採用活動を行なっても、自社が求める採用ターゲットからの応募が集まらなかったり、入社後にミスマッチが判明したりすると、採用コストの負担が大きくなり自社の成長に繋がりづらいでしょう。
そこで実施していきたいのが転職者に自社の魅力を発信する「採用広報」です。
この記事では、採用広報の役割やメリット、効果を高めるための進め方などを解説します。
1.採用広報とは |
採用広報とは、企業様が採用に際して行う広報活動全般のことで、求職者の応募を集めたり、採用を成功させたりするために企業様の情報を発信します。
情報発信の内容は、募集要項以外にも、具体的に行う業務内容、企業文化、職場環境や雰囲気、実際に働いている社員の声などさまざまです。
採用広報の施策は多岐にわたりますが、ただやみくもに行えばいいというわけではなく、採用広報の役割を理解し、自社にマッチした人材の採用につなげることが大切です。
2.採用広報の目的 |
採用広報に取り組む目的は、採用ターゲットに「自社を認知して興味をもってもらうこと」と、「ミスマッチ人材からの応募を減らすこと」の2点です。
採用を成功させるためには、まずは求職者からの応募を集めなければいけません。企業様が積極的に採用広報を行うことで、転職者が企業様に対して興味をもち、応募にいたる可能性があります。
また、企業様の情報を発信する採用広報は、転職者の企業様に対する理解を深められるため、企業理念や社風などとのマッチ率が高い人材からの応募増加につながるでしょう。ミスマッチ人材からの応募を減らせることで、採用に係る時間やコストを有効的に活用できます。
3.採用広報の重要性 |
従来の雇用は、自社が倒産しない限りは入社した社員を定年まで雇用し続けるという終身雇用制度でした。しかし、働き方改革や新型コロナウィルス感染症蔓延などにより、副業、独立、フリーランスなどの働き方を選ぶ方が増加したり、転職へのハードルが低くなったりしています。
仕事ばかりを重視するのではなく、家事や育児、家族との時間やプライベート時間などワークライフバランスを大切にしたいと思う転職者も増えているため、働く価値観や働き方が多様化している状況です。
転職者の転職軸が「自分がやりたいこと」「やりたいことを実現できる働き方」に重きがおかれるように変化しつつあるなかで、自社で働いている姿をイメージしてもらうために採用広報が重要視されています。
4.採用広報が注目されている背景 |
採用広報が注目されている背景には、市況や情報過多などが挙げられます。採用広報が注目されている背景を解説します。
(1)売り手市場で採用が難しくなっている
日本の人口における20歳から64歳の割合は、2020年では6938万人でしたが、2025年には6635万人、2040年には5543万人と減少していくことが予測されています。働き世代の減少は、企業様の人手不足につながり、生産性低下などの悪影響を及ぼしかねないでしょう。
働き世代が減少している一方で、各職種とも、近年の有効求人倍率は増加傾向にあることが分かります。
働き手不足の売り手市場という状況は採用の難易度を高めているため、採用広報を行なって転職者の興味関心を集めるだけでなく、転職潜在層にも自社を認知してもらい、のちの採用活動にも繋げていくことが重要です。
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(2)デジタルメディアの発達で情報量が増加している
インターネットが発達した現代において、テレビや新聞などのマスメディアではなく、Webサイトなどのデジタルメディアから情報収集を行う方が増えています。
一方で、流通している情報量が多く、消費が追いついていないことも見て取れます。
参考:我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果(平成21年度) -総務省資料P2-
企業様の情報も、自社サイトや求人サイト、口コミサイトなどさまざまな媒体で収集できますが、企業様への応募の判断材料として、より本質が分かるような透明性のある情報を転職者が求めている傾向にあります。
採用広報は、自社の社風やビジョン、社員のリアルな声などを発信できるため、転職者のニーズに応えられ、応募の増加や採用成功となる可能性を高められるでしょう。
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5.採用広報を行うメリット |
転職潜在層にも自社をアピールできたり、転職者の求める情報を提供できたりする採用広報を行うことで、得られるメリットがあります。
採用広報を行うメリットをご紹介します。
(1)企業認知度の向上
採用広報は、企業認知度の向上につながります。採用広報は企業様のビジョンや社風などの情報を発信するため、転職者が企業様の情報に触れるたびに企業様に対し興味を抱き、さらに情報収集などをすることが考えられるでしょう。
採用広報によって多くの転職顕在層に自社を知ってもらえれば、企業様が転職者の転職先の候補となるかもしれません。また、転職顕在層だけでなく、転職潜在層への認知度も高められるため、転職潜在層が将来的に転職に踏み切った際に、自社のことを思い出して応募してくれる可能性もあるでしょう。
(2)ミスマッチの防止
自社のビジョンや社風、実際に働いている社員の声などを発信する採用広報は、転職者とのミスマッチを防止できるかもしれません。企業様が自社のさまざまな情報を発信することで、転職者は求人サイトや口コミサイトでは知り得なかった情報も得られるため、認識の相違が減ったり、より共感できたりする可能性があります。
転職者の自社に対する理解を深められた状態での採用活動は、選考フローや採用後のミスマッチ防止だけでなく、より自社に合った社員の採用もできるでしょう。
(3)採用コストを抑えられる
採用広報を行うことでミスマッチが減り、自社が求める人材が長く働いてくれた場合、早期離職によって再度人材を採用するコストや社員の労力を抑えられるでしょう。採用活動にはコストがかかるため、自社が求める人材を効率的に集められた場合、採用コストの無駄がなくなる可能性が高いです。
採用広報によって早期に採用できた場合は、採用活動にかけていたリソースを通常業務や新たな業務に割くことができるため、限られたリソースの有効活用にも繋がります。
6.採用広報の手法 |
採用広報には、さまざまな手法があります。それぞれの手法について解説します。
(1)ストック型コンテンツとフロー型コンテンツ
ストック型コンテンツとは、企業様の資産として半永久的に残る情報のことで、例えば自社の採用HPや採用ブログ、採用動画などです。
一方で、フロー型コンテンツとは、母集団形成のために一定期間だけ活用する、企業様の資産とはならない情報のことを指します。例えば、求人SEOや外部の求人広告、SNS広告などです。
ストック型コンテンツとフロー型コンテンツのメリット、デメリットは下記のとおりです。
ストック型コンテンツ | フロー型コンテンツ | |
メリット | ・コストを抑えられる ・ブランディングを図れる |
・短期で母集団形成が可能 ・外部の採用ノウハウを蓄積できる |
デメリット | ・効果が出るまでに中長期間かかる ・認知のために高い更新頻度が求められる ・コンテンツ内容のノウハウ不足 |
・コストが比較的高い ・掲載期間中しか母集団形成できない |
ストック型コンテンツは、効果を出すために中長期的な目線で取り組む必要がありますが、フロー型コンテンツは短期間での母集団形成が可能です。しかし、フロー型コンテンツは自社にとって資産とならない一時的な採用手法のため、ストック型コンテンツに取り組みながらフロー型コンテンツも併用することが、採用広報活動において大切でしょう。
(2)SNS
Twitter、Instagram、TikTokなどのSNSの活用は、若手人材の採用に効果的かもしれません。総務省によると、令和3年度に全年代をとおして最も利用率が高かったSNSが「LINE」、続いて「YouTube」「Instagram」「Twitter」「Facebook」でした。
参考:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 -総務省資料-
しかし、年齢別の利用率に着目してみると、10代ではTikTokの利用率が比較的高いことや、Facebookの利用率は30代が最も高いことなどが分かります。
自社が求める人材とのマッチング率を高めるために、採用ターゲットの年齢に応じて採用広報を行うSNSを使い分けることも検討するといいかもしれません。
(3)オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社が運営するメディアサイトのことです。例えば、食品メーカー様の場合は、自社商品を使ったレシピの紹介など、食に関する情報発信をしています。自動車販売企業様の場合は、車の購入に関する知識などの情報をサイト内に記事としてまとめています。
オウンドメディアは、自社の魅力を含めながら自由に情報発信ができるため、転職者の興味関心を引いたり、ブランディング効果を高められたりするでしょう。
一方で、オウンドメディアの運営は、企業認知度を高めるための知識が必要であったり、外注する場合にコストがかかったりします。また、中長期的に効果を出す手法のため、継続した情報発信が必要です。
(4)イベント
企業様が転職イベントなどのイベントを開催することで、転職者と直接コミュニケーションをとれたり、より密接に関われたりして、転職者の応募意欲を高められる可能性があります。
採用サイトやSNSでの情報発信は、企業様からの一方向のアプローチとなってしまいますが、イベントは転職者からもアクションがあるため、転職者の自社理解を深められるかもしれません。
一方で、イベントの企画や運営にコストや時間がかかったり、参加する社員の業務に影響が出たりする恐れがあります。
7.採用広報の導入ステップ |
採用広報を成功させるためには、適切な順番で取り組むことが大切です。
採用広報の進め方を解説します。
(1)目的と採用ターゲットの整理
採用広報を行う目的と採用ターゲットを整理しましょう。「求めている採用ターゲットからの応募を集めたい」「採用のミスマッチを発生させないため」など、自社が採用広報を行う目的を明確にすることで、採用広報を行う方向性が定まります。
例えば、採用後のミスマッチの理由が「社風に合わなかった」という場合には、社風に関する情報を意識して発信するなど、目的に沿った情報発信を行うことが大切です。
また、ミスマッチを発生させないためには、自社の採用ターゲットに刺さる情報を発信する必要があります。そのために、自社が求める人材を明確化して、採用ターゲットを整理しましょう。
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(2)発信内容の決定とコンテンツの選定
採用広報の目的と採用ターゲットを明確化したあとは、情報発信する内容と発信する方法を決めていきます。
採用広報の目的が「ミスマッチ防止のため」の場合は、転職者とミスマッチとなった部分を把握し、ミスマッチが生じやすい部分の情報をより多く発信するといいでしょう。業務の一日の流れや、同じポジションにいる社員のインタビューなどの発信は、転職者に自社で働くイメージを抱いてもらいやすい可能性があります。
発信する情報に悩んだ場合は、中途入社社員に「入社前、自社のどのような情報を知りたかったか」「自社に惹かれたポイントはどこか」などを聞くと、転職者が知りたい情報や自社のアピールポイントの把握に繋がります。
決定した発信内容は、採用ターゲットに合う方法で発信していきます。若手人材を求める場合はSNSの活用が考えられますし、早期に人材が必要な場合はフロー型コンテンツも活用できるでしょう。
採用広報の目的と採用広報にかけられるリソースから、継続的に取り組める方法を選択することが大切です。
(3)KGI、KPIの設定
採用広報は、KGIとKPIを設定したうえで取り組むことが求められます。中長期的に取り組む採用広報は、「ミスマッチを防止できた」「採用ターゲットからの応募がきた」など、目的達成までに時間がかかるため、取り組んでいる間にも効果を実感できると目的達成への意欲も湧くでしょう。
例えば、採用広報活動におけるKGIは企業様の採用人数で、KPIは内定承諾率や選考通過率、応募数などが考えられます。
KPIに関しては、採用広報サイトのPV数、SNSのインプレッション数、動画の再生数などの短期的目標も設定しておきましょう。短期的目標の設定によって発信する情報や発信方法の改善、モチベーションの維持ができるため、最終的な目的も達成できる可能性が高まります。
8.採用広報を成功させる3つのポイント |
採用広報の運用にはコツがあります。
採用広報を成功させるためにも、次の3つのコツを意識して取り組むといいでしょう。
(1)現場社員を巻き込む
採用広報で転職者に自社のリアルな情報を伝えるためには、現場社員を巻き込んだ取り組みが重要です。例えば、営業職の業務内容について情報発信したい場合に、採用担当者が想像で記事作成をすると、正確な情報を転職者に伝えられずミスマッチが発生したり、営業職の魅力を伝えられなかったりする恐れがあります。
現場のリアルな声を伝えることで、転職者に自社の魅力を知ってもらい、応募意欲を高められる可能性があるため、現場社員のインタビュー記事を掲載したり、現場社員に自ら情報発信してもらったりするといいでしょう。
現場社員を巻き込む際の注意点は、採用広報に現場の声が重要な点を説明し、理解してもらうことです。通常業務があり忙しい現場社員にコンテンツ制作などをただ依頼するだけでは、目的が分からずに当たり障りのない内容に仕上がって、転職者に刺さらない情報になりかねません。
そのため、現場に採用広報の重要性やメリットを理解してもらい、協力して取り組んでいくことが求められます。
(2)ミッション、ビジョン、バリューを伝える
採用広報では、企業様のミッション(存在意義)、ビジョン(理想像)、バリュー(行動指針)を積極的に伝えましょう。転職者は、転職活動において企業様の業務内容や福利厚生などのほかに、企業様独自の考え方も応募の判断基準になっている傾向があります。
ミッションやビジョン、バリューを転職者に伝えることで、共感した転職者が集まるため、ミスマッチ防止につながったり、入社後の意欲ある活動が期待できたりするでしょう。
(3)ターゲットに刺さるコンテンツの発信
コンテンツは、ただやみくもに発信すればいいというわけではなく、ターゲットに刺さる情報発信を意識することが大切です。
例えば、採用ターゲットが「上昇志向でプライベートよりも仕事重視」という場合、企業様の年間休日数や社内イベントを伝えるより、業務の魅力やインセンティブ制度などを伝えたほうがターゲットに刺さる可能性があります。
設定した短期的目標のKPIを確認すると、発信するコンテンツがターゲットに刺さっているかを検証できるため、KPIの測定結果によっては発信内容を変更するなど、適宜改善していきましょう。
9.採用広報事例 |
株式会社キャリアデザインセンターでは、事業部ごとに採用を行なっています。転職サイト「type」や「女の転職type」を運営するメディア情報事業部では、認知度向上と母集団形成、採用のミスマッチ防止を目的に採用広報を開始しました。
採用広報の取り組み方
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結果、カルチャーマッチ度の高い候補者からのカジュアル面談希望の獲得、ギャップ低減に繋げています。
いかがでしたか。もし中途採用について悩まれている、自社にとって適切な手法が分からないといった場合は、ぜひ弊社キャリアデザインセンターにご相談ください。エンジニア採用・女性採用に特に強みを持ち、あらゆる中途採用ニーズに対応できるサービスを運営しております。
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