
ステルスハラスメントとは、目には見えづらいハラスメントのことです。
暴力などの目立つ行為ではなくても、被害者の精神には大きなダメージを与えるため、企業はステルスハラスメントの対策を施し、自社で生じさせないことが求められます。
この記事では、ステルスハラスメントの意味と従来のハラスメントとの違い、具体例、企業への影響と対策をまとめています。
| この記事でわかる事 |
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1.ステルスハラスメントとは |
ステルスハラスメントの意味と、従来のハラスメントとの違いを解説します。
(1)ステルスハラスメントとは
ステルスハラスメントとは、無視や無感情な返答・表情、疎外など、静かに行われるハラスメントのことです。別名で、「サイレントモラハラ」や「隠れモラハラ」とも言われます。
相手の身体を直接傷付けることはありませんが、冷淡な態度をされた側は、「何か気に障ることをしたのだろうか」「自分は認められていないのだろうか」などと不安やストレスとなり、精神的に辛くなります。
ハラスメント加害者は攻撃的な言動をするわけではないため、被害者本人や周囲が気付きづらく、早期発見や対処が難しいという特徴があります。
(2)従来のハラスメントとの違い
パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの従来型は、暴力や配慮のない発言、身体接触など第三者から見ても不適切な言動が明確であるケースが多く、証拠も残りやすいです。
一方でステルスハラスメントは、攻撃的な要素がないため、加害者に「指導の範囲内である」という口実を与えやすいです。また、周囲が気付きづらい点で、被害者が声を上げても「考えすぎではないか」と片付けられてしまうリスクがあり、表面化しにくい傾向があります。
| ステルスハラスメント | 従来のハラスメント | |
| ハラスメントの傾向 | 間接的・静的 |
直接的・攻撃的 |
| 周囲の反応 | 表だった言動がないため、気付きにくい |
暴力や不適切発言などがあり、わかりやすい |
| ハラスメントの例 |
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2.職場で起こりやすいステルスハラスメントの具体例 |

職場で起こりやすいステルスハラスメントの具体例として、次の4つが挙げられます。
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それぞれどのようなハラスメント行為なのか、確認しましょう。
(1)業務の意図的な除外や情報の遮断
業務から意図的に除外する行為や、必要な情報を遮断する行為は、ステルスハラスメントのひとつです。
除外された従業員は、「自分はこの業務に必要がないのか」と孤立感や無力感を覚えます。また、情報を遮断されると、業務がスムーズに進まないなどのネガティブな事態も招くでしょう。被害者である従業員は、自分の能力不足だと勘違いし、精神的な負荷がかかると考えられます。
また、業務に関係ない情報でも、意図的に蚊帳の外に置くことで話に入れない状態を作れるため、強い疎外感を与えます。
(2)過剰なまでの無関心や「無視」に近い態度
話しかけられても無視する、目を合わせない、必要最低限の返事しかしないなど、無視する行為や無反応に近い対応は、相手に不安や恐怖を芽生えさせ、大きなストレスとなるでしょう。
表情も、ステルスハラスメントとなりえます。例えば、相手に対して無表情でいる、話しかけられると不機嫌になる、嫌そうな顔をする、睨む、ため息をつくなども、相手の心を深く傷つけます。
相手の要望を了承しておいて、実際にはやらない行為も無視と同様です。相手は「やってくれる」と信用していた分、自分の望みを意図的に無視された状況に人間不信となる恐れがあります。
(3)本人の能力を大幅に下回る単純作業の強要
本人のスキルや経験を活かせる業務ではなく、能力を大幅に下回る単純作業を強要することも、ステルスハラスメントです。
例えば、実績や資格、ポテンシャルもある人材に一日中資料のコピーをさせる、業務室の掃除をさせる、コピー&ペーストするだけの簡単なデータ入力を任せるなどは、本人のモチベーションと自己肯定感の低下を招きます。
業務が本人の能力に適していても、必要な資料や道具を隠す・渡さない、そばで大声で話す等の集中力が低下する環境を作る、ツールの使い方を教えないなど、業務を妨害する行為もステルスハラスメントに該当します。
(4)称賛の場から特定の個人だけを外す行為
目標達成や成果をあげた従業員を称賛する場で、特定の個人だけを外し、無視する行為は、ステルスハラスメントとして対象従業員に精神的負荷を与えるでしょう。無視や過小評価された従業員は、「自分も貢献したのに」と不満や疎外感を抱き、「自分には価値がない」とネガティブな思い込みにつながります。
「いないものとする」行為だけでなく、物理的に除外するステルスハラスメントもあります。例えば、職場の飲み会やイベントに特定の人材だけ呼ばない、グループチャットへ意図的に参加させないなども、直接的な暴力行為ではありませんが、被害者に辛く、嫌な思いをさせるでしょう。
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3.ステルスハラスメントが企業にもたらす影響 |

ステルスハラスメントが横行すると、企業にとって次のような悪影響があります。
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ステルスハラスメントの影響は、被害者だけに及ぶわけではありません。
どのような影響があるのか、適切に対処するためにも事前に把握しておくことが大切です。
(1)優秀な人材の離職と採用ブランディングの低下
ステルスハラスメントの加害者の心理として、相手への嫉妬やストレス発散、劣等感から生じる優位性の確保などがあります。そのため、実は自立心が強く優秀な人材がステルスハラスメントの標的になることも少なくありません。優秀な人材が理不尽な扱いに嫌気がさして離職することは、企業にとって大きな損失です。
また、口コミサイトなどを通じて社内におけるステルスハラスメントの実態が露呈すれば、採用力にも深刻なダメージを与えます。ただでさえ人手不足が叫ばれるなか、自社のネガティブな情報が広まることで応募者が減少し、採用難を加速させるでしょう。
(2)職場全体の心理的安全性の喪失
ステルスハラスメントは、間接的な方法で特定の個人がじわじわと追い詰められます。加害者の一方的な負の感情から生じているケースも多いです。
はっきりとした原因がないなかで行われる理不尽な光景を周囲が目にすることで、「次は自分が標的になるかもしれない」という恐怖心が蔓延し、「目立たないようにしよう」と防衛反応が働くでしょう。結果として自由な発言や挑戦が抑制され、組織全体の生産性や創造性が著しく低下します。
(3)メンタルヘルス不調による法的リスクと損害賠償
従来のハラスメントと異なり、ステルスハラスメントは「無視」や「仲間はずれ」などの目立ちづらい行為です。しかし、被害者の精神的なダメージは大きく、ストレスからうつ病や適応障害などを引き起こす恐れがあります。
もしステルスハラスメントが原因で被害者がメンタルヘルス不調に陥った場合、企業は安全配慮義務違反を問われる可能性があります。裁判になれば、多額の損害賠償だけでなく、企業名の公表による社会的信用の失墜も招きかねないでしょう。
4.ステルスハラスメント対策として企業が取り組むべきこと |

ステルスハラスメントの発生による企業への影響を防ぐためにも、対策を施すことが重要です。
下記4つの対策に取り組んで、ステルスハラスメントを生じさせないようにしましょう。
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各取り組みを詳しく解説します。
(1)定期的な1on1やパルスサーベイの実施
ステルスハラスメントは周囲から見えにくいため、個々のコンディションを定点観測する仕組みが有効です。上司と部下による定期的な1on1では、業務の進捗だけでなく、本人の表情や発言の端々に表れる違和感を察知することに努めましょう。
1on1を効果的に行うには、部下との信頼関係を築くことが重要です。上司に対する安心感や信頼感があるほど、部下は悩みを打ち明けやすくなります。
また、匿名性の高いパルスサーベイを導入し、「職場の人間関係に疎外感を抱いていないか」などの項目を継続的に追い、組織内に潜むリスクを数値化することで、早期発見につなげられます。
(2)相談窓口を設置し周知する
直接的な暴行や不適切発言がないステルスハラスメントは、被害者本人も「これはハラスメントなのだろうか」「自分の気のせいではないのか」などと疑う可能性があります。違和感が小さいほど、「これくらいのことで相談してもいいのだろうか」と一人で抱え込みやすいです。
抱え込んだ結果、メンタルヘルス不調を発症させないように、気軽に相談できる専用窓口の設置と全社への周知が大切です。相談へのハードルを下げるために、窓口担当者にステルスハラスメントの特性について正しい知識を取得させる教育を行い、プライバシーが厳守されることを強調しましょう。
また、社外の専門機関と連携した外部窓口を併設することも重要です。「社内の人には相談しにくい」という方も、外部窓口であれば声を上げやすいと考えられます。
(3)管理職向け研修の実施
現場のマネジメントを担う管理職に対し、ステルスハラスメントについての正しい知識を共有する研修を行いましょう。
何気ない無視や情報の遮断などのステルスハラスメントが、従業員のメンタルヘルス不調や法的リスク、組織の崩壊等の深刻な事態を招きかねないことを理解させる必要があります。
具体的なケーススタディを通じて、管理職自身の指導スタイルがステルスハラスメントとなっていないかを確認させることも重要です。排他的な対応や相手の好き・嫌いによる態度の違いなど、自身の行為を客観的に振り返る機会を提供し、適切なフィードバックの手法を再学習させることが再発防止に直結します。
(4)多様性を認め合い、孤立を生まない組織文化の醸成
相談窓口の設置やハラスメント発生時の対応フローの確立、従業員の意識を高めるための研修の実施など、制度や仕組みの整備も大切ですが、組織文化のアップデートも並行して取り組む必要があります。
具体的には、特定の属性や価値観から外れる個人を排除するのではなく、異質な意見や多様な働き方を尊重し合える空気感を作ります。組織のトップ自らが積極的に「多様性を認める文化の醸成」に関するメッセージを発信すると、従業員にも浸透しやすくなるでしょう。
お互いの貢献を認め合う称賛の文化を根付かせ、誰一人として孤立させないチームビルディングを推進し、陰湿な嫌がらせが起こりにくい健全な土壌を築き上げることが、究極のハラスメント対策となります。
5.まとめ |
ステルスハラスメントは、無視や情報の遮断など、目には見えにくいハラスメントのことです。暴力や暴言などの直接的な行為ではないため、本人や周りがハラスメントだと気付きづらく、発見が遅れる傾向があります。
職場でステルスハラスメントが起こると、優秀な人材の離職や損害賠償リスクがあります。企業にとってマイナスな影響しか生じないステルスハラスメントは、1on1の実施や相談窓口の設置などによって防止することが重要です。
従業員と自社を守るためにも、ステルスハラスメントの知識と対策を取り入れておきましょう。
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