リベンジ退職とは?予兆と企業のリスク・防止策を具体的に紹介

リベンジ退職とは? 企業のリスク・防止策を紹介-03-202512

「リベンジ退職」とは、企業に対して「仕返し」などのネガティブな意思を表して退職する行為です。円満退職とは真逆にあるリベンジ退職が起こると、企業にさまざまなマイナスな影響が及ぼされます。

人事担当者は、リベンジ退職を未然に防ぐために必要な施策について把握しておくことが重要です。この記事では、リベンジ退職の具体例や根本原因、防止策、退職予定者への対応フローについてまとめているため、ぜひご参考にしてください。

 

この記事でわかる事
  • ・リベンジ退職の具体例と企業のリスク
  • ・リベンジ退職の根本原因と予兆
  • ・リベンジ退職を未然に防ぐ具体的な施策
  • ・退職決定後に組織へのダメージを最小化するフロー

 

 

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   1.リベンジ退職とは?具体例と企業のリスク

リベンジ退職とは、企業に対して不満を抱いた従業員が「報復」「抗議」を表して退職することを指します。「リベンジ(revenge)」は英語で「復讐」「仕返し」「報復」などを意味する言葉です。

ただ退職するのではなく、企業に対して意図的に迷惑となる行為をするのが特徴で、リベンジ退職をされた企業にはさまざまなリスクが生じます。

リベンジ退職の典型的なパターンと企業のリスクを具体的に解説します。

 

 

 

(1)リベンジ退職の典型的なパターン3選 

リベンジ退職の典型的な3パターンとして、下記が挙げられます。

  • ・データ削除
  • ・繁忙期の退職
    ・SNS暴露

 

   データ削除

社内の機密情報や業務で使うデータ、ツールやシステムなどを退職に併せて削除するパターンです。実際に起きた事件では、従業員が共有サーバーに保存されていた電子ファイルを削除するプログラムを作成し、退職日に起動させて削除したケースがあります。

参考:裁判所「令和5年(ワ)第38号 損害賠償請求事件

 

   繁忙期の退職

繁忙期に退職することで、企業へダメージを与える方法です。また、退職にあたり引き継ぎを拒否するケースもあります。業務を一切引き継がない、重要な部分を伝えないなど、適切に引き継がずに退職します。

 

   SNS暴露

退職後や退職前に、企業の職場環境、人間関係、待遇、上司の言動などの不満・問題点をSNSで暴露するパターンです。復讐を目的としているため、事実のみならず虚偽の情報を投稿するケースもあります。

 

 

 

(2)人事が把握すべき「リベンジ退職」による3つの重大リスク

リベンジ退職が生じると、企業には次の3つの重大なリスクがあります。

  • ・業務停滞
  • ・信用失墜
    ・人材採用・育成コストの増加

いずれも企業にとってマイナスな影響を与えるため、人事担当者は内容を把握しておきましょう。

 

   業務停滞

リベンジ退職をされることで、企業は通常業務に支障が出るでしょう。必要なデータやツールを削除されると、再開発する手間や復旧する人件費も必要です。

繁忙期の退職は、人手不足になり円滑な業務が難しくなります。退職した人材が優秀なほど業務への影響は大きいでしょう。また、業務の引き継ぎがない場合、繁忙期だけでなく普段の業務にも混乱が生じて、既存従業員の負担が大きくなります。

 

   信用失墜

業務が停滞し顧客や取引先に迷惑がかかると、企業の信用が失墜する恐れがあります。もしリベンジ退職によって企業のネガティブな情報がSNSで広まった場合は、内容が事実か虚偽かに関わらず企業イメージや社会的信用に悪影響が出て、売上の低下や採用活動における応募数の減少などを招くでしょう。

既存従業員が業務量の増加やイメージ低下などによって働きづらさを感じた場合は、退職リスクもあります。退職時に不満が大きければ、第二、第三のリベンジ退職が生じるかもしれません。

 

   人材採用・育成コストの増加

リベンジ退職による欠員は、本来不要な「採用・育成コスト」を増大させます。一人の採用と育成にかけた多大な時間やコストが無駄になるだけでなく、再採用のための広告費や紹介手数料、面接工数が再び発生します。

さらに、意図的な引き継ぎ拒否が起これば、残された社員の教育負担や生産性低下といった「目に見えない損失」も膨らみます。

 

 

 

   2.なぜ今「リベンジ退職」が人事で注目されているのか

リベンジ退職が増えているのは、一昔前の「就職したら同じ企業に勤め続ける」という考え方が変化しているためです。転職へのハードルが下がっている現在、企業への帰属意識が薄れており、労働者の権利として不当な扱いに声をあげる従業員も増えています。SNSの普及に伴い、自社への不満や問題点を発信しやすくなったことも一因です。

前述のように、リベンジ退職は企業に多大な影響を与えます。売上や信用に関わるだけでなく、既存従業員の労働環境を悪化させ、リベンジ退職の連鎖を生むかもしれません。そのため、自社で発生させないようにリベンジ退職の原因や対策に注目が集まっています。

 

 

 

   3.リベンジ退職を招く根本原因と見逃してはいけない予兆

リベンジ退職には根本原因があります。あらかじめ、「リベンジ退職が起こる問題」を理解しておくと、対策も見えてくるでしょう。

併せて、リベンジ退職の予兆についてもご紹介します。

 

 

 

(1)報復感情を生み出す「4つの組織構造的な問題」

リベンジ退職3-03-202512

従業員に報復感情を生み出す組織構造的な4つの問題として、下記が挙げられます。

  • ・不公平な評価制度
  • ・ハラスメント
    ・上司との関係性
    ・意見の不通

従業員に「リベンジ」の意思を芽生えさせる問題を解説します。

 

   不公平な評価制度

働きが正当に評価されない、成果を出しているのにほかの従業員よりも評価が低いなど、不適正・不公平な評価制度の場合、従業員が不満に感じる可能性が高いです。評価は給与や昇進に影響するため、金銭面やキャリア面で納得がいかず、怒りも感じやすいでしょう。

自分を適切に扱ってくれない企業に対し、従業員はリベンジ退職で不満を爆発させる恐れがあります。

 

   ハラスメント

パワハラ、セクハラなどのハラスメントは、従業員の心身を疲弊させます。仕事に対するモチベーションを低下させ、ハラスメントを放置している企業や周りに対しても失望感を抱くでしょう。

特に、相談窓口が設置されていない場合、ハラスメントの被害者は自身で抱え込むしかなくなり、不安や不満を溜めやすいと考えられます。相談窓口があったとしても、適切に対処しないと企業への不信感につながります。

 

   上司との関係性

上司は仕事をするうえで接する機会の多い相手です。上司との関係性が良好でないと、従業員は日々ストレスや不満を溜めてしまう恐れがあります。例えば上司が一方的に指示するだけで提案などを聞いてくれない、いつも不機嫌でコミュニケーションを取りづらい、失敗の責任を押し付けてくるなどの場合、上司への信用をなくしてしまうでしょう。

職場での人間関係は、退職理由として上位にあがりやすい項目です。人間関係が好ましくない状況は、ただの退職だけでなくリベンジ退職を招くかもしれません。

 

   意見の不通

職場環境の改善要求をしても一向に聞いてもらえない、意見を伝えても無視されるなど、意見が通りづらい職場環境は従業員の働きやすさを低下させます。休暇取得などの希望が通りづらい環境も、企業への期待値が下がり、不満となりやすいです。

内定時と働く条件・環境が異なる、希望が通っていないなどの場合は、騙されたという思いが強くなるでしょう。企業の不誠実さやギャップに不満や怒りを抱き、リベンジ退職を引き起こす可能性があります。

 

 

 

(2)人事が察知すべき「予備軍」の具体的なサイン

リベンジ退職は「突然起こるもの」ではありません。リベンジ退職をする従業員は、事前に何らかのサインを示しているケースが多いです。

人事担当者がリベンジ退職予備軍の具体的なサインを見逃さないようにすると、リベンジ退職を防げる可能性があります。

次の3つのサインについて解説します。

  • ・コミュニケーションの変化
    ・勤務態度の変化
  • ・エンゲージメントスコアの低下

 

   コミュニケーションの変化

積極的に意見を言っていた従業員が相槌しか打たなくなった、社内行事や雑談への参加が減った、他人行儀な言葉を選ぶようになったなど、コミュニケーションに変化があった場合はリベンジ退職の予兆といえます。企業に対して諦念を抱いているため、物理的・心理的に距離をとっている可能性が高いです。

また、「頑張っても評価されないよね」など軽口のように不満を口にするようになることも、企業へのネガティブな感情や不満が聞かれてもいいという思いが表れています。

 

   勤務態度の変化

従業員の遅刻・早退、無断欠勤が増える、業務が疎かになるなど、勤務態度に変化があった場合、リベンジ退職を考えているかもしれません。突然の遅刻や早退などは、企業やほかの従業員にネガティブな影響を及ぼす行為です。リベンジ退職の予兆ととらえ、対策をすることが求められるでしょう。

 

   エンゲージメントスコアの低下

エンゲージメントスコアの考えを取り入れている企業の場合、スコアの低下は従業員の企業に対する愛着や仕事への情熱が希薄になっていることを表します。仕事へのやりがいが失われている、企業の制度に不満があるなどがエンゲージメントを低下させるため、従業員がリベンジ退職をするリスクがあります。

徐々に低下している場合は、不満が着々と募っているかもしれません。急に低下したケースでは、業務の見直しや組織体制の変化などが従業員の心情に作用したと考えられます。

 

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   4.リベンジ退職を未然に防ぐための具体的な施策

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リベンジ退職を未然に防ぐには、次の3つの施策に取り組みましょう。

  • ・不満を早期解消するエンゲージメント向上策
  • ・評価・フィードバック制度の見直し
  • ・オンボーディング段階での「不満の芽」摘み取り術

各施策を具体的に解説します。

 

 

 

(1)不満を早期解消するエンゲージメント向上策

リベンジ退職を防ぐには、従業員の不満の声を可視化し、早期に解消することが重要です。そのため、エンゲージメントサーベイを定期的に実施・分析し、スコアの低い従業員に不満や悩みを聞くなどの対策が求められます。

一方で、信頼関係がないと従業員は上司に対して不満などを正直に伝えられません。信頼関係を構築できるように、1on1では部下の話を傾聴する、出た意見を該当部署に伝えるなどの真摯な対応が大切です。

企業に対する不満や要望を相談・意見できる窓口の設置も、従業員の意見の収集や職場の改善につなげられ、エンゲージメントを向上できるでしょう。

 

 

 

(2)評価・フィードバック制度の見直し

不公平な評価は従業員の不満となりやすいため、評価・フィードバック制度を見直して公平性・透明性を高めましょう。具体的には、評価基準の明確化や適切な報酬設定、評価する立場の管理職のトレーニングを行い、納得感のある評価を実現します。

評価を伝える際には、従業員の意見や自己評価も聞きながら、客観的な事実に基づいてフィードバックをします。また、キャリアプランも一緒に考えサポートする姿勢も見せると、信頼関係の構築にもつながるでしょう。

 

 

 

(3)オンボーディング段階での「不満の芽」摘み取り術

中途採用者のオンボーディング段階で、不満の芽を摘み取っておきます。即戦力人材として中途採用を行なった場合でも、入社者にとっては初めて勤務する企業で、前職と業務の進め方などが異なります。そのため、早期に自社に慣れるよう声掛けや業務マニュアルを作成するなど、組織全体でフォローすることが大切です。

また、従業員と企業、それぞれお互いに対する期待値をすり合わせておきましょう。あらかじめ理想や期待がわかっていれば、ギャップによる不満を軽減できます。

 

💡オンボーディングの手順とポイントについてまとめた記事はこちら

オンボーディングとは?目的と重要性、企業に与える4つの効果と導入方法を解説!

 

 

 

   5.退職決定後に組織へのダメージを最小化するフロー

リベンジ退職2-03-202512

従業員の退職が決定したあと、リベンジ退職をさせず、組織へのダメージを最小に抑えることが求められます。

そのためには、次の2つのフローが大切です。

  • ・丁寧な退職面談の実施
  • ・チェックリストで情報漏洩リスク回避

企業が行うべき対応について解説します。

 

 

 

(1)丁寧な退職面談の実施

リベンジ退職の回避やダメージ低減のためには、退職面談を実施して真摯に対応し、丁寧に送り出すことが重要です。退職面談では、退職理由や自社の改善点などをヒアリングします。従業員の回答に意見や反論をするとネガティブな気持ちを増幅させる恐れがあるため、貴重な意見として聞き役に徹しましょう。

従業員の話で初めて気が付くこともあるかもしれません。自社の課題や問題点を把握できたら、迅速に改善へ取り組み、不満の解消やハラスメント・不利益扱いなどの労務リスク回避につなげることが大切です。

 

 

 

(2)チェックリストで情報漏洩リスク回避

退職決定時のチェックリストを作成し、機密情報やデータの漏洩リスクを防ぎましょう。例えば、就業規則などで情報漏洩に関する罰則をあらかじめ定義しておくとともに、退職の際に改めて誓約書を提出させます。情報の持ち出し等があれば損害賠償請求をする旨が書かれていれば、抑止力になるでしょう。

また、退職が決定した時点でアクセスできるデータを制限すると、閲覧や持ち出しできる情報を減らせます。最終出社日に退職予定者のパソコンや記憶媒体のデータをチェックして、怪しい動きの有無を調べることもセキュリティの観点で効果的です。

 

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   6.まとめ

  • リベンジ退職は、単なる「個人の感情の問題」ではなく、組織の歪みが最終的な形となって表れた「SOS」とも言えます。

    もし実際にリベンジ退職が起きてしまった場合、担当者の方は「自分の対応が間違っていたのではないか」と自責の念に駆られることもあるかもしれません。しかし、リベンジ退職の背景には、評価制度や組織風土といった構造的な課題が複雑に絡み合っています。
    大切なのは、起きてしまったことを悔やむだけでなく、それを「組織をより良くするための転換点」と捉えることです。

    早期の予兆(コミュニケーションの変化)を見逃さないこと
    評価の透明性を高め、納得感を醸成すること
    万が一の際のリスク管理を仕組み化しておくこと

    これらの対策を一つひとつ積み重ねることで、従業員が「この会社で働いてよかった」と心から思える、健全な組織へと近づけるはずです。従業員の不満を聞く体制の構築やそもそもネガティブな感情を抱かせない施策に取り組み、自社で働き続けたいと思ってもらえるような組織を作り上げましょう。

 

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