静かな退職とは、退職が決まったかのように必要最低限の仕事しかしない働き方のことです。
従業員の静かな退職を放置しておくと、企業にとってさまざまなリスクがあるため、対策を施して未然に防ぐことが求められます。
静かな退職の意味や兆候、企業のリスクと対策を解説します。従業員の静かな退職を防ぎたい、静かな退職に困っている企業はぜひご覧ください。
この記事でわかる事 |
・静かな退職の意味 ・静かな退職の兆候 ・静かな退職を放置しておく企業側のリスク ・静かな退職への7つの対策 |
1.静かな退職とは? |
静かな退職とは、実際に退職をするわけではなく、退職が決まったかのように必要最低限の仕事しかしない働き方のことです。静かな退職をする方に退職意思はなく、プライベート優先で仕事にはドライに取り組み続けるという特徴があります。
静かな退職の概念は、2022年にアメリカのキャリアコーチ、 ブライアン・クリーリーがSNSで「Quiet Quitting(静かな退職)」と提唱したことで世界的に広まりました。
(1)静かな退職が増えている背景
アメリカのコンサルティング企業、ギャラップ社の調査では、アメリカの労働者の50%以上が静かな退職をしています。
また、Great Place To Work® Institute Japan調べによると、日本でも静かな退職をする方は増加しており、年代は20代後半や30代後半から40代にかけてが多い傾向です。
静かな退職が増えている背景には、次の3つが挙げられます。
・企業に対する不平不満の蓄積 |
それぞれを詳しく解説します。
企業に対する不平不満の蓄積
企業に対する不平や不満の蓄積によって、静かな退職をする方が増えています。給与に見合わない業務量、頑張っても正当に評価されない職場風土、長時間労働による心身への負担などがあると、「頑張っても報われない」「仕事への意義を見出せない」気持ちになるでしょう。
そのため、ストレスから心身を守れるように、必要以上の仕事をしない「静かな退職」という働き方が選ばれています。
働き方に対する価値観の変化
新型コロナウィルス蔓延によるリモートワークの普及や、働き方改革における長時間労働の規制などによって、労働者の働き方に対する価値観が変化しています。
仕事優先の考え方からプライベート優先、ワークライフバランスを取るという価値観の方が増えているため、残業になるほど頑張りすぎない、昇進して忙しくなるほど出世しないように、静かな退職が増加傾向にあります。
キャリアの不透明化
終身雇用が一般的だった従来の日本企業では、勤続年数が増えるごとに昇進・昇給してキャリアを築いていけました。しかし、終身雇用が崩壊しつつあるいま、従業員は安定したキャリアプランを描くことが難しくなっています。望まない異動や転勤によって、従業員の希望するキャリアから外れることもあるでしょう。
そのため、企業に頼らずに自らキャリアを築こうと活動する方が増えており、自社での業務は収入を得る目的と割り切って静かな退職を選択します。
(2)サイレント退職との違い
サイレント退職とは、辞める前兆がなかった従業員が突然退職することです。例えば、自社を辞めようとする気配や言動がなかった従業員から突然退職届を提出されるケースがサイレント退職に該当します。
「静かな退職」と「サイレント退職」は、字面的に意味合いが同じと思われるかもしれませんが、静かな退職は実際に退職せず、退職するかのように消極的に働くことであり、実際に退職するサイレント退職とは異なります。
2.静かな退職の兆候とは? |
静かな退職には、次のような兆候があります。
・最低限の業務しかしなくなる |
静かな退職の兆候が従業員に見られたら、後述するリスクの発生を抑えるために早期に対策を施しましょう。
(1)最低限の業務しかやらなくなる
静かな退職の兆候のひとつとして、最低限の業務しかやらなくなることが挙げられます。指示されたことや担当業務範囲内しかやらなくなり、新しい業務には挑戦しない、自ら仕事を探しにいかないなどの消極的な業務姿勢をとります。
やる・やらないのラインが明確になるため、例えば、前までは残業して成果を出そうとしていたのに定時で帰るようになったというケースは、静かな退職の兆候かもしれません。
(2)業務外のコミュニケーションを避けるようになる
静かな退職をする従業員は、業務外のコミュニケーションやつながりを避けるようになります。雑談をしなくなり、業務上必要なやりとりでも最低限に抑えるでしょう。会議やミーティングでは意見を述べない、会話をしないというスタンスです。
以前より口数が減った、コミュニケーションを避けるようになったなどの場合は、仕事や職場に対する熱意や愛着が低下していると考えられます。
(3)キャリアや成長に関する話題に無関心
静かな退職を選択する従業員は、自社におけるキャリアの実現や自己成長に期待や意欲を持っていないため、研修や勉強会、資格受験代補助などの話題があっても無関心な傾向があります。
もし、以前はキャリアの実現に向けて自己研鑽を重ねていた、積極的に資格を取りにいっていたという従業員がキャリア等の話題に無関心であれば、静かな退職になりえるでしょう。
3.静かな退職を放置しておく企業側のリスク |
従業員の静かな退職を放置しておくと、企業側に次のようなリスクが生じ、大きな損失を招くかもしれません。
・職場の雰囲気の悪化 |
どのようなリスクが生じるのか、解説します。
(1)職場の雰囲気の悪化
静かな退職をする従業員は、コミュニケーションや業務が最低限となるため、職場に活気がなくなる、ほかの従業員の業務負担が増加するなどして、職場の雰囲気を悪化させるでしょう。
職場全体がネガティブな雰囲気になると、ストレスによってモチベーションが低下する従業員が増加し、人間関係の不和や業務ミスなどを招きかねず、企業に悪影響を及ぼします。
(2)生産性の低下
静かな退職の放置は、企業の生産性を低下させる恐れがあります。静かな退職をする当人の無気力の影響はもちろんのこと、本来十分な指導を受けるはずだった新入社員や若手人材への教育不足によって有望な人材が育たないことも、生産性低下につながるでしょう。現在だけでなく将来にわたっての悪影響は、企業の存続危機にもなります。
また、静かな退職によって業務負担が増加し、心身が休まらない従業員が出た場合も、疲労感から生産性が落ちる可能性が高いです。
(3)離職者の増加
少子化の影響で人手不足が深刻化している日本企業において、優秀な人材の離職は大きな痛手です。静かな退職を放置した場合、周りの従業員の業務負担やストレスが大きくなるため、耐え切れなくなった従業員が離職するかもしれません。
また、静かな退職を選んだ従業員も、自社に勤め続ける意義を見出せなくなって本当に退職する恐れがあります。
離職者の増加は、業務の停滞だけでなく社会的なイメージ低下にもつながり、人材の流出を加速させるでしょう。
4.静かな退職への7つの対策 |
静かな退職によるリスク回避のためには、対策を講じることが重要です。
静かな退職への対策として、以下の7つをご紹介します。
・1on1ミーティングの質を高める |
各対策をチェックして、静かな退職が選択肢に挙がらない企業を目指していきましょう。
(1)1on1ミーティングの質を高める
静かな退職は、ストレスに対する自己防衛として起こるケースもあるため、従業員にストレスを抱えさせないように1on1ミーティングの質を高めましょう。
具体的には、上司に傾聴力やフィードバックスキルの研修を実施したり、「最近気になることある?」など雑談から入る工夫を施したりして、部下との信頼関係の構築を目指します。信頼関係があれば、部下は不安や不満などのネガティブな感情も気兼ねなく話せるようになり、ストレスの発散や職場環境の改善につながるでしょう。
1on1ミーティングを単なる業務確認の場ではなく、部下にとって心理的安全な場にすることが、静かな退職対策として効果的です。
(2)業務量と役割の見直し
従業員それぞれの業務量と役割を見直して、やりがいや納得感を引き出します。例えば、過重労働や単調な作業など、業務内容や量に偏りがないかを定期的に棚卸しして確認すると、不公平感をなくしつつ適性な業務の割り当てでモチベーションを高められるでしょう。
また、業務の目的や意味を曖昧にせず、しっかりと伝えることで、従業員の納得感を引き出せます。納得感は業務に対するやりがいにつながり、意欲的になるかもしれません。従業員が主体的に行動できるように、スキルや志向に応じたキャリア選択の余地をつくることも大切です。
(3)エンゲージメントサーベイの活用
エンゲージメントサーベイとは、従業員の自社に対する満足度や愛着度を数値にして可視化できるツールのことです。エンゲージメントサーベイを活用すると、従業員の不満から自社の課題を特定できるため、より効果的な改善策を打ち出せます。
実名回答とした場合は、静かな退職になりそうな人を早期発見でき、適切なフォローをしやすいです。エンゲージメントサーベイの結果は、管理職だけでなく部署単位で共有し、対策につなげましょう。
(4)評価制度・報酬の透明性を高める
結果がすべての社風や年功序列制度などで、従業員が「頑張っても報われない」「仕事をしていない先輩のほうが評価されている」と感じると、静かな退職に直結する恐れがあります。
そのため、評価制度や報酬を見直し、プロセスや挑戦も評価する、役割や貢献ベースの柔軟な評価を検討するなどの対応が必要です。
また、評価制度や報酬について、従業員がいつでも確認できる就業規則に記すなど、透明性を高めましょう。透明性が高ければ正当な評価につながるほか、より高い評価を得るために従業員自ら目標を設定し、モチベーション高く取り組むことが期待できます。
(5)“余白”を持たせる働き方改革
従業員がワークライフバランスを保てたり理想のキャリアを実現できたりするように、余白を持たせる働き方を改革しましょう。フレックスタイム制度やリモートワークなどの多様な働き方を推進すると、従業員は自分のライフスタイルに合った働き方ができるため、仕事にも意欲的に取り組めるかもしれません。
自主プロジェクトや越境学習、副業解禁などを取り入れ、向上させるスキルやキャリアの方向性を自分で選べる余白を用意することも、従業員のやる気を引き出すのに効果的です。自分のキャリアパスを思い描けないという従業員に対しては、キャリア面談を実施してサポートしましょう。
(6)ストレスチェックを行う
労働者が50人以上いる事業所は、年に1回以上ストレスチェックを実施することが法律で義務付けられています。ストレスチェックは、従業員が自分のストレスを自覚したり、高ストレス者に医師の面談を受けてもらったり、企業が職場環境の改善に取り組んだりすることで、メンタルヘルス不調を防止する目的があります。
ストレスチェック結果を部署や課などの集団ごとに集計・分析し、職場環境や雰囲気がよくない部署の設備の見直しや人事異動等を行い改善することで、静かな退職をなくしていきましょう。
(7)コミュニケーションを活発化する
社内コミュニケーションを活発化して、従業員同士の信頼関係や連帯感を高めると、静かな退職の防止につながります。従業員が不満や悩みを共有しやすい職場は、ストレスを軽減できたり職場全体で悩み解決に動けたりして働きやすさが向上し、「自社で働くこと」に意義やポジティブな気持ちを抱けるでしょう。
コミュニケーションを活発化させる施策として、雑談スペースの設置や社内イベントの開催、定期的な面談、社内SNSの活用などが挙げられます。
5.まとめ |
静かな退職が増えている背景には、企業に対する不満や働き方に対する価値観の変化などがあります。
放置しておくと職場の雰囲気が悪化し、人材の流出を加速させるリスクがあるため、静かな退職への対策として従業員に業務のやりがいを伝えたり、公正な評価制度を整備したりすることが重要です。
従業員の業務姿勢や言動に気を配り、静かな退職の兆候があったら早期にフォローしましょう。
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