DX推進やITの発達により、採用市場におけるエンジニアの確保は難しい状況になっています。
一方で、現代は働き方改革が進み、フリーランスや副業のような採用市場に出回ることの少ない自由な働き方をする方が増加しているため、業務委託でエンジニアを確保したいと考えている企業様も多いのではないでしょうか。
しかし、業務委託契約をエンジニアと結んだことがない企業様は、進め方や注意点が分からず、不安を抱えていると思われます。
この記事では、業務委託契約をエンジニアと結ぶメリットやデメリット、業務委託契約を結ぶ方法や注意点を解説しているため、ぜひご参考にしてください。
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目次 |
1│ 業務委託でエンジニアを募集する企業が増えている理由 |
厚生労働省が2009年度に調査した内容によると、業務委託契約従業者を活用している業務で2番目に多い業務が「情報処理技術(ソフトウェア開発など)」でした。
参考:雇用類似の働き方を巡る現状等 -厚生労働省資料P22-
いまから13年前の調査でも多く活用されてきたエンジニアの業務委託ですが、近年においても3つの理由により、エンジニアの業務委託の募集が増加してきています。
エンジニアの業務委託の募集が増えている3つの理由について解説します。
1-1 優秀な人材の確保が難しいエンジニアの売り手市場 |
現在、エンジニア人材が不足しており、売り手市場となっています。経済産業省の試算によると、IT需要の伸びが高位だった場合、2030年には約79万人もの人材が不足するとされています。
インターネットやAIなどのデジタル技術の発達が目まぐるしい現代において、優秀なエンジニアを求める企業様は多いですが、採用市場に出ているエンジニアの数が少なければ、そもそも採用が難しいです。
そのため、企業様は業務委託という形態で優秀なエンジニアを確保しようとする傾向にあります。
参考:- IT 人材需給に関する調査 -経済産業省資料P20-
1-2 フリーランスや副業エンジニアの増加 |
フリーランスや副業エンジニアの増加は、企業様が業務委託でエンジニアに仕事を任せる一因となっています。
ITフリーランス支援機構の調査によると、IT人材の全人口は約157万人から約165万人、そのうち正社員は約140万人、ITフリーランスは約17万6千人から約25万6千人となっています。
ITフリーランスの主な職種にはWebデザイナーなども含まれますが、多くはエンジニア職です。
参考:ITフリーランスの就労実態・健康上の課題について -厚生労働省資料P16、17-
副業エンジニアに関しては、厚生労働省の資料によると、本業、副業ともに情報通信業に携わる割合が21.1%もあります。また、副業全体でみると、副業を希望する雇用者と実際に副業を行なっている雇用者は増加傾向にあるため、今後ますます副業エンジニアが増えることが予想されます。
フリーランスや副業エンジニアの増加により、採用市場にエンジニアが出てくる可能性が低くなってしまうため、自社での採用活動と並行して、業務委託契約を考える企業様が増えていると考えられるでしょう。
1-3 エンジニアが働く環境の変化 |
新型コロナウィルス感染症蔓延により、テレワークの働き方が多くの企業に導入されました。エンジニア社員を出社させなくても滞りなく仕事ができることが分かり、業務委託に対するハードルの低さを感じたことで、業務委託の雇用を検討する企業が増えたのではないでしょうか。
一方で、エンジニアも通勤時間がなくなり時間にゆとりができ、副業をしやすくなりました。フリーランスや副業者向けの所得補償保険や賠償責任保険があることも、業務委託契約で仕事をしたいと思うエンジニアが増えた理由と考えられます。
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2│ 業務委託契約の種類2つ |
業務委託契約には、請負契約と準委任契約の2つの種類があります。
請負契約と準委任契約は対価が発生する対象が違うため、契約する際には注意が必要です。
2-1 請負契約 |
請負契約とは、成果物に対して対価が発生する契約のことです。そのため、納期までに納品されなかったり、未完成だったりした場合は、成果物がないため対価の支払いは発生しません。
また、納品された成果物が依頼通りでなかったり、ミスがあったりした場合は、瑕疵(カシ)担保責任により受注者側に修正義務があるため、修正を依頼できます。
そのため、請負契約は、成果物に対し受注者側に大きな責任がある契約形態といえるでしょう。
請負契約は、建設業や運送業で多く結ばれる契約形態で、エンジニアと請負契約を結ぶことは少ない傾向です。
2-2 準委任契約 |
準委任契約とは、労働に対して対価が発生する契約のことです。そのため、納期において成果物が未完成であっても、労働したことに対して対価が支払われます。
成果物に対しての責任はありませんが、受注者側に期待される成果を出す善管注意義務(善良な管理者の注意義務)の責任はあります。
準委任契約のほかに委任契約がありますが、委任契約は弁護士への依頼など法律に関する業務で結ぶ契約のため、エンジニアの場合は準委任契約になります。
準委任契約は、エンジニアへの業務委託で多く結ばれる契約方法です。労働に対する対価を支払うことから、報酬は時給単価で計算するため、自社にいるエンジニア社員と業務内容や報酬について話し合うことで、適切な報酬額を提示できるでしょう。
3│ 企業が業務委託契約をエンジニアと結ぶメリット |
企業様がエンジニアと業務委託契約を結ぶメリットを解説します。
3-1 質の高い業務が期待できる |
フリーランスのエンジニアや副業エンジニアは、高い技術や知識をもっている可能性が高いため、質の高い業務が期待できます。企業様が実現したい業務を遂行できるスキルをもったエンジニアを見つけ、業務委託契約を結んだ場合、自社で人材教育や採用活動をするよりも早期に実務に取り組んでいただくことが可能になるでしょう。
また、フリーランスのエンジニアや副業エンジニアのスキルはさまざまなため、時期に応じて企業様が必要と思うスキルをもったエンジニアと業務委託契約を結ぶなど、臨機応変に人材活用が可能です。
3-2 人材教育コストやリスクを軽減できる |
社員を優秀なエンジニアに育てあげるためには、人材教育コストが欠かせないでしょう。一方で、人材教育コストをかけて社員を育てた場合でも、企業様の期待通りに成長しなかったり、離職されたりする恐れがあります。
業務委託契約をエンジニアと結ぶ場合には、エンジニアのスキルが高く、教育の必要なく業務を遂行してもらえる可能性が高いため、人材教育コストやリスクを軽減できるでしょう。
3-3 社内人材を適材適所に配置できる |
業務委託契約を結びエンジニアに業務を委託することで、社内の人材をより適した部署に配置できる可能性があります。例えば、エンジニア職員を増やそうと、ほかの部署からエンジニアの部署に人材を異動させたとします。異動させられた人材がエンジニアの仕事に慣れなかったり、難しさを感じたりした場合、モチベーションが低下し、離職にいたる恐れがあるでしょう。
また、人材が異動したことで人材がいた部署の業務が回らず、生産性が下がる可能性もあります。そのため、業務委託契約により外部のエンジニアに業務を委託することは、社内人材を適材適所に配置し、業務効率を上げることにつながるといえるでしょう。
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4│ 企業が業務委託契約をエンジニアと結ぶデメリット |
企業が業務委託契約をエンジニアと結ぶメリットがある一方で、デメリットもあるため注意が必要です。
4-1 コストが高くなる可能性がある |
フリーランスのエンジニアや副業エンジニアのなかには、専門性の高いスキルをもっている方もいるため、企業様が業務委託契約を結ぶ場合には、教育や採用コストと比較して高くなる可能性がある点に注意が必要です。
業務委託契約を結んだ際に依頼した業務以外にも、追加で対応してもらいたい業務が発生した場合には、追加費用が生じることも考えられます。
そのため、自社で人材の教育や採用した場合のコストと業務委託契約の場合のコストを比較したり、業務委託でエンジニアと契約するコストの相場を調査したりすることが大切です。
4-2 人材の管理が難しい |
業務委託契約は、企業様と受託者の間に雇用関係がなく、受託者は企業様からの指揮命令を受けないという特徴があります。そのため、受託者は自己の判断によって業務を遂行しますが、企業様と受託者の間でコミュニケーションがとれていない場合、業務の進捗が滞ったり、認識相違により企業様が求める成果物と異なったりする恐れがあります。
また、外部の人材である受託者に企業情報やシステム情報を提示することにより、情報漏洩リスクも発生します。業務委託契約は人材管理が難しいことを意識し、コミュニケーションを密にとってお互いの認識を合わせたり、パソコンのセキュリティ対策の有無を確認したりしましょう。
4-3 社内の技術ノウハウ構築や人材教育が難しい |
業務委託契約は外部のエンジニアと結ぶため、社内のエンジニア技術のノウハウ構築や人材教育ができない可能性が高いです。外部の優秀なエンジニアに業務を遂行してもらえることは大きなメリットですが、依頼する業務内容に「自社社員への教育」などが入っていない場合、自社の人材教育に結び付けることは難しいでしょう。
社内のノウハウ構築などを目指す場合は、定期的なミーティングや業務報告書の提出を求めることが手段のひとつのため、業務委託契約を結ぶ際には、企業様の求める内容に応じて委託する業務内容を設定しましょう。
5│ 業務委託契約をエンジニアと結ぶ方法 |
業務委託契約をエンジニアと結ぶ際には、認識相違などが生じないために事前に対応しておくことがあります。エンジニアに業務委託する方法をご紹介します。
5-1 スキルマッチを確認する |
業務委託契約をするエンジニアとのスキルマッチを確認します。自社が求める業務とエンジニアのスキルにミスマッチがある場合、企業様の求める成果物にならず、時間ばかり経過してしまったということになりかねません。
エンジニアとのスキルマッチをはかるため、エンジニアの経歴、扱える言語や経験年数、実績などを確認しましょう。成果物が載っているポートフォリオの提出も、マッチ率をはかりやすくなります。
また、エンジニアに求めるスキルを企業様が明確に提示することも大切です。採用担当者だけではスキルの提示が難しい可能性が高いため、自社内のエンジニアに必要なスキルをヒアリングするなど、マッチング率を高めるために社内で協力しましょう。
5-2 契約内容の認識をすり合わせる |
トラブルを生じさせないためにも、エンジニアと企業様の業務委託契約の内容に関する認識をすり合わせておくことは重要です。契約内容として、契約期間や納期、業務内容や報酬額、報酬の支払い時期と支払い方法、著作権などの扱いや秘密保持などが挙げられます。
内閣府のフリーランスに関する資料によると、企業様とフリーランスが契約内容の認識をすり合わせていなかったことでトラブルになったと思われる上位のケースは次のとおりです。
■認識すり合わせ不足によると思われるトラブルケース ・発注時に報酬や業務内容が明示されなかった |
業務委託契約を結ぶエンジニアとの認識が相違していないか、些細なことでも適宜確認しお互いの認識をマッチさせておくことは、良好な関係を築いていくために大切です。
また、業務委託契約で関わるエンジニアがリモートワークの場合、社員のように常に顔をあわせたり、いつでも話せたりするわけではありません。契約時だけでなく、業務遂行中も認識相違防止の観点や良好な人間関係の構築のために、共有事項の伝達や諸連絡など、積極的にコミュニケーションをとっていきましょう。
業務委託契約に関する担当者だけでなく、関連するほかの社員の認識も相違がないようにしておくことで、ほかの社員が知らずに業務外の対応をエンジニアに求めることを防止できる可能性が高まります。
5-3 業務委託契約書を作成し準委任契約を結ぶ |
契約内容がまとまったあとは、業務委託契約書を作成して、エンジニアと準委任契約を結びます。業務委託契約書に記載すべき内容は、「業務委託契約書作成時の注意点」で詳しく解説しています。
業務委託契約書の作成を億劫に感じ、作成しなかった場合、業務委託契約を結ぶエンジニアとトラブルとなる可能性が高いため注意が必要です。
内閣府の資料によると、取引先とのトラブルを経験したことのあるフリーランスは約4割です。トラブル経験者のうち、29.8%が契約内容が書かれた書面やメールを受け取っておらず、33.3%が受け取っていても十分に明記されていなかったと回答しています。
業務委託契約書は、不要なトラブルを防止し、企業様を守ることにもつながるため、忘れずに作成しましょう。
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6│ 業務委託契約書作成時の注意点 |
業務委託契約書の作成は、フリーランスのエンジニアや副業エンジニアとのトラブル回避のために重要です。
しかし、業務委託契約書を作成しても中身が曖昧であったり、必要事項が記載されていなかったりした場合、トラブルが起きかねないため、業務委託契約書の作成方法と注意点を把握しておきましょう
6-1 業務委託契約書に記載すべき13の項目 |
業務委託契約書には、記載すべき13の項目があります。
フリーランスのエンジニアや副業エンジニアに委託する業務内容や報酬などによって、業務委託契約書に記載する文言が変わってくるため、一般的に記載される13項目に則って適宜調整するといいでしょう。
項目 | 概要 |
①契約の目的 | 業務委託契約の目的 |
②業務内容 |
委託する業務内容(出社の有無や稼働時間なども) |
③業務への取り組みについて | 委託先に守ってほしいルール(例:報告の頻度、経費発生時の手順など) |
④再委託について | 委託先の再委託の可否について |
⑤契約期間 | 具体的な契約期間と契約更新について |
⑥報酬について | 報酬額や支払い方法、支払い時期について |
⑦知的財産の帰属 | 委託業務中に発生した知的財産権がどちらに帰属するか |
⑧禁止事項 |
委託業務に関し、禁止事項があれば記載 |
⑨秘密保持 | 業務上知り得た秘密情報の取り扱いについて(秘密保持契約書を作成する場合もある) |
⑩損害賠償 | 契約違反時や業務継続困難となった場合の損害賠償について |
⑪契約の解除について | 契約解除の可否や条件、賠償の有無など(例:契約違反があった場合契約を解除できる) |
⑫反社会的勢力の排除 | どちらか一方が反社会的勢力に属する場合、もう一方は契約を解除できることを記載 |
⑬合意管轄 | トラブル発生時に解決場所として指定する裁判所を記載 |
※準委任契約の場合、非課税文書のため収入印紙は不要
6-2 下請法に違反しないよう注意 |
下請法とは、優越的地位である元請け業者が適正に業務を行うことや、下請け業者が一方的に不利益を被らないように保護することを目的とした法律で、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。
例えば、次のような行為が下請法で規制や禁止されています。
■下請法で規制、禁止されている事柄例 ・委託した業務が完了、納品された場合の代金が60日を超えて支払われる |
業務委託契約書の「損害賠償」の項目で、受託者に過度な責任が発生してしまう場合も、下請け業者に不利益となるため下請法に抵触する恐れがあります。
また、内閣府の資料によると、フリーランスが取引先とトラブルになった理由の約3割が「報酬の支払が遅れた・期日に支払われなかった」ことであり、「報酬の未払いや一方的な減額があった」「仕様や作業時間・納品日を一方的に変更された」こともトラブルの理由として高い割合です。
下請法では、元請け業者に発注書面の交付や書類の作成、保存義務などが課されています。しかし、業務委託契約書を作成しても記載された内容を遵守しなかった場合、受託者とトラブルになるだけでなく、下請法違反となり罰則を受ける可能性があるため注意しましょう。
下請法の対象となるのは、現行では資本金1000万円超の企業様ですが、政府は資本金1000万円以下の企業様も下請法の対象とする方針を示しており、2023年に法案が提出される予定です。
企業様と業務委託されるエンジニアがお互いに気持ちよく仕事をするためにも、下請法に抵触しない適正な取り引きをすることが望ましいといえます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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ブログ編集部
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