストレスやトラブルなどのネガティブな事態になる恐れがあります。
また、育休取得者のなかには復帰に際して、久しぶりの業務や育児との両立に不安を抱えている方もいるため、十分な復帰後ケアが重要です。
育休にあたって発生する「業務の引き継ぎ」と「復帰後ケア」という課題への解決策をご紹介します。
4-1.業務の引き継ぎがうまくいかない時の対処法 |
業務の引き継ぎがうまくいかない時は、次の3点を意識すると改善できる可能性があります。
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(1)上司を交えながら早めに引き継ぎを開始する
業務の引き継ぎに際して早めに上司へ相談すると、育休取得者はサポートがある安心感が湧いて、引き継ぎのスケジュールや資料作成へ冷静に取り組めるでしょう。
また、早めの引き継ぎによって、引き継ぎ者の業務の理解度を深められるため、不安軽減とスムーズな業務につながります。上司という第三者の目も入ることで、業務の不明瞭な点、抜けなどをチェックでき、引き継ぎ内容の質も高められます。
(2)内容は詳細に、誰が見てもわかりやすくする
引き継ぎ資料の作成時には、業務の手順や相手の情報(氏名・連絡先等)、実行日時、実行方法などを詳細に記載しましょう。相手と連絡が取りやすい時間帯や業務の注意点など、業務遂行に役立つ情報や特記事項なども併せて記載すると、引き継ぎ者は安心して業務に取り組めます。
育休取得者は、業務の洗い出しの際に、不必要な業務の排除や統合を意識することも大切です。必要な業務のみに絞った場合、引き継ぎ者の負担軽減や、以後の業務効率化につながります。
(3)実際に業務へ取り組んでもらう
引き継ぎ者が、資料や口頭説明のみで業務を完璧に理解することは難しいため、実際に業務へ取り組んでもらうことが望ましいです。育休取得者は、引き継ぎ者が業務を行うのを一緒に確認し、疑問点や不安をクリアにしていきます。
実際に業務経験を積んでもらうことで、引き継ぎ者は業務のイメージが湧きます。また、育休取得者も、引き継いだ業務を問題なく遂行してもらえると確信できるため、安心して育休に入れるでしょう。
ただし、実務経験の機会が多いほど、双方にとって負担が大きくなる点に注意が必要です。負担や理解度を考慮して、2回を目安にして取り組むことをオススメします。
4-2.育休取得者に対する「復帰後ケア」の重要性 |
育休取得者は、職場復帰に際して「育児と両立できるか」「休業前のように働けるか」「職場の変化についていけるか」など、さまざまな不安を抱えていることが多いです。
適切なサポートを行わないと、モチベーションの低下や離職などを招く恐れがあるため、復帰後ケアとして下記3点に取り組みましょう。
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(1)復帰前後の面談で意向確認
男性従業員が復帰する1~2か月前に面談を実施して、復帰後の勤務時間・業務内容の希望や、周囲に配慮してほしいことなどの意向を確認します。
事前に復帰後の働き方やキャリアの意向を確認しておくことで、必要なサポートや配慮を講じられるでしょう。また、従業員の希望の働き方やキャリアは変化すると想定されるため、復帰後にも定期的に面談を実施し、就業状況についての懸念点やキャリアに対する考え方をヒアリングすることが大切です。
(2)職場全体でのサポート体制の構築
職場全体で、復帰した男性従業員のサポートを行います。業務内容や手順の変化がある場合は、業務の経験値や理解度を深められるようにフォロー担当者を設けましょう。必要に応じて研修や学習の機会を設けると、復帰者の自信や安心感につながります。
短時間勤務やテレワークなど、復帰者が希望する働き方を活用することも求められます。働き方が育休前と変わっても、復帰者のスキルレベルに合う仕事を任せることが、モチベーション維持と離職防止のために重要です。
(3)キャリアプランの提示
男性従業員は、育休取得によってキャリアに不安を覚える傾向があるため、復帰後には不安を払拭できるように、キャリアプランを提示しましょう。
キャリア開発のための業務分担や育成方針を示しつつ、実現に向けた研修などを実施すれば、復帰者は自社に満足し、定着すると考えられます。
なお、厚生労働省は「育休復帰支援プラン策定マニュアル」を公表しています。育休取得から復帰にかけて、重要なポイントや活用できるシートなどをまとめているため、参考にすると男性従業員の育休取得促進から復帰のサポートまで効果的に取り組めるでしょう。
5|まとめ |
男性の育休取得促進に取り組むことで、企業にはさまざまなメリットがあります。「義務だから」という理由で取り組むよりも、「従業員の定着率や生産性向上」などを意識するほうが、より効果的な制度設計につながるでしょう。
また、男性が育休を取得することは、仕事と育児のスムーズな両立と心身の負担軽減にもつながります。育休を取らない場合、慣れない育児と仕事との両立の難しさから、父親でも産後うつになるケースがあります。そのため、育休取得を促進して、男性が積極的に育児に関わる状況を作り出すことは、多角的な面で重要な取り組みです。
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