フレックスタイム制とは? 仕組みやメリット・デメリットを分かりやすく解説!

「従業員のワークライフバランスの向上を図りたい」「採用活動における、企業のアピールポイントがほしい」などと考えている企業は、フレックスタイム制度の導入を検討するといいかもしれません。

この記事では、フレックスタイム制度の内容やメリット、デメリット、失敗しないためのポイントをまとめています。

フレックスタイム制度の導入に成功している企業の事例もご紹介していますので、ぜひご参考にしてください。

目次

  1. フレックスタイム制度とは

    1-1 基本的な仕組み
    1-2 コアタイムについて
    1-3 フレキシブルタイムについて
    1-4 スーパーフレックスタイムについて
  2. フレックスタイム制度における残業と清算期間について

    2-1 フレックスタイム制度における清算期間
    2-2 フレックスタイム制度における時間外労働
    2-3 フレックスタイム制度における残業代
  3. フレックスタイム制度の導入に向いている職種と向いていない職種

    3-1 フレックスタイム制度の導入に向いている職種
    3-2 フレックスタイム制度の導入に向いていない職種
  4. フレックスタイム制度を導入するメリット

    4-1 従業員のワークライフバランスが向上する
    4-2 業務を効率的に行える
    4-3 採用時のアピールポイントになる
  5. フレックスタイム制度を導入するデメリット

    5-1 円滑なコミュニケーションを取りづらくなる
    5-2 勤怠管理が難しくなる
    5-3 従業員によっては生産性が低下する
    5-4 オフィスの光熱費が増加する
  6. フレックスタイム制度の導入に失敗しないための5つのポイント

    6-1 フレックスタイム制導入について社内周知をはかる
    6-2 社内コミュニケーションが滞らないような工夫をする
    6-3 勤怠管理システムを導入する
    6-4 デメリットの検証と対策をする
    6-5 コアタイムとフレキシブルタイムのバランスは適正にする
  7. フレックスタイム制度を導入し労働環境が改善した2つの事例

    7-1 昭和63年から制度を活用している製造業の企業
    7-2 タイムカードがないスーパーフレックスの企業

 

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   1フレックスタイム制度とは

フレックスタイム制度の基本的な仕組みや、コアタイムとフレキシブルタイムについてを解説します。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き -厚生労働省資料-

 

 

 

(1)基本的な仕組み

フレックスタイム制度とは、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、従業員が始業と終業時刻、労働時間を自分で決められる制度のことです。

一般的な勤務時間は、9時から18時(うち休憩1時間)など固定されており、時間の自由度が低いですが、フレックスタイム制度の場合は、従業員が出退勤の時間を自由に決められたり、仕事の途中で中抜けできたりします。

フレックスタイム制度を利用する従業員は、時間を自由度高く使えることから、ワークライフバランスを保った働き方ができるでしょう。

フレックスタイム制度のイメージ

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き -厚生労働省資料-

 

   フレックスタイム制度の導入要件

フレックスタイム制度を導入するには、就業規則等への規定と、労使協定の締結が求められます。

①就業規則等への規定
始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定める

②労使協定で制度の基本的枠組みを定める
【定める事項】
・対象となる労働者の範囲
・清算期間
・清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
・標準となる1日の労働時間
・コアタイム(※任意)
・フレキシブルタイム(※任意)

 

 

 

(2)コアタイムについて

コアタイムとは、従業員が必ず勤務しなければいけない時間帯のことです。例えば、10時から15時がコアタイムの場合、出退勤時間は自由ですが、10時から15時の間は勤務していなければいけません。

コアタイムの時間帯は、労使協定で自由に定めることが可能です。コアタイムを設定する日としない日を定めたり、日によってコアタイムの時間帯を変えたりすることもできます。

もしくは、コアタイムの設定は必須ではないため、コアタイムをなくして従業員の働く日の自由度を高めることもできます。

 

 

 

(3)フレキシブルタイムについて

フレキシブルタイムとは、従業員が自分の意思で労働時間を決められる時間帯のことです。フレキシブルタイムのなかであれば、仕事を中抜けすることもできます。

フレキシブルタイムの設定は必須ではありません。フレキシブルタイムを定める場合は、あらかじめ労使協定で時間帯を定めておく必要があります。

コアタイムとフレキシブルタイムの例

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き -厚生労働省資料-

 

 

 

(4)スーパーフレックスタイムについて

スーパーフレックスタイムとは、コアタイムを設けないフレックスタイム制度のことです。コアタイムがないため、出退勤時間や出社日が自由に決められるなど、従業員は自由な勤務形態をとれるでしょう。

スーパーフレックスタイムの場合でも、企業によっては深夜出勤に制限を設けるなど、ルールを定めている場合があります。

 

 

 

   2.フレックスタイム制度における残業と清算期間について

フレックスタイム制度においては、労働時間を1日ごとに見ず、清算期間という一定期間のなかでカウントします。

フレックスタイム制度の清算期間や、時間外労働と残業の考え方について解説します。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き -厚生労働省資料-

 

 

 

(1)フレックスタイム制度における清算期間

清算期間とは、労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、上限は3か月です。清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があります。

 

 

 

(2)フレックスタイム制度における時間外労働

フレックスタイム制度における時間外労働は、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超過した労働時間分をカウントします。従業員に時間外労働を行わせる場合には、36協定の締結が必要です。

法定労働時間の総枠の考え方は、次のとおりです。

【清算期間における法定労働時間の総枠】※1週間の法定労働時間が40時間の場合

1週間の法定労働時間(40時間) × 清算期間の暦日数 ÷ 7日

 

例えば、清算期間が1か月で、清算期間の暦日数が30日だった場合、1か月の法定労働時間の総枠は171.4時間となるため、清算期間における総労働時間は171.4時間以内にしなければいけません。

 

   清算期間が1か月超の場合の時間外労働の算出方法

清算期間が1か月を超える場合は、次のそれぞれの時間が時間外労働としてカウントされます。

①1か月ごとに週平均50時間を超えた労働時間

②①でカウントした時間を除き、清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働した時間

 

   清算期間が1か月超の場合の時間外労働の算出例

例)

清算期間が4月1日から6月30日までの3か月の場合で、実労働時間が下記のようになった場合の算出方法

  4月 5月 6月 合計
実労働時間数 220.0 190.0 150.0 560.0

 

1. まずは、法定労働時間の総枠を算出します。
【1週間の法定労働時間(40時間) × 清算期間の暦日数 ÷ 7日】

例)

清算期間(4月1日から6月30日)の暦日数は91日のため、法定労働時間の総枠は520時間になります。

【40時間 × 91日 ÷ 7日 = 520時間】

 

2. 次に、各⽉の週平均労働時間が50時間となる⽉間の労働時間数を算出します。
【50時間 × 各月の暦日数 ÷ 7日】

例)

4月【50時間 × 30日 ÷ 7日 = 214.2時間】

5月【50時間 × 31日 ÷ 7日 = 221.4時間】

6月【50時間 × 30日 ÷ 7日 = 214.2時間】

 

上記の計算により、今回のフレックスタイム制の枠組みは下記のようになります。

  4月 5月 6月 合計
週平均50時間となる労働時間数 214.2 221.4 214.2 -
法定労働時間の総枠 - - - 520.0

 

3. 算出した、週平均労働時間が50時間となる月間の労働時間数と、実労働時間数の超過分を、各月で求めます。

例)

  4月 5月 6月 合計
実労働時間数(a) 220.0 190.0 150.0 560.0(A)
週平均50時間となる労働時間数(b) 214.2 221.4 214.2 -
週平均50時間を超える労働時間数
(c = a - b)
5.8 0 0 5.8(C)

各月の実労働時間数の超過分を求めた結果、4月が5.8時間超過しているため、4月の時間外労働としてカウントし、4月の賃金支払い日に割増賃金として支払います。

 

4. 清算期間を通じた実労働時間から、超過分の合計時間と清算期間における法定労働時間の総枠を引きます。
【清算期間を通じた実労働時間(A) - 週平均50時間超過分の労働時間数(C) - 清算期間における法定労働時間の総枠(D) = 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた時間外労働(E)】

例)

  4月 5月 6月 合計
実労働時間数(a) 220.0 190.0 150.0 560.0(A)
週平均50時間となる労働時間数(b) 214.2 221.4 214.2 -
週平均50時間を超える労働時間数
(c = a - b)
5.8 0 0 5.8(C)
法定労働時間の総枠 - 520.0(D)
法定労働時間の総枠を超える時間数 - 34.2
(E = A - C - D)

計算式に当てはめると下記のようになります。時間外労働の34.2時間分は、清算期間の最終月である6月の賃金支払い日に割増賃金として支払います。

【560.0時間 - 5.8時間 - 520.0時間 = 34.2時間】

 

清算期間における各月の時間外労働をまとめると、下記のようになります。

  4月 5月 6月 合計
時間外労働 5.8 0 34.2 40.0

週平均50時間を超える労働時間数が6月にも発生している場合は、Eの時間にプラスして、6月の時間外労働としてカウントします。例えば、週平均50時間を超える労働時間数が6月に5.0時間発生した場合は、5.0時間 + 34.2時間 = 39.2時間が、6月の時間外労働になります。

 

 

 

(3)フレックスタイム制度における残業代

フレックスタイム制度においては、清算期間における総労働時間を実労働時間が超過した場合に、残業代の支払いが発生します。

一方で、清算期間における総労働時間よりも実労働時間のほうが下回った場合は、不足時間分を賃金から控除するか、翌月の総労働時間に合算します。

フレックスタイム制度における残業代の考え方

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き -厚生労働省資料-

 

清算期間における総労働時間の考え方は、「1日の労働時間 × 清算期間内の所定労働日数」です。例えば、1日8時間勤務、清算期間が1か月で清算期間内の所定労働日数が20日の場合、総労働時間は「8時間 × 20日=160時間」です。

 

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   3.フレックスタイム制度の導入に向いている職種と向いていない職種

フレックスタイム制度は、すべての職種に合致する働き方とはいえない点に注意が必要です。

フレックスタイム制度の導入に向いている職種と向いていない職種をご紹介します。

 

 

 

(1)フレックスタイム制度の導入に向いている職種

   向いている職種例

・エンジニア
・プログラマー
・事務職
・企画職
・デザイナー
・研究職

フレックスタイム制度の導入に向いている職種の特徴は、社外の方との接触が少なかったり、自分のペースで仕事を進めやすかったりする点です。

 

 

 

(2)フレックスタイム制度の導入に向いていない職種

   向いていない職種例

・営業職
・サービス業
・接客業
・工場作業

フレックスタイム制度の導入に向いていない職種は、お客様など、社外のさまざまな方とのコミュニケーションが生じる職種や、工場作業などの、勤務場所や時間が決まっている職種などが挙げられます。

 

 

 

   4.フレックスタイム制度を導入するメリット

フレックスタイム制度を導入すると、従業員と企業の双方にメリットがあります。

   メリット

・従業員のワークライフバランスが向上する
・業務を効率的に行える
・採用時のアピールポイントになる

フレックスタイム制度の導入によって生じる、それぞれのメリットについてご紹介します。

 

 

 

(1)従業員のワークライフバランスが向上する

フレックスタイム制度を導入すると、従業員のワークライフバランスが向上し、働きやすさを感じてもらえるでしょう。

フレックスタイム制度によって、従業員は働く時間帯を自分で決められるようになるため、例えば、子供の送迎や通院の時間に合わせて出退勤ができます。プライベートの予定が立てやすくなったり、通勤時の満員電車を避けた出社ができたりもするでしょう。

ワークライフバランスの向上は、従業員の心身の充実につながるため、仕事に対する集中力の増加やモチベーションアップ、離職率の低下が期待できます。

 

 

 

(2)業務を効率的に行える

フレックスタイム制度は、1日の労働時間で残業や欠勤が決まるわけではないため、清算期間内で効率的な業務を行えるでしょう。例えば、企業に閑散期と繁忙期がある場合、閑散期には早めに退社し、繁忙期には遅くまで業務を行うという勤務形態を実現できます。

メリハリのある働き方は、勤務時間が固定されていることによる「特にやることがないけど企業にいなければならない」というルーズな過ごし方をなくしたり、残業代を削減できたりする可能性があります。

 

 

 

(3)採用時のアピールポイントになる

現在は、採用に関して売り手市場であり、多くの企業が人材確保に難しさを感じています。フレックスタイム制度は、働き方の自由度が高いことから希望する求職者が多いと考えられるため、採用時のアピールポイントになるでしょう。

自社に対する応募者数が増えた場合、優秀な人材と出会える可能性も高まります。優秀な人材を確保できれば、自社のさらなる成長につながるかもしれません。

 

 

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   5.フレックスタイム制度を導入するデメリット

フレックスタイム制度を導入すると、次のようなデメリットも考えられるため注意が必要です。

   デメリット

・円滑なコミュニケーションを取りづらくなる
・勤怠管理が難しくなる
・従業員によっては生産性が低下する
・オフィスの光熱費が増加する

それぞれのデメリットについて、解説します。

 

 

 

(1)円滑なコミュニケーションを取りづらくなる

フレックスタイム制度を導入すると、従業員の出退勤の時間が定まらなくなるため、社内外問わず、電話の折り返しが発生しやすくなったり、会議や打ち合わせなどの時間調整が難しくなったりします。

従業員同士や取引先と円滑なコミュニケーションを取りづらくなることから、従業員がストレスを感じたり、取引先からの信頼が下がったりする恐れがあるでしょう。

また、コミュニケーションの鈍化は、業務の進捗が遅くなったり、認識相違によるミスが生じたりすることも考えられます。

 

 

 

(2)勤怠管理が難しくなる

勤怠管理は、従業員の給料の適切な計算や、体調の管理をするうえでとても重要です。しかしフレックスタイム制度が導入されると、従業員ごとに出退勤の時間や休憩時間が異なったり、中抜けなどが発生したりして、正確な勤怠管理に難しさを感じる恐れがあります。

また、労働時間帯が固定された働き方と、残業時間や時間外労働の考え方が異なるため、フレックスタイム制度についてよく理解し、ミスのないように対応することが求められます。

 

 

 

(3)従業員によっては生産性が低下する

フレックスタイム制度は、従業員が自分で労働時間や出退勤時間の管理をしながら仕事をするため、自己管理が苦手な従業員には向いていないかもしれません。働く時間の自由度の高さは、業務に対する集中力の低下や、大事な打ち合わせへの事前準備不足を招くなど、時間管理のルーズさにつながるでしょう。

ルーズな時間管理は、顧客に迷惑をかけたり生産性が低下したりする恐れがあるため、フレックスタイム制度が必ずしも全従業員に合い、よい影響を与えるとは限らない点に注意が必要です。

 

 

 

(4)オフィスの光熱費が増加する

フレックスタイム制度によって従業員の出退勤時間が異なると、オフィスの利用時間が長くなり、光熱費が増加する恐れがあります。

例えば、朝6時始業で15時退社の従業員と、11時始業で20時退社の従業員がいる場合、オフィスの利用時間は14時間です。全員が9時始業18時退社の場合と比較すると、5時間の差があります。

オフィスの利用時間が長くなる分、水道代や電気代がかかり経費がかさむ点が、デメリットとして挙げられるでしょう。

 

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   6.フレックスタイム制度の導入に失敗しないための5つのポイント

フレックスタイム制度は、メリットがある一方で従業員の生産性の低下や勤怠管理の複雑化などのデメリットもあるため、事前準備なく導入しないほうがいいでしょう。

まずは、ご紹介するフレックスタイム制度の導入に失敗しないための5つのポイントを把握し、事前準備を整えることをオススメします。

   失敗しないための5つのポイント

・フレックスタイム制導入について社内周知をはかる
・社内コミュニケーションが滞らないような工夫をする
・勤怠管理システムを導入する
・デメリットの検証と対策をする
・コアタイムとフレキシブルタイムのバランスは適正にする

 

 

 

(1)フレックスタイム制導入について社内周知をはかる

フレックスタイム制度の導入について、意義や目的、メリットなどの社内周知をはかりましょう。従業員がフレックスタイム制度の目的などを理解していない場合、いざ導入しても利用者がいなかったり、時間の自由さばかりが注目されてルーズな時間管理を招いたりするかもしれません。

フレックスタイム制度のメリットを活かして運用するために、従業員の理解を十分に高めることが大切といえます。

 

 

 

(2)社内外とのコミュニケーションが滞らないような工夫をする

社内外の方と円滑なコミュニケーションを取れるように、工夫を凝らすことが重要です。例えば、社内外のコミュニケーション方法としてビジネスチャットを導入すると、情報を文章にして相手に送れるため、電話がつながらなくて用件を伝えられない、会えないから話せないといった事態を回避できるでしょう。

また、取引先や顧客といった社外の方とのコミュニケーションの鈍化は、自社の信頼性や売り上げの低下につながりかねないため、相手のスケジュールを重視した対応が求められます。

 

 

 

(3)勤怠管理システムを導入する

フレックスタイム制度のデメリットである勤怠管理の難しさを払拭するために、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。勤怠管理システムとは、勤怠管理をデジタル化して、労働時間の自動集計を適正に行えたり、不正打刻を防止したりするシステムのことです。

勤怠管理システムは、フレックスタイム制やその他の就業形態を集約して管理できたり、長時間労働に関するアラートが出たりする機能が備わったものもあるため、自社に合ったシステムを探してみるといいでしょう。

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(4)デメリットの検証と対策をする

フレックスタイム制度の導入により生じるデメリットを検証し、対策を講じることが大切です。例えば、勤怠管理の複雑化に対しては勤怠管理システムの導入、社内外のコミュニケーション対策にはビジネスチャットツールの導入などが考えられます。

光熱費の増加に関しては、早朝や深夜に労働させないように、フレキシブルタイムの設定時間に注意しましょう。従業員の生産性の低下が懸念される場合には、フレックスタイム制度が適用除外になる従業員の条件を規定に設定し、フレックスタイム制度に向かない従業員を除外していくといいかもしれません。

 

 

 

(5)コアタイムとフレキシブルタイムのバランスは適正にする

コアタイムとフレキシブルタイムの設定は任意ですが、設定する場合は、バランスを適正にしましょう。例えば、コアタイムがあまりにも長い場合、出退勤できるフレキシブルタイムの範囲が狭まるため、フレックスタイム制度の意義がなくなってしまいます。

また、午前中はコアタイム、午後はフレキシブルタイムとすることも、従業員が始業時刻を自分で決められないため、フレックスタイム制度とは認められないでしょう。

コアタイムとフレキシブルタイムを設定する際には、フレックスタイム制度の仕組みに則っているかを確認することが重要といえます。

 

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   7.フレックスタイム制度を導入し労働環境が改善した2つの事例

フレックスタイム制度を導入し、労働環境が改善した2つの事例をご紹介します。

フレックスタイム制度の導入を検討している企業は、ぜひご参考にしてください。

 

 

 

(1)昭和63年から制度を活用している製造業の企業

   フレックスタイム制度導入の目的

企業は、CI(企業イメージ統合戦略)活動の一環として、従業員の意識改革と仕事の効率化を目指していました。

従業員が自身で出退勤時刻を決める自由な部分と、時間管理を自身で行う責任を負うことにより、仕事に対して積極的に取り組む意識を持ってもらいたいという思いがありました。

 

   フレックスタイム制度導入時の工夫

①試行期間の設定

企業は、フレックスタイム制度の導入にあたり、3か月の試行期間を設けました。試行期間中、フレックスタイム制度の運用が適切に行なわれているか、従業員同士のコミュニケーションに不足はないかなどを調査していました。フレックスタイム制度の対象者を拡大するごとに、試行期間と調査を行い、慎重な制度導入を心がけました。

 

②Q&A集の作成

フレックスタイム制度の運用によって生じる、会議の開催のしやすさなどの問題について、Q&A集を作成しました。

 

③従業員と上司の双方が労働時間を管理

労働時間の管理については、従業員が勤務時間を記入した勤労カードを毎日自分の上司に提出するため、従業員も上司も労働時間を把握できています。

企業は、従業員の労働時間が月の所定の労働時間に満たない場合でも、原則、賃金カットを行なっていませんが、従業員自身と上司が適切に時間を管理しているため、所定の労働時間未満になる社員はいないそうです。

 

④出退社時間の共有にホワイトボードを活用

企業は、フレックスタイム制度の導入によって、従業員同士のコミュニケーションが不足することを懸念していました。

出退勤時間が従業員ごとに異なるため、「出社時間が分からない」「退社したのか仕事で外出しているのか分からない」といった仕事のしづらさを払拭する方法として、ホワイトボードを活用しています。

ホワイトボードに出社する時間や退社したことを従業員が個々に示すことにより、コミュニケーション不足という課題を解消しています。

 

   フレックスタイム制度導入後の効果

企業が従業員に対して行なったフレックスタイム制度に関するアンケートによると、フレックスタイム制度を利用する理由として「通勤ラッシュの回避」「仕事の効率化」「自己開発」などがありました。また、「仕事の効率が上がった」「健康状態がよくなった」「夫婦の触れ合いが増えた」という声もあり、業務とプライベート、双方によい効果をもたらしているといえます。

一方で、フレックスタイム制度を利用しない理由では「いままでどおりで差し支えない」「業務に支障が出る」という声があり、特に、営業部では「業務に支障が出る」という声が約半数も占めていました。

企業は、フレックスタイム制度の導入に関して、「各企業の社風や考え方に応じた仕組みで導入を図るべき」と述べています。

参考:効率的な働き方に向けてフレックスタイム制の導入 事例編-1 - 厚生労働省

 

 

 

(2)タイムカードがないスーパーフレックスの企業

   フレックスタイム制度導入の目的

さまざまな事業を展開している企業は、事業の性格上、社員に広範な創造性が必要だと考え、創造性を十分に発揮できる環境づくりのひとつの方法として、フレックスタイム制度の導入を始めました。

 

   フレックスタイム制度導入時の工夫

①コアタイムを設定せず時間管理を従業員に任せる

企業は、コアタイムを設定せず、8時から21時までをフレキシブルタイムとしています。従業員は、出退勤時間や一日の労働時間を自由に決められるため、自身で業務進行や時間を管理します。

また、従業員の自己管理能力が問われるだけでなく、従業員の業務配分を考えたり、業務指示を出したりする管理者のマネジメント能力も問われています。

 

②タイムカードを使わずに運用

企業は、勤怠管理方法にタイムカードを用いず、企業が作成した勤務記録シートによる自己申告制をとっています。勤務記録シートには、日ごとに、勤務した時間帯と合計労働時間を記し、行なった業務は特に記載しません。

従業員のモラルを信用した運用をしています。

 

③ガイドラインの設定

企業は、フレックスタイム制度の導入にあたり、ガイドラインを設定して社員に示しました。

ガイドラインには、勤務記録シートの記入を徹底することや、社外の人への配慮を欠かしてはならないこと、時間の上手な使い方で自身のキャリアを高めることなどが記されています。

 

   フレックスタイム制度導入後の効果

フレックスタイム制度を導入した企業は、従業員の自己管理能力と計画性が向上していることを実感しています。また、従業員からは「子供の送り迎えができるようになった」「地域の行事に参加できるようになった」などの声も挙がっており、従業員のワークライフバランスの向上を実現しています。

 

参考:効率的な働き方に向けてフレックスタイム制の導入 事例編-1 - 厚生労働省

 

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