リテンションとは、「優秀な人材を自社につなぎとめること」を意味する言葉です。
人手不足といわれている現代では、リテンション施策に取り組み、優秀な人材を離職させないことが重要といえます。
この記事では、リテンションの意味やリテンション施策を行うメリット、具体例をまとめているため、人事担当者の方はぜひご参考にしてください。
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1.リテンションとは |
リテンション(retention)は、英語で「維持」「保持」を意味する言葉です。
リテンションは、主に人事領域とマーケティング領域で使われていますが、意味が異なります。それぞれの意味を解説します。
(1)人事領域での意味
人事領域でのリテンションの意味は、「優秀な人材を自社につなぎとめること」です。人材の離職を防ぎ、自社で活躍し続けてもらうための施策を「リテンションマネジメント」「リテンション戦略」と呼びます。
企業がリテンションを行うのは、従来であれば一部の優秀な社員などに限定されていましたが、人手不足や人材の流動化といった市況から人材の流出防止を目指し、すべての社員に行う企業が多いです。
(2)マーケティングにおける意味
マーケティングにおけるリテンションの意味は、「既存顧客を自社につなぎとめること」です。既存顧客との関係を維持するための施策をリテンションマーケティングと呼びます。
既存顧客との良好な関係を維持できた場合、新たな顧客を獲得するコストを抑えられたり、長期的に安定した利益を得たりできるため、リテンションマーケティングによって既存顧客の流出を防ぎます。
2.リテンションが注目される背景 |
リテンションが注目される背景には、少子高齢化による人手不足と、働き方の多様化による人材の流動化があります。
(1)少子高齢化による人手不足
現在、少子高齢化社会を迎えている日本は、1995年をピークに労働力人口(15~64歳)が減少し続けています。1995年には8716万人だった労働力人口が、2030年には6875万人になると推計されており、企業はますます人手不足に陥ると予測できるでしょう。
参考:総務省「第1部 特集 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~」
企業が事業を継続していくには、人材確保だけでなく自社に在籍する人材の流出を防止することも重要なため、リテンションへの注目が集まっています。
(2)働き方の多様化による人材の流動化
働き方改革や新型コロナウィルス感染症の蔓延によって、フレックスタイム制度やリモートワークなどを導入し、多様な働き方を実現する企業が増加しました。
伴って、終身雇用ではなく自分に合った働き方を求める人材も増え、転職へのハードルが下がっている現在の労働市況は、人材が流動化しているため、リテンションを行わないと優秀な人材の離職につながりかねません。
リテンションに取り組み、自社社員の定着率が上がれば、採用でのアピールポイントにもなるでしょう。
3.リテンション施策を行うメリット |
リテンション施策を行うと、次のメリットを得られます。
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メリットを具体的にご紹介します。
(1) 離職率の低下に伴う採用コストの削減
リテンション施策を行うと、社員の離職率が低下することによって採用コストを削減できる可能性があります。人材の採用にあたっては、求人媒体や人材紹介会社などの利用にかかる費用、採用に関する事務的コスト、人材の育成コストなどがかかり、企業の経営を圧迫しかねません。
リテンション施策によって社員の離職率が低下すれば、新たな人材の採用にかかるコストを削減できるため、企業の成長につながる取り組みにリソースを割けるなどして、有効活用できるでしょう。
(2)社内のスキル流出防止、ノウハウの蓄積
リテンション施策を行うと、社員の離職率を下げられるため、スキルやノウハウが社外へ流出することを防げたり、自社へ蓄積されたりするメリットがあります。
社員が離職し、競合他社への転職や独立をした場合、自社で培ったスキルやノウハウを活用されて、自社の利益が損なわれるかもしれません。また、自社でノウハウが蓄積されず、業務効率化や企業成長につながらない恐れもあります。
一方で、リテンション施策を行えば、自社に満足して留まってくれる社員のスキルやノウハウを自社のために活用できるため、スキル流出のリスクを回避しながら企業の継続的な成長を実現できるでしょう。
(3)社員のモチベーションアップ
社員のモチベーションアップも、リテンション施策に取り組むメリットのひとつです。社員を自社につなぎとめるために効果的なことを実施するリテンション施策は、社員の働きやすさを向上させる効果があります。
働きやすい職場は社員の業務に対するモチベーションをアップさせ、従業員エンゲージメントや生産性の向上にもつながると考えられます。
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4.リテンション施策の種類 |
リテンション施策には、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2種類があります。
企業が人材を自社につなぎとめるには、どちらか一方ではなく両方の施策に取り組むことが大切です。特に、「金銭的報酬」は費用がかさむなどして取り組みに限界があるため、「非金銭的報酬」の充実を図ることが求められているでしょう。
(1)金銭的報酬
金銭的報酬には、次のような施策が挙げられます。
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それぞれの人材に適した給与や賞与を支払えた場合、社員は企業が適正に評価してくれていることを実感でき、企業に対する信頼感が増したり満足度が向上したりして、離職防止につながる可能性が高いです。
また、福利厚生を充実させれば、社員の働きやすさを高められるため定着率を上げられるでしょう。福利厚生を充実させる方法として、社員の望みをヒアリングするといいかもしれません。
(2)非金銭的報酬
非金銭的報酬として、次のような施策が挙げられるでしょう。
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働きづらい職場環境では、ストレスを感じた社員が早期離職する恐れがあるため、社員が快適に過ごせる職場環境の構築や、柔軟な働き方ができる制度を導入することをオススメします。
また、社員が長期的に活躍できるようにスキルアップ研修を実施したり、キャリア形成サポートを行なったりするといいでしょう。
企業に対する安心感や信頼感を社員に抱いてもらうために、社内でのコミュニケーションを活発化し、相互理解を深めることも大切です。
5.リテンション施策の具体例 |
リテンション施策の「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の内容について、具体例をご紹介します。
(1)人事評価制度や給与体系の見直し
適正に評価されなかったり、給与が実績に見合っていなかったりする場合、社員は不満を抱え、離職に至る恐れがあります。そのため、人事評価システムの導入や評価手法の検討を行なって、社員が納得する評価を下したり給与を設定したりすることが大切です。
評価手法は、360度評価やコンピテンシー評価、MBO(目標管理)など複数あるため、自社が取り入れやすいものを選択するといいでしょう。
(2)スキルアップ支援の実施
社員が自社で長く活躍するためには、社員のスキルアップを支援する研修を行なったり、機会を与えたりすることが重要です。社員のなかには、新たな知識を身につけたい、いまのスキルをさらに伸ばしたいと考える意欲的な人材もいるでしょう。
社員がスキルアップできるような支援をすると、満足して離職率が下がるだけでなく、企業の成長にもつながると考えられます。
(3)キャリア形成支援の実施
社員の人事異動は、経営層などの一部の人材のみで決めるのではなく、社員の意見や希望も聞いたうえで検討することが望ましいです。
自身のキャリアを思い描いている社員の場合、意に沿わない人事異動ばかりをされると企業に対して落胆し、キャリアを形成できる企業へ転職するかもしれません。そのため、社員の希望をヒアリングし、キャリア実現を目指すサポートをすることが大切です。
一方で、自身のキャリアを描けていない社員は、やりがいのある業務に出会えていない可能性があります。キャリアが不明瞭な社員に対しては、ジョブローテーションを行なって、意欲的になれたり適性があったりする業務に出会うサポートをすることも有効でしょう。
(4)ワークライフバランスの実現
ワークライフバランスを実現できる職場は働きやすさがあるため、社員の満足度が向上する可能性が高いです。例えば、フレックスタイム制度やリモートワーク制度を導入したり、企業独自の休業制度を設けたりすると、出産や育児、介護などのさまざまなライフイベントを迎える社員も安心できます。
企業は、ただ制度を導入するだけでなく、制度の利用や休暇の取得を促進することも大切です。制度を利用しやすい、休みやすいという職場環境は、社員のストレス軽減につながるため、「長く働きたい職場」と感じてもらえる可能性があります。
(5) 社内コミュニケーションの強化
社内コミュニケーションが活発で風通しのよい職場は、社員同士の連帯感を強めたり、相互理解がしやすかったりします。社内のコミュニケーションが少ないと、悩みを相談できる相手がいない、相手の考えていることがわからないなどの状態になり、居心地の悪さから離職する社員もいるため、社内コミュニケーションを強化することは重要です。
例えば、1on1ミーティングやメンター制度を導入して上司と部下、先輩と後輩の距離を近くすると、報連相を行いやすい関係を構築できるでしょう。また、フリーアドレスの仕事スタイルでさまざまな人と交流できるようにすると、他部署の人とも関係を深めるきっかけになるため、部署をまたいで頼れる存在を見つけられたり、業務の連携が取りやすくなったりします。
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6.離職リスクを把握する方法 |
離職を考えている社員は、事前にサインを発している可能性があります。優秀な社員に離職されると企業にとって大きな損失となるため、離職リスクを把握し、社員の離職意思が固まる前に引き留めることもリテンションの役割として挙げられます。
離職リスクを把握する方法は、次の3つです。
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(1)コミュニケーションの軽薄化を確認する
コミュニケーションが軽薄化していたり、そもそもコミュニケーション自体が減っている場合、社員が離職を考えている恐れがあります。
離職を考えている社員は、仕事に対してモチベーションが下がっている可能性が高く、コミュニケーションにも身が入らないでしょう。また、ネガティブなコミュニケーションが起きていることもあります。
社員のコミュニケーションにマイナスな変化があった場合は、悩みなどがないかをヒアリングし、場合によっては悩みを改善する案を出して、離職を思いとどまってもらえるように動きましょう。
(2)勤怠状況ログを分析する
勤怠状況ログを分析し、勤怠に変化がある社員に注意を払いましょう。例えば、遅刻や欠勤が増えている社員は、仕事に対する意欲が低下しており、職場に来ることが苦痛となっていることが考えられます。
一方で、残業や休日出勤が多い社員も注意が必要です。業務過多な状況が続き、心身に負担を感じているかもしれません。
優秀な人材が離職する前に、勤怠状況ログを定期的に分析して、社員の悩みを聞いたり、業務分担を適切にしたりする対策を施しましょう。
(3)過去の離職者との類似点を把握する
離職してしまった社員と過去の離職者との類似点を把握し、次の離職者が出る前に職場環境や社内体制を整えることも重要です。
離職した社員と過去の離職者との類似点を分析すると、例えば「同じ部署にいた」「ポジションが同じだった」などを発見でき、離職する原因を突き止めたり改善したりしやすくなります。
優秀な人材を自社につなぎとめておくには、在籍している社員だけでなく離職者にも注意を向け、将来入社する人材や人事異動する社員が過去の離職者と同様の理由で離職しないように自社を整備することが大切といえます。
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