メンター制度とは、先輩社員(メンター)が後輩社員(メンティ)をサポートする活動のことで、女性活躍の推進に活用できます。
女性社員の活躍推進が進んでいないことで悩んでいる企業は、メンター制度を導入すると、女性社員のキャリアアップ意欲が上がったり、離職防止につながったりするかもしれません。
メンター制度導入のメリットや女性活躍を推進するための導入ステップ、失敗しないポイントについて解説します。
CONTENTS |
1|メンター制度とは |
メンター制度とは、先輩社員(メンター)が後輩社員(メンティ)に対し、定期的に面談(メンタリング)を行いキャリア形成上の課題や悩みの解決を援助して、自ら意思決定し、行動できるようにサポートする活動です。
メンター制度は、後輩社員を評価する直属の上司や先輩とは異なる職場の先輩社員がメンターとなるため、「斜めからの支援」といわれており、メンターとメンティが双方向の対話をできます。
現在、多くの企業が女性活躍の推進に取り組んでいますが、女性社員の育成を目的としてメンター制度を取り入れる場合、「将来的なキャリア目標」「問題解決のアプローチ」「能力向上のための学習」「社内外のネットワーク構築方法」などがテーマとして挙げられます。
参考:厚生労働省『女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』
2|女性活躍推進にメンター制度の導入が必要な理由 |
女性の活躍推進が政府により進められていますが、まだまだ多くの企業が積極的に取り組めているわけではありません。中には、企業の慣習などによって、男性社員のほうが責任のあるポジションや仕事を任される傾向にあったり、スキルアップの機会を得られなかったりするケースがあります。すると、女性社員は自分の能力に自信をなくし、挑戦する意欲を失う恐れがあります。
また、妊娠、出産というライフイベントを迎えた女性のなかには、育児と仕事の両立の難しさから退職を選択せざるを得ない方もいます。
女性社員をメンティとしたメンター制度を女性活躍推進に導入すると、女性社員のメンタル面やスキルアップをサポートできるため、不安感の解消や働きやすさの向上につながり、管理職を目指す方が増えるなど、女性社員が意欲的になる効果が期待できます。
3|メンター制度を導入するメリット |
メンター制度を導入すると、次の4つのメリットがあります。
・女性社員のキャリアアップ意欲が上がる |
メンター制度導入のメリットについてご紹介します。
3-1.女性社員のキャリアアップ意欲が上がる |
メンターがロールモデルとなるため、女性社員のキャリアアップ意欲が向上することが期待できます。
弊社「女の転職type」が行なったアンケート『管理職ってどう?管理職について聞いてみました。』で、女の転職type会員に「尊敬できる女性管理職の有無は、管理職になりたい気持ちに影響する?」と尋ねたところ、「とても影響がある」25.1%、「やや影響がある」31.4%と、「影響がある」割合が過半数を超える結果となりました。
メンター制度を導入すると、女性社員は活躍しているメンターを身近に感じられるため、管理職になりたい気持ちに大きな影響を受けるかもしれません。
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3-2.女性社員をサポートする体制が構築される |
メンター制度を導入すると、メンティはメンターである先輩社員だけでなく、ほかの先輩社員とのつながりも持てる可能性があるため、メンティである女性社員のサポート体制が構築されるでしょう。
女性社員は、頼れる先輩社員が増えることで安心できたり、ロールモデルとして目標となる多くの先輩社員の知識や考え方に触れられたりして、働きやすさや業務に対する意欲が向上すると考えられます。
また、メンター制度によって先輩社員からのサポートがあることで、職場環境への早期適応も期待されます。
3-3.離職防止につながる |
メンター制度によってメンティである女性社員の悩みや不安を定期的に解消できると、離職防止につながるかもしれません。
厚生労働省によると、自己都合による離職理由のなかには「人間関係がうまくいかなかったから」「満足のいく仕事内容でなかったから」といった悩みがあります。
人間関係や仕事の悩みは、メンターがメンティの悩みに気付いたり、相談を受けたりしてフォローしていれば離職を防げる可能性があるため、人手不足が叫ばれる近年において優秀な人材を失わずに済むでしょう。
参考:厚生労働省『令和2年転職者実態調査の概況』
3-4.社員自身の成長につながる |
メンター制度は、メンターとメンティの双方の成長につながるメリットがあります。メンティは、先輩社員であるメンターの支援によって知識やスキルを習得できたり、視野が広がったりするでしょう。
一方で、メンターも、後輩社員に寄り添うことで自分の仕事について振り返りの機会を得たり、メンティに伝わるようにコミュニケーションを工夫したりするため、業務の改善やスキル向上につながると考えられます。
4|メンター制度導入のステップ |
メンター制度を導入するには、目的の設定や計画の策定などを行う必要があります。具体的には、次の6つのステップを踏みます。
①課題整理と目的の設定 |
参考:厚生労働省『女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』
4-1.課題整理と目的の設定 |
まずは、自社が抱える課題を整理し、目的を設定しましょう。女性活躍の推進と一口に言っても、「管理職に女性が少ない」「男性社員と比較して女性社員の勤続年数が短い」など、企業によって課題はさまざまです。
課題ごとに、メンター制度を導入する目的やメンティとなる女性社員が異なるため、解決したい課題を明確にすることが重要といえます。
【企業の課題と目的の例】 |
4-2.計画の策定 |
課題の整理と目標の設定を終えたら、メンター制度導入の計画を策定します。計画の策定については、まずはメンター制度の推進チームを設けるかを決め、目標や対象者(メンティ)、運用ルール、推進体制などを考えましょう。
メンター制度の導入前に、社員に対して意識調査を行い、女性活躍推進に関する現状を把握します。事前に意識調査を行うことで、メンター制度導入後の効果測定や評価の参考になるでしょう。
また、目標は、離職率や育休後の復帰率などの定量的な目標と、社員の意識が変化したかなどの定性的な目標の両方を定めると、全社的に取り組めるためより効果的かもしれません。
4-3.制度構築 |
続いて、メンター制度を実施するための体制を構築していきます。具体的には、次のようなルールを定めましょう。
【メンター制度の運用ルール例】 |
メンターとメンティは信頼関係を構築することが重要なため、原則対面でメンタリングを行うようにしましょう。
また、メンターとメンティは、メンター制度導入の目的に合う人材を自薦や他薦で選定することが大切です。例えば、「両立支援の観点からのキャリアアドバイスができる社員」「女性が少ない職種や職域を経験し、その観点からアドバイスができる社員」などがメンターに適する人材として挙げられます。メンターの性別は、女性に限定されません。
メンター制度を推進する人事部などは、メンターやメンティへ研修を行なったり、メンター制度に関する資料を作成したりなど、メンター制度を円滑に進めるためのサポートを行います。メンタリングは社内制度であり、就業時間内に実施されるため、メンターやメンティの直属の上司に仕事の調整などのフォローをしてもらえるよう依頼することも大切な役割のひとつです。
4-4.経営層や組織への周知 |
メンター制度を効果的に進めるためには、経営層や組織に周知し、理解を得ることが大切です。経営層にメンター制度の趣旨や導入のメリットを理解してもらえず同意を得られなかった場合、そもそもメンター制度を行えなかったり、予算面の援助など組織としてのサポートがなかったりする恐れがあります。
また、経営層が積極的に取り組む姿勢を見せないと、メンター制度に対して批判的な気持ちを抱く社員が、業務時間中に行われるメンタリングを良しと思わず、業務の調整などの配慮に欠けることも考えられるでしょう。
そのため、経営層にメンター制度について十分に理解してもらい、経営層から組織全体に周知してもらうと、全社的に納得してもらえる可能性があります。
4-5.メンターへの研修 |
メンタリングの効果を高めるために、メンターへの研修は欠かさず行いましょう。メンターに対して、メンター制度を導入する理由や目的、メンタリングの進め方などについて理解してもらうことで、自分の役割ややるべきことの把握につながります。
また、コミュニケーションスキルを向上させる研修を実施したり、カウンセリングを学ばせたりすると、メンティとの良好なコミュニケーションや悩みへの適切な対応を実現できるでしょう。
メンターへの研修だけでなく、メンターとメンティに向けた合同研修や、メンターとメンティの上司向けの研修なども行うと、関係者にメンター制度についてより深く理解してもらえると考えられます。
研修の講師は、メンター制度をよく理解したメンタリング経験豊富な方が望ましいです。
4-6.導入後の定期的な振り返り |
メンター制度の導入後は、活動内容を定期的に振り返り、仕事への取り組み方や意識の変化を確認します。
メンターとメンティ双方に、次の項目についてヒアリングやアンケートを行いましょう。アンケートの内容などを分析すれば、成功や失敗の傾向がわかり、次に活かすことができます。
・総合的な満足度 |
また、メンターとメンティや経営幹部を集め、合同説明会を開催すると、メンター制度の新たな気付きを得られたり、目標の達成度合いを確認できたりします。経営幹部にも参加してもらうことで、メンター制度の効果を理解してもらえるでしょう。
メンターとメンティの仕事の調整など、メンタリングを進めやすいように配慮してくれた上司へも結果を報告し、今後のサポートも得られるようにすることが大切です。
5|メンター制度導入に失敗しないためのポイント |
メンター制度導入に失敗しないために、次の5つのポイントを意識しましょう。
①メンター制度の目的を明確にする |
メンター制度導入によって女性活躍を推進できるように、ぜひご参考にしてください。
5-1.メンター制度の目的を明確にする |
メンター制度の目的を明確にしないと、メンティに適切な対応をとれず、自社の課題解決につながらなくなる恐れがあるため、「なぜメンター制度を導入するのか?」を明確にすることが大切です。
例えば、「ライフイベントの発生によって女性社員が退職とならないように、ワークライフバランスを保てる働きやすい職場環境を整備したい」という目的の場合は、メンターがメンティの不安を解消するために相談にのる姿勢を見せるといいかもしれません。
「女性の管理職比率が低いから、女性社員に管理職を目指してもらいたい」という目的であれば、メンターはメンティが自信を持てるように前向きな言動を心がけると、メンティに自信が芽生える可能性があります。
メンターとメンティ間でメンター制度の目的の認識を一致させ、課題解決に向けた活動となるためにも、目的を明確に示しましょう。
5-2.メンターとメンティの相性を踏まえて人選する |
メンターとメンティの相性が悪いと、お互いに意欲的でなくなり、コミュニケーションの減少やメンタリングの未実施などを招いて、メンター制度が失敗に終わる恐れがあります。
そのため、メンターとメンティの相性を踏まえて人選することが重要です。企業によっては、メンターとメンティ双方の自己紹介シートを確認し、趣味や出身地なども見ながらマッチングをしている事例もあります。
5-3.相談窓口を設置する |
メンティがメンターとの相性の悪さを感じたときなどのために、相談窓口を設けておくと早期対応が可能でしょう。
前述のように、「人間関係」は離職理由のひとつとして挙げられるため、メンターとの人間関係がうまくいかないことでメンティが精神的に苦痛を感じ、離職する恐れもあります。
メンターとの相性だけでなく、メンティが困っていることなどを相談できるように、社内の別部署や社外の専門家を相談窓口に設置して、メンティの負担や悩みを解消することが大切です。
5-4.定期的に効果進捗をチェックする |
メンター制度の効果や進捗は、定期的にチェックすることが望ましいです。例えば、メンタリングをメンターとメンティに任せた場合、メンターが業務で忙しかったり、メンティの積極性がなかったりして、面談が行なわれないかもしれません。
進捗を定期的にチェックしていれば、メンタリングの停滞にもすぐに気付ける可能性があるため、メンターやメンティにメンター制度のメリットなどを伝え、理解を深めてもらうなどの対策がとれるでしょう。また、メンターとメンティの相性の悪さなどの問題にも早期に気付けると考えられます。
5-5.メンティだけでなく、メンターへのフォローも行う |
メンティへのフォローも大切ですが、メンターへのフォロー体制を整えておくことも重要です。メンターのなかには、メンティへの接し方や、思ったとおりにメンタリングや支援ができないことに悩んでいる方もいるかもしれません。
そのため、メンターの精神的な負担を軽減できるように、メンターの相談を受ける窓口も設置するなどの対応が求められます。
実際に、厚生労働省が行なったアンケート調査で「メンター制度を成功させるために必要なもの」として、「メンター、メンティに対する個別フォローアップ」が挙げられています。
参考:厚生労働省『女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』
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