エンジニア採用をおこなうにあたり、設定する給与や、求人広告への給与の記載の方法に悩まれている人事ご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
エンジニアの給与設定の参考になるのが、エンジニアの平均年収です。平均年収を踏まえて給与を設定した場合、世間や候補者の考えと著しく乖離した給与の提示になりづらいでしょう。
適切な給与設定でエンジニアからの応募が集まるように、エンジニアの平均年収や給与欄の記載方法のポイントについて今回の記事でおまとめいたしましたので、ぜひご参考にしてください。
目次 |
1│ 給与の設定方法 |
給与の設定方法には、給与テーブルを元にして決めるケースと、相場を元にして決めるケースがあります。
給与テーブルの意味と、それぞれの設定方法について解説します。
1-1 給与テーブルとは |
給与テーブル(賃金テーブル)とは、企業様が給与を設定するために用いる表のことで、新入社員から管理職レベルまでの等級別に、給与額が振り分けられています。
給与額の基準となる給与テーブルの内容は企業様によって異なりますが、例えば年功序列を重視する企業様の場合、社員の勤続年数が長いほど給与が上昇する傾向にあるでしょう。
1-2 自社の給与テーブルを元に決める
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自社の給与テーブルを元に決める場合、給与の明確な基準値があるため、給与額に関して転職者に納得してもらいやすかったり、給与額の差で既存社員との軋轢が生まれにくかったりするでしょう。
また、給与テーブルによって等級別の給与額を把握できることで、人件費の予算や予測を立てやすくなるメリットもあります。
一方で、給与テーブルは等級ごとに給与額が決められているため、成果が大きかったにも関わらず一定の給与しか得られないことに社員が不満を感じたり、モチベーションの低下を招いたりする恐れもあります。
1-3 相場を元に決める |
給与テーブルがない場合は、相場を元に決める方法もあります。相場を元に決める場合には、企業様が転職者に提示する給与額と相場の給与額に乖離がないか、入念にチェックされることをオススメします。
DXの推進など、さらなるデジタル技術の発達が企業様の競争優位性を保てるといわれている現代において、エンジニアは多くの企業様に求められてるため、採用が難しい状況にあります。エンジニアの採用難から、エンジニアの給与額が想定よりも高騰している可能性があるため、募集時には都度エンジニアの給与額の相場を把握することが重要です。
弊社が転職者1000人に行なった転職理由のアンケート結果を見ても、給与・賞与などの待遇への不満が年代別・男女別ともに、必ず上位3位以内にランクインしており、転職者の給与に対する関心も実際に高いことがわかります。
▼年代別、男女別の転職理由
また、経済産業省が発表している「IT関連産業の給与等に関する 実態調査結果(2017年)」によると、約6割の企業様が、優秀な中途採用人材の給与面を、同年齢の新卒入社社員の最高給与水準を超えて処遇することがあると回答しています。
参考:IT関連産業の給与等に関する 実態調査結果 -経済産業省資料P42-
さらに、経済産業省とみずほ情報総研株式会社が共同発表している「我が国におけるIT人材の動向(令和3年2月4日)」によると、近年、優秀なスキルを持つデジタル人材には通常よりも高い報酬水準を設定する例が見られるようになっていることがわかっています。
2│ エンジニアの平均年収 |
それでは、エンジニアの平均年収が実際どのくらいなのか、企業規模別、年齢×男女別、職種別、スキル別とあわせてご紹介します。
2-1 エンジニアの平均年収
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厚生労働省がまとめている、2023年の「賃金構造基本統計調査」によると、ソフトウェア作成者の平均年収は以下のとおりです。
平均年収 | 5,575,800円 |
きまって支給する現金給与額 | 385,400円 |
年間賞与その他特別給与額 | 951,000円 |
※平均年収算出方法:きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
※年齢:38.6歳(勤続年数10.7年)
※企業規模計(10人以上)
※男女計
参考:賃金構造基本統計調査(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
2-2 企業規模別エンジニアの平均年収
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2023年の「賃金構造基本統計調査」によると、企業規模別のソフトウェア作成者の平均年収は次のとおりです。
企業規模 | 平均年収 |
1000人以上 | 5,984,200円 |
100~999人 | 5,561,600円 |
10~99人 | 5,123,000円 |
※平均年収算出方法:きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
※男女計
企業規模別に見ると、約400万円ずつ年収に差があることが分かります。
続いて、企業規模別の「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」を見てみましょう。
【企業規模:1000人以上】
平均年収 | 5,984,200円 |
きまって支給する現金給与額 | 397,600円 |
年間賞与その他特別給与額 | 1,213,000円 |
※年齢:38.1歳(勤続年数11.9年)
【企業規模:100~999人】
平均年収 | 5,561,600円 |
きまって支給する現金給与額 | 380,200円 |
年間賞与その他特別給与額 | 999,200円 |
※年齢:37.5歳(勤続年数10.2年)
【企業規模:10~99人】
平均年収 | 5,123,000円 |
きまって支給する現金給与額 | 379,200円 |
年間賞与その他特別給与額 | 572,600円 |
※年齢:40.7歳(勤続年数10.3年)
企業規模が1000人以上になると、きまって支給する現金給与額と年間賞与その他特別給与額が高いことがわかります。きまって支給する現金給与額の企業規模別の差は特別大きいわけではありませんが、年間賞与その他特別給与額の差は大きいため、企業規模別で年収の差が生じているといえます。
参考:賃金構造基本統計調査(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
2-3 年齢×男女別エンジニアの平均年収
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「賃金構造基本統計調査(2023年)」を参考に、ソフトウェア作成者の年齢と男女別の平均年収をまとめてみました。
【男性エンジニアの年齢別平均年収】
年齢 | 平均年収(円) | きまって支給する現金給与額(円) | 年間賞与その他特別給与額(円) |
~19歳 | 2,542,600 | 207,000 | 58,600 |
20~24歳 | 3,383,600 | 256,900 | 300,800 |
25~29歳 | 4,739,900 | 330,600 | 772,700 |
30~34歳 | 5,371,400 | 374,900 | 872,600 |
35~39歳 | 6,190,100 | 424,400 | 1,097,300 |
40~44歳 | 6,554,200 | 456,800 | 1,072,600 |
45~49歳 | 6,858,300 | 462,300 | 1,310,700 |
50~54歳 | 6,983,800 | 468,000 | 1,367,800 |
55~59歳 | 7,540,700 | 495,200 | 1,598,300 |
60~64歳 | 5,432,900 | 385,700 | 804,500 |
65~69歳 | 4,773,100 | 352,400 | 544,300 |
70歳~ | 4,183,200 | 338,500 | 121,200 |
※平均年収算出方法:きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
男性のエンジニアの場合、55~59歳が一番年収が高くなることがわかります。また、一般的に定年退職を迎える可能性が高い60歳以降も、若手世代と同じくらいかそれ以上の年収があるといえるでしょう。
【女性エンジニアの年齢別平均年収】
年齢 | 平均年収(円) | きまって支給する現金給与額(円) | 年間賞与その他特別給与額(円) |
~19歳 | 2,597,300 | 208,500 | 95,300 |
20~24歳 | 3,479,100 | 262,700 | 326,700 |
25~29歳 | 4,101,600 | 287,700 | 649,200 |
30~34歳 | 4,538,200 | 312,700 | 785,800 |
35~39歳 | 4,992,800 | 353,400 | 752,000 |
40~44歳 | 5,781,500 | 392,400 | 1,072,700 |
45~49歳 | 5,994,300 | 398,300 | 1,214,700 |
50~54歳 | 5,776,100 | 398,700 | 991,700 |
55~59歳 | 5,758,600 | 385,500 | 1,132,600 |
60~64歳 | 4,784,000 | 349,200 | 593,600 |
65~69歳 | 2,449,200 | 204,100 | 0 |
70歳~ | 3,710,700 | 297,100 | 145,500 |
※平均年収算出方法:きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
女性エンジニアの場合、45~49歳が一番年収が高いです。65~69歳は、きまって支給する現金給与額がほかの年代より低かったり、年間賞与その他特別給与額がなくなったりしますが、70歳~になると年収が20~24歳を超えます。
参考:賃金構造基本統計調査( 職種(特掲)、性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
2-4 職種別エンジニアの平均年収
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2017年に経済産業省が発表している「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」を参考に、職種別のエンジニアの平均年収をランキングにしてみました。
職種 | 平均年収(円) | |
1位 | コンサルタント | 9,285,000 |
2位 | プロジェクトマネージャ | 8,915,000 |
3位 | ITに関する業務の営業・マーケティング | 7,833,000 |
4位 | 高度SE・ITエンジニア (基盤設計担当・ITアーキテクト) |
7,782,000 |
5位 | IT技術スペシャリスト | 7,582,000 |
6位 | IT教育 (IT関連講師・インストラクタ等) |
6,510,000 |
7位 | IT運用・管理 (顧客向け情報システム運用) |
6,086,000 |
8位 | SE・プログラマ (組込みソフトウェアの開発・実装) |
6,039,000 |
9位 | SE・プログラマ (顧客向けシステムの開発・実装) |
5,937,000 |
10位 | IT保守 (顧客向け情報システムの保守・サポート) |
5,922,000 |
11位 | SE・プログラマ (ソフトウェア製品の開発・実装) |
5,685,000 |
4位の「高度SE・ITエンジニア」と11位の「SE・プログラマ」を比較すると、約210万円も年収の差があるため、エンジニアの職種ごとの相場を知り、給与を設定することが大切でしょう。
また、同調査によると、インターネット関連企業の「エンジニア・プログラマ」の平均年収は592.2万円でした。
参考:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果 -経済産業省資料P6-
2-5 スキル別エンジニアの平均年収 |
「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果(2017年)」を参考に、エンジニアのスキル別の平均年収をまとめてみました。
スキルレベル | 平均年収(円) |
レベル1(仕事に慣れ始めた初級者レベル) | 4,378,000 |
レベル2(指導をもとに仕事ができる若手人材レベル) | 4,992,000 |
レベル3(独立して仕事ができる中堅人材レベル) | 5,760,000 |
レベル4(部下を指導できるチームリーダーレベル) | 7,261,000 |
レベル5(社内での指導者・幹部レベル) | 9,378,000 |
レベル6(国内で著名なレベル) レベル7(国際的に著名なレベル) |
11,299,000 |
参考:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果 -経済産業省資料P7-
エンジニアのスキルレベルによって、平均年収に大きな差が出ることがわかります。なかでも、レベル4以降は大幅に年収額が上がっているため、エンジニアのスキルレベルに応じて給与額を検討することが必要かもしれません。
エンジニア職は、スキルレベルに応じて年収額が大きく変化しますが、企業様が給与の支払いに関し年功序列重視か、能力重視かによっても、年収額に影響を与えます。
経済産業省の同調査によると、給与水準が最高水準で推移した場合、25歳から55歳までの平均年収は、能力・成果重視型で710万円、年功型で648万円です。一方で、最低水準で推移した場合、能力・成果重視型は平均年収が425万円と、最も低くなっています。
参考:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果 -経済産業省資料P10-
3│ 求人広告の給与欄の記載例 |
エンジニアを採用するためには、求人広告の給与欄の記載にも工夫が必要です。なぜなら、転職者は給与への関心が高く、仕事内容の次に重視して見ている項目といわれているからです。
求人広告に給与を記載する際には、賞与の詳細や平均年収、前職以上の給与保証など、中長期の目線で働くイメージを転職者に湧かせる情報を記載するとよいでしょう。
以上を踏まえて、エンジニア採用における給与欄の書き方のNG例とOK例を解説します。
3-1 給与欄の書き方NG例 |
例えば、次のような給与欄の書き方はNGです。
月給30万円~ ・別途交通費支給 |
給与の上限が書かれていないため、求人情報を見たエンジニアは「月給30万円しかもらえない」という印象を受ける恐れがあります。給与額に幅がある場合も、「月給〇万円~〇万円」と上限まで記載するといいでしょう。
また、現職で月給30万円以上の場合は、給与額が下がるイメージが湧き、応募を控えるかもしれません。エンジニアが応募しやすくなることを意識し、前職以上の給与を保証することを給与欄で伝えることをオススメします。
3-2 給与欄の書き方OK例 |
給与欄のNG例を踏まえて、給与欄の書き方のOK例を見てみましょう。
月給30万円~80万円+賞与年2回(5か月分/2021年実績)+残業手当+交通費 ※経験・能力を考慮のうえ、優遇します ★平均年収は520万7900円! |
給与欄のOK例では、月給の上限、賞与の詳細、手当が記載されています。年収に関わる各種手当などを記載しておくと、エンジニアは実際の年収を想定しやすくなるため、各種手当や手当を含んだ年収も記載するといいでしょう。
また、スキルごとの年収例により、同スキルをもつエンジニア自身が入社した場合や、キャリアを積み新たなスキルを得た場合に、年収の上がり幅などを理解しやすく、中長期の目線で働くイメージが湧きやすいでしょう。
給与欄の書き方を工夫することは、応募率を高めることにつながるため、給与についてエンジニアに訴求できるポイントを漏らさないことが大切です。
4│ まとめ |
エンジニア(ソフトウェア作成者)の平均年収は557万円です。システムエンジニアの平均年収は、企業規模が大きいほど高い傾向があります。
また、職種別で見ると、「高度SE・ITエンジニア(基盤設計担当・ITアーキテクト)」と「SE・プログラマ(ソフトウェア製品の開発・実装)」は、年収に約210万円もの差があることがわかりました。
給与を適切に設定できていないと優秀なエンジニアを確保することが難しいため、エンジニアの平均年収を把握しておくことが大切です。また、自社への応募率が高まるように、給与欄の書き方も工夫しましょう。
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