さまざまな職種や業務があるエンジニアの評価制度の制定に、難しさを感じている人事担当者も多いと考えられます。
エンジニアの人事評価は難しいですが、評価基準やポイントを把握すれば、エンジニアを正当に評価できる評価制度を制定できるかもしれません。
この記事では、エンジニアの評価制度について企業が抱える課題、評価制度の作成方法、評価制度の注意ポイントをまとめているため、ぜひご参考にしてください。
目次 |
1│ エンジニアの評価制度とは |
エンジニアの評価制度を作成する際は、「能力評価」「業績評価」「情意評価」という3つの評価基準を設けます。
能力評価とは、プログラミングスキルや保有資格、扱えるプログラミング言語、プログラミングに関する知識の有無、業務の速さや正確さなどを評価することです。
業績評価とは、成果物の量や質、対応した案件数、目標の達成度、納期を守った割合などが該当します。
情意評価とは、業務姿勢を評価することです。例えば、他メンバーと協調できているか、仕事に誠実に取り組んでいるか、新たなスキル取得や業務に関する意欲があるかなど、技術以外のスキルや性質を見ます。
2│ エンジニアの評価制度で企業が抱える課題 |
エンジニアの評価制度は、さまざまな要因により、難しいといわれています。
エンジニアの評価制度で企業が抱える課題を解説します。
2-1 短期間で結果を出せない業務が多い |
エンジニアは、業務内容上短期間で結果を出せない業務が多いため、評価するのが難しいと考えられます。例えば、長期にわたる業務の場合、年に数回の評価面談の際には成果として現れていないため、プラスに評価していいものか悩むかもしれません。
成果がないからとマイナスに評価すると、長期的なプロジェクトに関わることは成果がすぐに出ず、損と考えてしまうエンジニアが出てしまう恐れもあります。
2-2 技術力をきちんと評価できる人材の不足 |
エンジニア社員の上司がエンジニア職の経験がない場合、社員の技術力をきちんと評価できない恐れがあります。エンジニア職は専門的な分野の技術職であるため、業界や業務知識が豊富でないと評価をすることが難しいと考えられています。
そのため、エンジニアをエンジニア職未経験の人事担当者が評価する場合などは、適切な評価をつけることに難しさを感じるケースがあるでしょう。
2-3 客先常駐型のエンジニアの評価が難しい |
客先常駐型のエンジニアの場合、社員の勤務態度や業務に対する意欲を自社の上司が見られないため、正当な評価が難しく、どのように評価すればよいか悩まれるかもしれません。
勤務態度などは、常駐先の企業に協力してもらえば評価できるかもしれませんが、常駐先の企業も他社の社員の給与や昇給に関わる評価を付けることに対して積極的ではないケースも考えられます。
3│ エンジニアの評価制度が重要な理由 |
とはいえ、評価制度はエンジニアのモチベーションやエンゲージメント(会社などへの信頼や貢献欲などの満足度)の向上のために重要です。仕事の成果や態度を評価されることで、さらに成果を出そうという意欲がエンジニアに湧く可能性が高いため、モチベーション向上につながります。
また、エンジニアを正当に評価できれば、エンジニアは自分の頑張りが正当に認められたと感じるため、自社に対するエンゲージメントが高まることも考えられます。
評価制度は、モチベーションとエンゲージメントの向上の観点から、エンジニアに限らず、従業員に対して必要な制度といえます。
4│ エンジニアの評価制度の作成方法 |
評価制度は、エンジニアのモチベーションを高めるために重要な制度です。
エンジニアの評価制度の作成方法を解説します。
4-1 評価目的の設定 |
まずは評価の目的を設定します。評価制度を設ける理由は、エンジニアのモチベーションを向上させて意欲的な仕事につなげたり、自社に満足してもらい離職率を下げたりすることのため、正当な評価、適切な報酬が目的になると考えられます。
一方で、正当な評価によって、それぞれのエンジニアの能力を正しく把握できるとも考えられるため、エンジニアの能力を最大限発揮できるような人事配置を目的とすることもできるでしょう。スキル不足のエンジニアを洗い出し、教育して組織を成長させるという目的もあるかもしれません。
評価目的を設定する際には、経営層や人事担当者側とエンジニア側で評価制度に求めることが違う場合もあるため、エンジニアへのヒアリングも効果的です。
4-2 評価基準の作成 |
評価基準は、「能力評価」「業績評価」「情意評価」の3つから作成します。
前述のように、能力評価には、プログラミングスキルや保有資格、扱えるプログラミング言語などが該当しますが、例えば、プログラミングに関する基礎能力と応用能力の2つに分けて評価基準を設けることもできるでしょう。
評価基準を作成する際は、評価目的達成に向けた基準にすることが大切です。
4-3 評価項目、ルールの決定 |
評価項目と評価をするルールを決定します。エンジニアと一口に言っても、システムエンジニア、インフラエンジニア、サーバーエンジニア、プロジェクトマネージャーなど、さまざまな職種があるため、それぞれの職種に合った評価項目を作成することが望ましいです。
例えば、システムエンジニアの場合、提案力、問題解決力、コミュニケーション能力、論理的思考力などが必要であると考えられるでしょう。
評価項目を設定したあとは、何段階評価にするかなど、評価のルールも決めます。
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5│ エンジニアの評価制度で見るべき5つの評価基準 |
エンジニアの評価制度では、ただ成果を見ればいいというわけではありません。
エンジニアを正当に評価できるように、ご紹介する5つの評価基準をご参考にしてください。
5-1 プロジェクトの結果と貢献度 |
エンジニアが携わっていたプロジェクトの結果と、エンジニア個人のプロジェクトにおける貢献度を評価します。エンジニアは、チームでプロジェクトに取り組むため、プロジェクトの結果が悪いからといって、エンジニア個人の評価を下げないように注意が必要です。
エンジニア個人がどのような貢献をしたのか、作業効率化や適切な管理ができていたかなどの取り組み方を把握し、プロジェクトの結果の評価だけでなく、エンジニア個人の評価もするように気を付けましょう。
5-2 個人目標の成果と自己評価 |
エンジニア個人に課せられた目標の成果は、評価ポイントです。個人目標を達成するには、自分の役割や業務内容を適切に理解していることが求められるため、エンジニアの評価基準として挙げられるでしょう。
また、エンジニアの自己評価もヒアリングしましょう。人事担当者など、評価する側が一方的に評価した場合、客観的には分からない工夫や技術を見落とし、正当な評価ができない恐れがあります。そのため、エンジニアの自己評価もヒアリングし、エンジニアの評価の参考にすることが大切です。
エンジニアの自己評価が正当でない場合は、会社が社員に対してどのような点を評価しているのか、どのような評価方法を取っているのかを伝え、正しく認識してもらうことも求められます。例えば、自己評価が高すぎるエンジニアの場合、評価の結果に対して不満を抱く恐れがあるため、自己評価の正しいやり方を覚えてもらうと、不要なトラブル防止につながるでしょう。
5-3 問題解決能力 |
エンジニアの問題解決能力の有無は、評価ポイントとして挙げられます。仕事にはトラブルがつきものですが、なかでもエンジニアの場合は、専門性が求められたり、問題を見つけることが難しかったりするため、高度な問題解決能力が求められます。
エンジニアが問題に対しどのように取り組んだのか、解決できたのかなどを評価しましょう。
5-4 スキルや知識の習得度 |
エンジニアのスキルや知識の習得度は、評価ポイントのひとつです。エンジニアのスキルや知識の習得度を評価することで、チームでの業務が多いエンジニアの個人の能力を評価できます。
また、スキルや知識の有無は、目標達成や達成に向けた工程にも関わるポイントのため、目標に関わる基準も評価しやすくなるでしょう。
5-5 仕事への取り組み姿勢 |
仕事に対する積極性など、エンジニアの仕事への取り組み姿勢を評価します。一方で、積極性はあってもミスが多かったり、非効率的なやり方だったりした場合、高く評価することはできないでしょう。
また、エンジニアはチームで業務を行うため、チームメンバーとの協調性も大切な評価ポイントです。チームで協力してプロジェクトを進めることが成功につながるため、エンジニアには協調性が求められます。
6│ エンジニアの評価制度で注意するポイント |
エンジニアの評価制度で注意するポイントを解説します。
前述した5つの評価基準とあわせて、ご参考にしてください。
6-1 現場の意見をヒアリングして作成する |
エンジニアの評価制度は、現場の意見をヒアリングして作成することをおすすめします。上述のように、専門職であるエンジニアの評価は、エンジニア未経験の人事担当者などが実施するのは難しいケースが多いです。
エンジニア同士であれば、お互いの技術や能力の高さが分かると考えられるため、対象エンジニアの上司や部下、後輩、同僚などから、360度評価を行うと、評価しやすくなるでしょう。
6-2 複数視点から評価する |
エンジニアは、複数視点から評価することが大切です。職種やポジションによって、設計、回収、開発、品質保証など、さまざまな業務に分かれるエンジニアの評価に、難しさを感じるかもしれません。
そのため、客観的な評価と自己評価、成果と業務工程という複数の視点から評価すると、評価基準を確立できる可能性があります。
6-3 スキルや技術の積極的な共有も評価する |
エンジニアが、自身のスキルや技術を積極的に共有している場合、評価することが望ましいです。例えば、自社のエンジニア全体の技術力向上を目的として評価制度を設けている場合、エンジニアが自身のスキルや技術を共有すれば、ほかのエンジニアの能力も向上し、組織力強化につながると考えられます。
エンジニアのスキル共有を評価項目にする場合は、「月に一度勉強会を実施する」などと定めると、客観的に評価できるでしょう。
6-4 定期的に評価制度を見直す |
エンジニアの評価制度やエンジニア社員一人ひとりの評価基準については、定期的に見直すことをオススメします。事業の成長フェーズや取引している案件内容などによって、エンジニアのどのような項目を評価すべきかが変わってくるためです。
また、エンジニア社員一人ひとりの成長度合いによって評価べき項目や基準が変わっていきます。定期的に評価基準を見直し、柔軟に修正していくことで評価制度の精度が上がっていくでしょう。
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7│ エンジニアの評価シートの記入例 |
エンジニアの評価制度における、評価シートの記入例をご紹介します。
評価はS・A・B・C・Dなどの段階を設け、例えばSは10点など、それぞれに配点すると評価を数値で出しやすくなります。
【能力評価】 【業績評価】 【情意評価】 |
8│ まとめ |
エンジニアを正当に評価できると、エンジニアの自社に対するエンゲージメントが上がり、さらに意欲的な活動が期待できます。
エンジニアの評価制度では、プロジェクトの結果やスキルの習得度のほか、仕事への取り組み姿勢などを見ることも大切なため、成果だけで判断しないように注意しましょう。
ご紹介したエンジニアの評価シートの記入例も、ぜひご参考にして、自社のエンジニアの評価にご活用ください。
いかがでしたか。少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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