リスキリングは、DX時代に対応していくために不可欠な人材戦略であり、世界や日本政府も注力しています。
重要な取り組みであるリスキリングですが、メリットや導入方法がわからず、進められていない企業も多いでしょう。また、リカレント教育と混同している企業もいるかもしれません。
この記事では、リスキリングの意味やリカレント教育との違い、導入を成功させるポイントなどをまとめています。
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1|リスキリングとは? |
リスキリングとは、時代の変化に対応するために業務上で必要なスキルを学ぶことを意味します。
現在注目を集めているリスキリングの定義や、注目され始めた背景をご紹介します。
1-1.リスキリングの定義 |
リスキリングは、経済産業省によって「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。
企業が存続するには新たな価値提供が必要であり、AIなどのデジタル技術が発達している現代においてDXの推進も求められます。しかし、デジタル技術を扱える人材は不足しているため、DX時代への対応を目指した人材戦略がリスキリングです。
リスキリングの効果を高めるには、企業が社員に対して、業務に必要な新たなスキルを一方的に学習させるのではなく、社員の主体性も必要でしょう。
参考:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
1-2.注目され始めた背景 |
リスキリングが注目され始めた背景には、リスキリングが世界的に重視されていることやDXの推進が挙げられます。
2020年に行われた世界経済会議(ダボス会議)では、リスキリング革命が発表され、「2030年までに10億人をリスキリングする」としています。
日本では、2022年に岸田総理がリスキリングの支援として5年で1兆円を投じると表明し、経済産業省が「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」も行うほど、日本においてもリスキリングの重要性が広まりつつあります。
また、前述のように、現代はデジタル技術が発達し、DX推進が求められているため、多くのデジタル人材が必要です。デジタル人材の育成のために、リスキリングを実施する企業も増えてきています。
参考:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
2|リスキリングとリカレント教育・アンラーニングの違い |
リスキリングと意味を混同しやすい言葉に、リカレント教育とアンラーニングがあります。
リスキリングとリカレント教育・アンラーニングとの違いを解説します。
2-1.リカレント教育との違い |
リカレント教育とは、仕事場から一旦離れて教育を受け、また仕事場に戻るという仕組みのことです。リカレント教育の「リカレント(recurrent)」は、「繰り返す」「循環する」という意味があります。
リスキリングとリカレント教育の違いは、リスキリングが業務を行いながらスキルアップを図るのに対して、リカレント教育は一旦仕事を離れることです。
また、リスキリングは企業が人材戦略として社員にスキルアップを促すのに対し、リカレント教育は社員が自ら学びたいスキルの習得に努めます。
2-2.アンラーニングとの違い |
アンラーニング(Unlearning)とは、「学習棄却」「学びほぐし」という意味の言葉です。
自分が持っているスキルや価値観が現在の業務に合わなかったり、時代の変化に通用しなかったりする場合に、不要な価値観やスキルなどを捨てて新しい価値観などを学び、取り入れることを指します。
リスキリングとの違いは、リスキリングが「新たなスキルを得ること」を意味するのに対し、アンラーニングは「不要な価値観やスキルを捨てること」が意味合いとして大きいところです。
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3|リスキリングに関する意識調査 |
弊社(株式会社キャリアデザインセンター)は、リスキリングについて弊社の転職サイト「女の転職type」会員にアンケートを取りました。
アンケート結果から、リスキリングの認知度や、人材が今後取り組んでみたいと思うリスキリングなどをご紹介します。
※参考:「リスキリングしてる?リスキリングについて聞いてみました。」
※アンケート実施期間:2023年4月13日~4月23日
※有効回答数:女性617名
※調査方法:女の転職type会員によるWeb調査
3-1.リスキリングの認知度 |
女の転職type会員に「リスキリングって何か知ってる?」と尋ねたところ、「初めて聞いた」が58.8%と、約6割の方がリスキリングについて知らなかったため、リスキリングの認知度はあまり高くないことがわかりました。
3-2.リスキリングの必要性とその理由 |
リスキリングの意味を説明したうえで、「今、リスキリングの必要性は感じる?」と尋ねたところ、「かなり感じる」45.2%、「やや感じる」43.3%で、約9割の方が必要性を感じていることがわかりました。
リスキリングの必要性を感じる方に「リスキリングが必要だと感じる理由は?」と尋ねたところ、上位3つが「仕事の幅を広げるため」72.0%、「自分の市場価値を高めるため」61.1%、「自分がスキル不足だと感じるから」58.3%でした。
3-3.リスキリングに取り組んでいない理由 |
※複数回答有
リスキリングにすでに取り組んだ(取り組んでいる)人を除いて、「リスキリングが必要だと思うが、取り組んでいない理由は?」を尋ねたところ、「時間がない」が51.7%で1位、「お金がない」50.0%で2位、「何を学んでいいかわからない」44.3%で3位となりました。
1位の理由である「時間がない」は、企業が環境や制度を整えることで社員がリスキリングに取り組めるようになり、スキルアップにつながると考えられます。
3-4.今後取り組みたいリスキリング |
※複数回答有
※とくにない方を除く
「今後取り組んでみたいリスキリング」を尋ねると、1位が「語学」38.5%、2位が「Webデザイン」36.4%、3位が「PC基礎」35.3%でした。
そのほか、「プログラミング」29.5%、「Web制作」26.0%、「IT・DX・AI」13.3%などもあり、IT関連のリスキリングに関心があることがわかります。
一方で、全体の8.3%の方は、今後取り組んでみたいリスキリングが「とくにない」と回答しました。
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4|企業がリスキリングを導入するメリット |
企業がリスキリングを導入することで、次のようなメリットを得られる可能性があります。
・人材不足の対策ができる |
リスキリングのメリットについて解説します。
4-1.人材不足の対策ができる |
現在は少子化の影響で、人材を採用することが難しくなっています。特に、IT人材は競争率が高く、ひとりの人材を複数の企業が取り合う状況です。
リスキリングによって、自社に必要なスキルを持った人材を育成できれば、競争率の激しい採用市況で人材を確保する必要がなくなるでしょう。また、採用コストを抑えることにもつながります。
4-2.社員のスキルアップによる生産性向上 |
リスキリングの導入によって社員がスキルアップできると、スキルアップした社員に触発されたほかの社員も自発的に学ぶ姿勢になる可能性があります。
自発的な社員が増えた場合、業務への意欲が湧いたり、能動的に活動できたりするため、業務効率化を図れるなどして企業の生産性が向上するかもしれません。
4-3.事業の成長や新しいアイデアが生まれる |
リスキリングによって社員が成長すると、習得したスキルを活かして新たな事業を始められたり、いまある事業をさらに成長させられたりするメリットがあります。
また、リスキリングによってスキルや価値観が広がった社員は、画期的なアイデアや斬新な考え方ができるようになり、事業の発展につながる企画の発案や、自社が抱えている問題の解決ができる可能性があります。
4-4.従業員満足度が上がる |
企業がリスキリングを導入すると、社員に学び直しの機会を与えられるため、従業員満足度の向上が期待できます。
前述の「3-3.リスキリングに取り組んでいない理由」で、「リスキリングが必要だと思うが、取り組んでいない理由」として「時間がない」「何を学んでいいかわからない」という回答が上位にありました。
企業がリスキリングをする時間を社員に与えられれば、「時間がないから取り組めない」という葛藤をなくせるでしょう。また、「何を学んでいいかわからない」という社員に対しても、企業がプログラムを決めて提供できるため、必要なスキルを理解し、積極的に学んでもらえる可能性があります。
リスキリングの機会の提供によって従業員満足度が上がると、企業への信頼感が高まり、意欲的な業務につながるとも考えられるでしょう。
5|リスキリング導入する7つのステップ |
リスキリングの導入にあたっては、次の7つのステップが必要です。
①今後必要となる人材像やスキルを設計する |
どのようにリスキリング導入を進めていくのか、具体的に解説します。
5-1.今後必要となる人材像やスキルを設計する |
まずは、自社で今後必要となる人材像やスキルを設計します。企業の経営戦略や事業などによって、必要なスキルや人材は異なるため、自社の内情と市場を分析してから設計しましょう。
また、必要なスキルを設計できたら、該当スキルを持っている社員が自社でどの程度いるのかも確認します。必要なスキルを誰も持っていない場合は、リスキリングの優先度が高いといえます。
5-2.対象部署や従業員などを決める |
次に、リスキリングを実施する対象部署や社員を決めます。リスキリングは、必ずしも全従業員を対象にしなければいけないわけではありません。例えば、社員のIT技術を高めたい場合は、IT関連の部署の社員にリスキリングすることが考えられます。
また、意欲のない社員にリスキリングをしても、無理やりやらされていると感じられて身につかない恐れがあるため、学ぶ意欲がある社員を募ってリスキリング対象とするのもいいでしょう。
5-3.教育プログラムを決める |
対象部署や社員を決めたら、リスキリングを実施する期間、方法、内容などの教育プログラムを決めていきます。リスキリングの開始時期は、スキル習得が急がれるか、業務を圧迫しないかなどを考えて決めることが望ましいです。
学習方法は、社内研修、外部研修、eラーニング、勉強会などが挙げられます。予算や自社のリソースなどから学習方法を選定しましょう。例えば、習得が必要なスキルを教えられる人材が自社内にいなかったり、社内研修を実施するリソースがなかったりする場合は、外部サービスを利用するといいかもしれません。
自社の状況に合わせて学習内容を複数用意しておくと、社員は自分に適した方法を選択できるため、学習の機会を逃さずに済みます。
5-4.現場に広報する |
リスキリングの実施について、現場に広報します。
社員にリスキリングを前向きに捉えてもらうには、経営者層がリスキリングの必要性を十分に理解していることが大切です。社員が納得するように、経営者層がリスキリングの必要性を説明できれば、社員も意欲的になれるでしょう。
5-5.社員に取り組みを開始してもらう |
実際に、社員にリスキリングへ取り組んでもらいます。社員が「やらされている」と思いながら取り組むと、早期のスキル習得が難しくなるため、企業は学習を強制しないことが大切です。
また、社員が意欲的に学習できるように、社員間で声を掛け合いながら学習できる環境を作ったり、1on1などでキャリアについての面談をしたりすることもオススメします。
なお、学習時間は業務時間内に設けましょう。業務時間外に学習時間を設けると、社員は不満を抱き、リスキリングをマイナスに捉える恐れがあります。
学習の進行を工夫したり学習時間に気をつけたりして、社員の高い意欲を維持しながらリスキリングを行うことが重要です。
5-6.リスキリングで得たスキルや知識を業務に活かしてもらう |
リスキリングで得たスキルは業務で活かしてこそ意味があるため、社員が得たスキルや知識を業務に活用してもらいます。
リスキリングで得たスキルを業務に活かさないでいると、学習時間やコストが無駄になります。また、せっかく覚えた知識を社員が忘れてしまったり、「なんのために学習したのか」と不満を抱いたりする恐れもあるでしょう。
新たなスキルや知識を業務に活かせれば、社員は自身の成長を実感できたり、リスキリングの重要性を改めて理解できたりします。社員のモチベーションを維持し学習意欲を失わせないために、業務へのフィードバックを行うことも重要です。
5-7.振り返りを行い、改善につなげる |
リスキリングで得たスキルや知識を業務に活かしたら、振り返りを行なって改善につなげましょう。
リスキリングによって生産性がどの程度向上したか、業務効率化につながったか、費用対効果は高かったかなどを検証し、改善点を洗い出します。リスキリングに取り組んだ社員や現場の意見も面談やアンケートによってヒアリングすると、社員の本音を聞けるかもしれません。
洗い出された改善点や社員の声を今後のリスキリングに活かすことで、自社のリスキリングの効果を高めていけるでしょう。
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6|リスキリング導入を成功させるポイント |
リスキリングを導入し、社員のスキルアップを成功させるためには、5つのポイントを意識することが大切です。
・現場にリスキリング導入の目的や重要性を伝える |
ポイントを踏まえて実施し、リスキリングの効果を高めましょう。
6-1.現場にリスキリング導入の目的や重要性を伝える |
リスキリングを成功させるには、現場にリスキリング導入の目的や重要性を伝え、理解を得ることが重要です。現場社員にリスキリングの目的などを理解されないまま導入すると、反発が起こったり、リスキリングに意欲的に取り組んでもらえなかったりする恐れがあります。
社員のリスキリングへの理解を深めるために、経営者層からリスキリングの重要性を積極的に発信することや、社員のメリットの周知などが求められます。
6-2.社内の協力体制を整える |
リスキリングに対する社内の協力体制を整えましょう。リスキリングに反発する社員が多いと導入が難しくなるため、リスキリングの推進部署が実際に学び直しに取り組むなどして、リスキリングを前向きに捉えてくれる社員を増やすことが大切です。
リスキリングに対して肯定的な理解者が増えれば社員からの協力を得られ、全社的にリスキリングへ取り組みやすくなります。
6-3.社員の意思を尊重する |
リスキリングの効果を高めるには、社員の自発性や「成長しよう」という意思が大切です。リスキリングは、新たなスキルや知識をつける取り組みのため、意欲のない社員に取り組んでもらっても効果を得られない可能性があります。
一方で、成長意欲の高い社員が取り組めば早期のスキル習得を目指せたり、業務へ積極的に活用できたりして、社員と自社の双方の効果的な成長につながるでしょう。
そのため、社員の意思を尊重し、学習に前向きで意欲的な社員にリスキリングを実施することをオススメします。
6-4.モチベーション維持の仕組みを作る |
リスキリングに取り組み始めたころは意欲が高くても、日が経つにつれてモチベーションが下がり、学習に身が入らなくなる社員もいるかもしれません。
リスキリングの時間を有意義なものにするためにも、モチベーションを維持する仕組みを作ることが大切です。
例えば、リスキリングを複数人に行わせ、進捗や成果の共有や、悩みの相談ができる仕組みを作れば、励まし、助け合いながら学習を進められます。企業によっては、全社員を対象にリスキリングを実施した事例もあります。
リスキリングによって学んだことを活かせる場の提供も、社員がスキルアップしていることを実感できるため、モチベーションの維持につながるでしょう。
6-5.リスキリングに取り組みやすい環境を作る |
業務時間外や休日にリスキリングへ取り組むように社員へ指示した場合、プライベートな時間が削られた社員はモチベーションが下がったり、リスキリングに対して反発する気持ちが湧いたりするかもしれません。
社員がマイナスな気持ちを抱いたままリスキリングに取り組んでも効果が期待できないため、業務時間内に学習する時間を設けるなど、リスキリングに取り組みやすい環境を作ることが求められます。
また、リスキリングへの能動的な取り組みを促すために、インセンティブを設けることも考えられるでしょう。
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